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【レビュー】冬の災害時やキャンプにも重宝する「湯たんぽ」

「湯たんぽ」と聞いて「昭和時代の古くさい暖房用品でしょ?」と感じるかもしれませんが、その実力は折り紙付き。冬の震災への備えはもちろん、毎日のベッドや布団の中に、冬キャンプのお供にと、活躍の場は広がっています。近年はヨーロッパ製のオシャレな湯たんぽ「Hot Water Bottle」といったものも人気。

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湯たんぽのすゝめ

湯たんぽの実用性が改めて再認識されたのは、1995年の阪神淡路大震災と言ってもいいかもしれません。支援物資として送られたり体育館などに避難していた方々がペットボトルに沸かしたお湯を入れて湯たんぽ代わりにしたりと、お湯さえ沸かすことができれば手軽に暖を取れる手段として確たる地位を築いた「湯たんぽ」。阪神淡路大震災だけでなく、東日本大震災でも避難所ではペットボトルの「即席湯たんぽ」が作られ、多くの方々を温めたそうです。

備災グッズとしても注目すべき存在ですが、寒い時期においては日々の生活でも特に就寝時に活用でき、冬キャンパーの間でも定番の道具。カジュアルなものから直火で温め直しOKの実用派まで幅広いラインナップが揃った今こそ、1人1つは揃えておきたい暖房アイテム。

備災FUN!』では、次の震災・災害に備える「備災」をテーマに、被災時にも大活躍のアウトドアグッズを日常で活用して「楽しみながら備える」情報をメインに発信しています。

定番系:質実剛健タイプ、レトロな金属製湯たんぽ

定番中の定番、マルカの湯たんぽ。昔ながらのレトロなルックスですが、細かな点では時代に合わせた改善が施されています。直火加熱がOKなので、実はもっとも幅広い使い方ができるモデル。

ひっくり返して底面をクローズアップ。この構造のおかげで、ふだん使いならIHコンロでも直接加熱ができます。また、アウトドア用のバーナー(レビュー記事)を使った加熱にも適した形状とも言えます。

真鍮製のお湯の注排口。スペアのパッキンも標準添付。スクリューキャップは内圧をある程度自動調整できる構造になっています。

お湯の注排口の栓を開けたところ。精度の高い加工はやっぱり「メイド・イン・ジャパン」の証。簡単には水漏れしない設計と構造です。
お湯を入れる際は内部を極力満水にする必要があります。湯たんぽ内部には、変形(凹み)を防止するための支柱が入っていて、入れる熱湯の量が少なく空気が多く残っていると密封時に空気の膨張で支柱が外れることを防ぐためです。

専用カバーが付属します。カバーは手触りも良く熱湯を入れた本体をほどよい温度に調整してくれます。湯たんぽをカバーに入れる際は本体がかなり熱くなっているので、別途タオルやミトンなどを使うと良いでしょう。

専用カバーにすっぽり収納したところ。100℃に沸騰したお湯を入れても、このカバーさえあれば扱いやすい温度になります。(低温ヤケドには注意しましょう)

では、実際に使用した際の温度変化を見てみることにします。12月中旬の夜、就寝前に90℃程度に沸かした熱湯を満量入れて、湯たんぽの外側で温度を計測。72℃強です。布団の中の足元に設置してそのまま朝まで使用。

明朝、お湯を入れてからおよそ7時間後の湯たんぽの外側の温度は約47℃。下がったとは言え、まだまだ十分な温度を維持しています。カバー内に入れておくと、意外とこの温度変化は体感するほど感じません。2.5リットルサイズでこの効果、さらに大型の3.5リットル版なら、さらなる温度維持が期待できますね。

パッケージとして同梱されている用紙。英名はしっかりと「HOT WATER BOTTLE」です。

詳しい説明書も同梱されているので、初めて使う場合でも安心。これは必ず目を通しましょう。

お手軽系:小容量・ポリ容器製

こちらは内容量600ml、タンゲ化学工業のポリエチレン製のボディを持つお手軽サイズの「立つ湯たんぽ3」。入れることができるお湯の量は少なめですが、普段使いにはバッチリ。女性やお子さんに最適、非常用持ち出し袋にも1つなら入れておけるサイズです。

「立つ湯たんぽ」の名前どおり、立ちます。添付のカバーに入れても立ちます。使用後は立てたまま排水も可能。沸騰したお湯を入れても大丈夫な耐熱温度上限は110℃です。

背面はフラット。お湯が注ぎやすい構造です。素材はポリエチレンなので直火での加熱は厳禁。熱湯を入れても上部の「取っ手(ハンドル)」部分は熱くならないちょっと嬉しい構造。

キャップを外すと、広口のお湯の注水口が現れます。漏斗(ろうと・じょうご)が無くても、ケトルから普通に注ぎ入れられるサイズ。予めケトル側で600ml強の容量の水量を沸かしておけば、注ぎ切るだけ。
キャップを締める際は素材疲労を起こして破断しないように、強力にギューギューと締めすぎることの無いように注意しましょう。お湯が漏れない程度に締め込めば良いです。

お湯が入れやすい構造。後述の漏斗を使えば、さらに入れやすくなります。必要な湯量は注水口まで満タンになるまで。なるべく内部に空気を残さないようにします。
コツは、注水口まで湯を注いだらいったんキャップを締め、注水口が上になるように振ります。そうすると内部に残った空気が注水口に集まるので、キャップを開けて湯を追加します。これを2〜3回繰り返せば準備完了。

こちらも収納カバー付き。沸騰したお湯を注ぎ入れた本体を直接触ると当然熱いですが、カバーに入れれば問題なし。ちょうどいい暖かさになります。(こちらも低温やけどにだけは注意しましょう)

完全収納状態。12月中旬の夜、就寝前に沸騰したお湯を注入して布団に入れて朝まで使用した場合の実測では暖かさの継続時間はおよそ5〜6時間程度。6時間後では、ほんのり体温より暖かいレベルです。もっとも、このサイズと容量なら十分な効果でしょう。

標準添付の低温やけどに関する注意喚起の説明書です。

サイズの比較

2.5リットルサイズの金属製湯たんぽと、スマホとのサイズ比較。スマホはSONYのXperia ZLとAppleのiPhone6s plusです。概ね、縦はiPhone6s plusの2倍弱、幅は3倍程度。このサイズならではの暖かさと持続時間は安心感があります。

600mlサイズの湯たんぽと、スマホ。やはりコンパクトなぶん取り回しも楽。お湯投入口のキャップを適切に締めて付属のカバーに入れてしまえば、小さなお子さんでも安心して扱うことができます。

すべて並べてみました。2.5リットルの金属製湯たんぽの存在感が際立ちます。

別売りオプションなど

お湯を注ぎやすくするために便利なのが、この「ロート(漏斗・ろうと)」。こぼれにくくなるので併せて用意しておきたいグッズです。

600mlサイズのポリ製の湯たんぽとの相性はバッチリ。広口なのでそのままでもケトルから注ぎ込めますが、これを付けると注ぎやすさは圧倒的。注意点としては、お湯を沸かすケトルの容量を把握していない場合、どの程度の量が入ったのか見づらいため、ときどき漏斗を持ち上げて確認しながらお湯を入れます。

2.5リットル金属製の湯たんぽにセットして使う場合は、ちょっとコツが要ります。湯たんぽ側の注水口が本体の中央ではなく傾斜した面に付いているため、そのままでは漏斗が自立しません。そこで、湯たんぽの注水口のある側の底に折り畳んだタオルなりを入れて湯たんぽ自体に傾きを作り、注水口が水平になるようにすると、お湯を入れやすくなります。
こちらもどの程度の湯量が入ったかを視認しづらいので、ときどき漏斗を外して確認しましょう。

金属製の湯たんぽの大きなメリットは、この「直火炊き」が可能である点。水を替えなくてもある程度の期間、再加熱すれば何度でも使えます。震災時にガスや電気が止まっても、このようにアウトドア用のガスバーナー(レビュー記事)やカセットコンロがあれば安心して暖かい湯たんぽを用意できますね。大容量でもあるので、内部を錆びさせないなどの手入れを怠らなければ、いざというときには飲料水としても使えます。
なお直火炊きの際は、必ず注水口のフタを開ける必要があります。(密封したまま加熱すると内部に残った空気が膨張して爆発する恐れがあります)

まとめ

「湯たんぽ」の起源を辿ると、唐時代の中国に行き当たり「湯婆」(tangpo)として存在した陶器製のものがルーツ。日本ではちょうど「遣唐使」がおこなわれていた時代ですね。日本での湯たんぽの利用の記録としては、室町時代には使われていました。江戸時代には幕府の第5代将軍・徳川綱吉が使ったという犬型の湯たんぽが現存しています。

近年では、様々な素材や形状の湯たんぽ新製品が登場しています。中にはお湯を使わない、充電蓄熱式の製品なども。古きを温め新しきを知る。「温故知新」とは湯たんぽにも当てはまる言葉かもしれませんね。

シンプルだからこそ壊れにくく長持ちし、暖かさも十分。寒い時期の震災に備えるだけでなく日常使いにもピッタリという点でも、ご家庭で1人に1つ湯たんぽを常備しておきましょう。

もちろん、アウトドア派のかたには言うまでもなく冬キャンプのお供にもオススメですし、就寝時だけでなく寒い時期のオフィスでの仕事中などに、ひざ掛けと一緒にこの湯たんぽを使えば快適に作業ができます。冷え性気味の方にもオススメですよ。

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