TOP画像出典:Wikipedia:南海トラフ巨大地震
防災から『備災』へ
2018年には、北海道胆振東部地震(最大震度7、M6.7)や大阪府北部地震(最大震度6弱、M6.1)が発生。
北海道胆振東部地震では43人、負傷者782名、全壊家屋469棟、半壊・一部損壊家屋は15,000棟を超えました。そして大阪府北部地震では、大阪府内で死者6名、2府5県で負傷者462名、全半壊・一部損壊の住家は6万棟を超える被害となりました。
2016年には熊本地震が発生、住宅の全壊8,667棟・半壊34,719棟、一部破損が163,500棟にも上る甚大な被害を出しています。
さらに遡ること2014年の御嶽山噴火においては、死者58人・行方不明者5人という大惨事になりましたが、火山性地震は噴火の約2週間前から増加していたものの、火山性微動が観測されたのは噴火のわずか11分前でした。
こうなると事前に防ぐのはもはや不可能に近く、こうしたケースにおいては「いかに備えるか(登山・山行の中止も含め)」が重要になってくると考えられます。
そこで近年では、「防災から『備災』へ」という考え方に移り変わってきており、防げないならどう備えるべきか、という考え方へシフトしつつあります。
形骸化する「防災の日」
画像出典:Wikipedia:防災の日
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」とは言いますが、阪神淡路大震災・新潟県中越地震・東日本大震災・熊本地震という現代に生きる私たちにとって身近な大震災も、直接的に被害を受けなかった人たちにとっては、はやくも記憶の片隅に追いやられているとも感じます。
「避難訓練」や「防災訓練」という取り組みも、実際のところ形骸化していないでしょうか。毎年の恒例行事として同じフォーマットで実施されていることが多いと感じます。
小中学校などの避難訓練では、どちらかと言えば子どもたちはお祭り気分で「避難行動」をおこない、企業における避難訓練では「仕事が忙しいのに、そんな時間は取れない」と、訓練実施時間中も業務を続けられる方々を多く目にしてきました。
一般市民レベルで見ると、地域ごとの行政主導の防災訓練などで防災に対して関心のある人たちのみが、ようやく危機感を持って取り組んでいるレベルに縮小しているように感じることも否めません。ただ啓蒙活動的な避難訓練や防災訓練という位置づけだと、実感や危機感を持って取り組むというのはなかなか難しいものがあり、ついつい「なおざり」や「おざなり」になってしまいがちです。
また、今後発生が想定されている首都直下地震における被害の最悪の想定ケースは、死者23,000人・消失または全壊に至る建物は61万棟。最大800万人の帰宅困難者が発生し、避難者は発災2週間後には最大で720万人。食料は3,400万食が不足。
東京都内における昼間人口は1500万人を越えますが避難所の収容人数は362万人程度と、1000万人を超える人々が「避難所に入れない」可能性が指摘されています。
そのような状況だからこそ防災から備災へ、備えるための活動自体は啓蒙的なものだけでなく「楽しさや親しみ」が持てるものを取り入れることも必要ではないでしょうか。
備えあれば憂い無し
気象庁が公開している日本国内の地震情報や、米国地質調査所(USGS)などが公開している世界の地震情報を見たことはありますか?揺れを感じる地震はたまにしか発生しないイメージがあるかもしれませんが、体で感じない規模の地震は、実は毎日数多く発生しています。
南海トラフ巨大地震や首都直下型地震の発生が想定される今、それが起きるのは数十年後かもしれませんが、もしかしたら明日かもしれません。
また近年では大雨による大規模な水害なども珍しくなく、2020年7月には「令和2年7月豪雨」が発生、九州や中部・東北などで河川の決壊などを含む甚大な被害が発生した件は記憶に新しいところです。また2017年7月には「平成29年7月九州北部豪雨」が発生し、死者36人・負傷者21人という被害規模となっています。
いまでは大規模な災害の発生時には、被災地には即座にいくつもの避難所が開設される体制が整ってきてはいますが、被害の規模が大きいほど政府や行政の対応には遅れが出ることが想定されます。これまでのコラムの中でも触れていますが、過去の震災時の避難所での生活を振り返ると、「備えていなかった方々」がいかに苦労したかの経緯が伺える記録が数多く残っています。
大震災の際にはほぼ例外なく、水道・ガス・電気などの便利な社会インフラや、住む場所・寝る場所、食料の供給などが途絶えることになります。いざその時が来た際に命さえ無事であれば、その後の生活を再建していくための備えを、今からできるかぎり進めておきましょう。
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