意外と知らない、被災者の支援制度
被災された方々のインタビューの中でも、土砂に半分覆われた住宅、傾いた住宅、屋根や壁の一部、骨組みだけが残っている住宅、こうした自宅の前で今後の生活再建への不安を訴える家族の姿に心が痛くなった人も少なくないのではないでしょうか。
そんな「いざというとき」に利用できる様々な公的支援制度があります。
・津波で家が流された!
・地震で壊れた家を修理したい!
・地震で大けがした!
・被災生活で子どもの学費にまでお金が回らない!
・地震が原因で失業した!
などなどの災害で困った状況になったときに利用できそうな公的支援制度についてみていきましょう。
支援っていうけれど、何をしてもらえるの?
被災者を支援する制度が色々あるって言われていますが、具体的に何をしてくれるのでしょうか。
すぐに思い浮かぶのが現金給付です。災害によって家族が亡くなった場合に支給される「災害弔慰金」や自宅が全壊するなどの被害を受けた場合に受けとれる「被災者生活再建支援金」などがあります。
実はこうした現金給付以外にも、低利での融資、保育料等の減免、学用品等の現物支給や現物貸与、ハローワークでの職業訓練サービスの提供など様々な形での被災者支援制度があります。
・現金給付
・融資
・減免
・現物支給
・現物貸与
・サービス提供
一般的な生活再建、教育や保育、医療・福祉、就労など様々な場面ごとに被災者を支援する制度が用意されています。
子どもがいる家庭、失業を余儀なくされた家庭など、それぞれの家庭の事情ごとに利用できる制度がないか確認することがポイントです。
どんな制度があるの?
では、具体的にどのような支援制度があるのでしょうか。
内閣府の「被災者支援に関する各種制度の概要」(平成29年11月1日現在)では、「経済・生活面の支援」、「住まいの確保・再建のための支援」、「中小企業・自営業への支援」、「安全な地域づくりへ支援」、「相談窓口」の5つに分けて各制度を紹介しています。
今回は、私たちの生活にもっとも身近な「経済・生活面の支援」中から主なものをピックアップしてご紹介したいと思います。
表は、4つの場面に分類した支援制度を一覧にしたものです。それぞれの制度がどのような支援を想定しているのかについては()内に記載しています。
現在の家族の状況で被災した場合に、どんな制度が利用できるのか眺めておくといざという時、そういえば、こんな支援制度があったなあと思い出すことができるかもしれません。
制度を利用できる対象者や条件の詳細については、実際に被災した時点でインターネットで調べてたり、問い合わせ先に連絡を入れるなどして利用の可否を検討すればよいでしょう。
また、表にあるように市町村が担当している支援制度が多いこと、様々な申請に際して必要な罹災証明書の発行業務が市町村の責務であることから、自分が利用できる被災者支援制度については、お住まいの市町村役場に相談するのが一番良いかもしれません。
ただし、被災地の役場では、災害対応を含む膨大な業務量と混乱から迅速で十分な対応は望めないと考えておきましょう。
支援を受けるためには申請が必要!
支援を受けるためには、基本的に自ら申請手続を行うことが必要です。被災したからといって自動的に支援を受けることができるわけではありません。
地震や津波など大規模な自然災害が発生した場合には、何万世帯、何十万世帯が被災します。東日本大震災ではピーク時で47万人の方が避難生活を余儀なくされました。
何万人、何十万人の人が被災した場合には、市町村役場では罹災証明書の発行業務だけでも膨大な量になります。被災者は役場に様々な申請や相談に一斉に詰めかけることになります。
そのような状況を覚悟するとともに、自分で調べることができることはできるだけ自分で調べて、迅速に申請書類を提出したいところです。
申請は受理された順番に処理をされることから、被災後の生活再建を早めるためにも、利用できる制度の有無の確認、支援対象となる制度については迅速に申請手続を行うようにしましょう。
試しに、被災者生活再建支援制度の具体的な内容についてみてみましょう。表にあるように問い合わせ先は、都道府県と市町村となっています。
まずはインターネットが利用できる場合には、当道府県および市町村のサイトにある被災者生活再建支援制度のページを閲覧するのがよいでしょう。
また、被災者生活再建支援事業は、現在、公益財団法人都道府県センターを通じて行われているので、この団体のホームページで制度の概要や制度に関する詳しいパンフレットを閲覧することができます。
画像出典:内閣府:被災者生活再建支援制度の概要
このパンフレットによると、自然災害によって住宅が被害があった場合、被害の程度によって基礎支援金として最大100万円、住宅の再建等による加算支援金が最大200万円を受け取ることができます。
支援金の支給を受けるためには、必要書類を添えて、住まいのある市町村役場に申請書を提出しなければなりません。必要書類は、被害を受けた住宅の状態、支援金の書類ごとに異なりますが、
①罹災証明書
②解体の必要性等を証明する書類(解体証明書等)
③住民票
④預金通帳の写し
⑤加算支援金を申請する場合には、住宅の再建等を証明する書類(契約書等)
以上の5つの中で自分に必要な書類を提出することになります。
なお、支援金の申請には期限が設けられていて、基礎支援金については災害のあった日から13カ月、加算支援金は災害のあった日から37カ月となっています。
この期間を過ぎた場合には申請することができません。
支援を受けるにはこのように、必要書類を準備して申請することが必要です。
被災時の状況によって制度の利用の可否、申請手続に必要となる書類は異なるので、今の段階では被災した場合に生活の様々な場面で被災者を支援する制度があったこと、支援を受けるためには申請行為が必要であることを頭の片隅に入れておきましょう。
まとめ
毎年発生する台風による豪雨被害、発生が想定されている南海トラフ巨大地震や首都直下地震など、今後、誰もが自然災害により被災者となる可能性があります。
被災するということは、心身への被害に加えて、多大な経済的な負担が生じるということです。
その場合に備えて貯蓄しておく、保険に加入しておくなど自ら備えることが重要ですが、利用できる支援制度があれば積極的に活用できるようにその存在については心にとめておきましょう。
各種の行政支援制度に関しては、知っていれば活用できて負担を減らせますが、知らなければ何らの支援を受けられないことが多いのが現状です。
特に自分が被災者となった場合、支援制度を活用できるかどうかはその後の生活や人生に大きな影響を与える可能性があります。ぜひ、興味を持ち事前に情報を頭に入れておきましょう。