トップ 読み物 年々勢いを増す台風、仕組みを知り、身を守る!

年々勢いを増す台風、仕組みを知り、身を守る!

毎年、夏から秋にかけて発生する台風。近年では台風によってもたらされる豪雨被害も大規模なものになってきました。そして解せないのが台風の進路。台風の進路取りに重要な要素は、地球を流れる貿易風と偏西風。その仕組を知り、台風に備えましょう。

2233

被害が大規模化する、近年の台風

近年の台風は、発生のたびに「過去最強」「観測史上初」などと言われる強大なものが増えてきました。「今回はさすがに日本上陸の進路ではないな…」と思ったら、まさかのUターンで日本列島を直撃するパターンも多くなりました。

 

特に、近年では2019年10月12〜13日に伊豆半島に上陸した台風19号(令和元年東日本台風)では西〜東日本の広い範囲で大雨・強風となり、静岡県・関東甲信越・東北地方では過去に経験したことのないような記録的な大雨をもたらしました。結果、各地で大規模な河川氾濫や土砂災害が発生。

九州地方から東北地方にかけての広い範囲で少なくとも死者66名、行方不明者13名、重軽傷者398名の人的被害が発生しています。

 

また、2018年は台風7号により6月28日〜7月8日にかけて発生した「平成30年7月豪雨」では、西日本を中心に北海道や中部地方など全国的に広い範囲で集中豪雨が発生し、死者は227名・西日本では大規模な停電も発生、各地では河川の決壊や土砂崩れなども相次ぎました。

台風に関する豆知識

台風とは、北西太平洋で発生する熱帯低気圧のうち、低気圧域内の最大風速がおよそ17m/s以上のものを言います。上空の風のに流されて動き、地球の自転の影響で北へ向かう性質を持ちます。

【知っておきたい台風の特徴】

① 地上付近では反時計回りに風が台風の中心に対して吹き込む
② 進行方向に対して右側の半円内では風が強く、左側の半円内では若干弱まる
③ 台風から離れた場所でも大雨が発生することがある
④ 特に夏は太平洋高気圧が強まり偏西風が弱まるため台風の速度は遅めで動きが複雑化する
⑤ 日本付近に近づくと上空に流れ込む寒気の影響により台風としての性質を失い「温帯低気圧」に変わる

台風の仕組み

台風は、北西太平洋の暖かい海面から発生した水蒸気が凝結し、雲粒になるときに放出される熱をエネルギーとして発生・発達します。

台風は基本的に上空の風によって動きますが、地球上ではこのように常に「貿易風」と「偏西風」の流れがあります。季節によって緯度的な位置の違いはありますが、貿易風は西へ向かい、偏西風は東へ向かいます。

 

北西太平洋で発生した台風はまず貿易風によって太平洋高気圧の外辺に沿いながら西へ向かいつつ、地球の自転の影響で北上していきます。その先で偏西風に捕まり、条件によって進路を東向きへ変更するわけですが、だいたいこのときの位置が日本の沖縄付近になります。そのまま偏西風に乗って東へ進むと日本に上陸する進路となります。

もう少し日本周辺にクローズアップした図がこちら。動きのイメージがよくわかると思います。日本が毎年台風の上陸を受けるのは、このような地球上の大きな風と空気の動き・状態によるわけです。

ラニーニャ現象・エルニーニョ現象と台風の関係

画像出典:気象庁

エルニーニョ現象は、熱帯太平洋〜南米沿岸にかけて海面温度が高くなった状態が1年程度続く現象です。また、同じ海域で海面温度が平年より低い状態が続くのがラニーニャ現象。それぞれ数年おきに発生しますが、発生すると日本を含め世界中で異常気象などが起こると考えられています。

 

エルニーニョ現象が発生している場合(7〜9月)、台風の発生数は少なくなり、台風が発達した時の中心気圧が平常時よりも低い(=強い勢力)傾向があり、秋は台風が長寿命化する傾向があります。

 

ラニーニャ現象が発生している場合、日本付近で発生した台風が日本に急接近することが多く、発生〜上陸までの時間が短くなる・単寿命化の傾向にあります。

台風への備えを!

① 家の窓ガラスや雨戸を補強する

暴風でガラスが割れると危険です。雨戸があればそれを閉め、ない場合はカーテンを閉めましょう。
また割れたガラスに備えて、スリッパや軍手などの準備を。

 

② 屋内の家具などを固定、玄関先などで風で飛ばされそうなものは屋内へ移動

家具が転倒しないように壁に固定します。また大きな家具は寝室には置かず、倒れた場合に出入り口を塞がないように配置します。

 

③ 床上浸水に備えて重要な家財道具は2階以上へ移し、玄関先には土嚢を

河川沿いの立地や過去に床上浸水したことがある場合は重要なものは高い位置へ移動させ、可能であれば浸水箇所になる場所に土嚢を置きます。
最近は土ではなく水を使った土嚢袋なども販売されています。

 

④ 孤立化に備えて、水・食料・簡易トイレを最低1週間分準備

台風に限らず日頃から大地震などへの備えとして、飲料水と食料を常に1週間ぶんは備蓄しておきましょう。また、断水してトイレが流せなくなった場合に備えて簡易トイレの準備を。

 

⑤ 停電に備えて懐中電灯やLEDランタンなどを用意、スマホの充電も万全に。余力があればモバイルバッテリーを

西日本豪雨においても広範囲で停電が発生し、大阪の一部地域では停電が長期化しました。
停電時に灯りが無いと、避難の際にも足元が見えず危険です。また、情報収集手段や救援要請手段としてスマホも重要なアイテム。しっかり充電しておきましょう。
また、余力があればスマホの充電に使える「モバイルバッテリー」や、家電を動かせる「ポータブル電源」なども備えましょう。

 

⑥ 台風上陸時には車の運転を含めて外出を極力控える

2018年の台風21号上陸時は、関西国際空港では連絡橋にタンカーが接触して破損したり、車が暴風によって横転したりという被害が置きています。不要不急の外出や運転は控えましょう。

 

⑦ 運転中の水没に備えて「脱出用ハンマー」を車内に常備しておく

台風や豪雨により河川の氾濫で水没した車内に閉じ込められる場合があります。いわゆる「脱出用ハンマー」を平時から車内に装備しておきましょう。
車の水没時にドアが開かなくなった場合は、このハンマーでサイドガラスを割って脱出することになります。よく「車のキーで割る」「小銭を入れたビニール袋で割る」という代用策が言われますが、実質「脱出用ハンマー」以外ではガラスは割れません。また、フロントガラスは脱出用ハンマーでも割りにくいので、必ずサイドガラスを。

まとめ

近年の台風の傾向として、勢力や発生する被害が大きくなっているように感じます。もはや大規模災害として備える必要が常態化していますが、大地震などへの取り組みと同じように備えておくことが重要です。

 

特にお住まいの地域が台風の暴風圏に入ってしまった場合、停電や断水に見舞われながら孤立化することも十分に考えられます。2018年の西日本における豪雨災害では、大阪の一部地域では停電が想定以上に長引きました。水・食料・簡易トイレなどは万全に備えておきましょう。

 

地震と異なるのは、付近の河川などが決壊して床上浸水する状況も考えられることです。これまでに浸水被害があった場所では、命の次に重要な家財道具などを家の中の高い場所へ移動させるなどの対策を早めに取る必要があります。

 

ただし、基本的に日頃から次の大震災に備えることを意識している場合、同様の取り組み方で問題ないでしょう。「備えあれば(おおむね)憂いなし」ということもありますが、強い勢力を持つ台風の上陸時には、天候情報や避難情報などは積極的にチェックしましょう。

このサイトや記事が気に入ったらシェアしましょう!