湯たんぽのすゝめ
湯たんぽの実用性が改めて再認識されたのは、1995年の阪神淡路大震災と言ってもいいかもしれません。支援物資として送られたり体育館などに避難していた方々がペットボトルに沸かしたお湯を入れて湯たんぽ代わりにしたりと、お湯さえ沸かすことができれば手軽に暖を取れる手段として確たる地位を築いた「湯たんぽ」。阪神淡路大震災だけでなく、東日本大震災でも避難所ではペットボトルの「即席湯たんぽ」が作られ、多くの方々を温めたそうです。
備災グッズとしても注目すべき存在ですが、寒い時期においては日々の生活でも特に就寝時に活用でき、冬キャンパーの間でも定番の道具。カジュアルなものから直火で温め直しOKの実用派まで幅広いラインナップが揃った今こそ、1人1つは揃えておきたい暖房アイテム。
定番系:質実剛健タイプ、レトロな金属製湯たんぽ
定番中の定番、マルカの湯たんぽ。昔ながらのレトロなルックスですが、細かな点では時代に合わせた改善が施されています。直火加熱がOKなので、実はもっとも幅広い使い方ができるモデル。
ひっくり返して底面をクローズアップ。この構造のおかげで、ふだん使いならIHコンロでも直接加熱ができます。また、アウトドア用のバーナー(レビュー記事)を使った加熱にも適した形状とも言えます。
明朝、お湯を入れてからおよそ7時間後の湯たんぽの外側の温度は約47℃。下がったとは言え、まだまだ十分な温度を維持しています。カバー内に入れておくと、意外とこの温度変化は体感するほど感じません。2.5リットルサイズでこの効果、さらに大型の3.5リットル版なら、さらなる温度維持が期待できますね。
お手軽系:小容量・ポリ容器製
こちらは内容量600ml、タンゲ化学工業のポリエチレン製のボディを持つお手軽サイズの「立つ湯たんぽ3」。入れることができるお湯の量は少なめですが、普段使いにはバッチリ。女性やお子さんに最適、非常用持ち出し袋にも1つなら入れておけるサイズです。
お湯が入れやすい構造。後述の漏斗を使えば、さらに入れやすくなります。必要な湯量は注水口まで満タンになるまで。なるべく内部に空気を残さないようにします。
コツは、注水口まで湯を注いだらいったんキャップを締め、注水口が上になるように振ります。そうすると内部に残った空気が注水口に集まるので、キャップを開けて湯を追加します。これを2〜3回繰り返せば準備完了。
金属製の湯たんぽの大きなメリットは、この「直火炊き」が可能である点。水を替えなくてもある程度の期間、再加熱すれば何度でも使えます。震災時にガスや電気が止まっても、このようにアウトドア用のガスバーナー(レビュー記事)やカセットコンロがあれば安心して暖かい湯たんぽを用意できますね。大容量でもあるので、内部を錆びさせないなどの手入れを怠らなければ、いざというときには飲料水としても使えます。
なお直火炊きの際は、必ず注水口のフタを開ける必要があります。(密封したまま加熱すると内部に残った空気が膨張して爆発する恐れがあります)
「湯たんぽ」の起源を辿ると、唐時代の中国に行き当たり「湯婆」(tangpo)として存在した陶器製のものがルーツ。日本ではちょうど「遣唐使」がおこなわれていた時代ですね。日本での湯たんぽの利用の記録としては、室町時代には使われていました。江戸時代には幕府の第5代将軍・徳川綱吉が使ったという犬型の湯たんぽが現存しています。
近年では、様々な素材や形状の湯たんぽ新製品が登場しています。中にはお湯を使わない、充電蓄熱式の製品なども。古きを温め新しきを知る。「温故知新」とは湯たんぽにも当てはまる言葉かもしれませんね。
シンプルだからこそ壊れにくく長持ちし、暖かさも十分。寒い時期の震災に備えるだけでなく日常使いにもピッタリという点でも、ご家庭で1人に1つ湯たんぽを常備しておきましょう。
もちろん、アウトドア派のかたには言うまでもなく冬キャンプのお供にもオススメですし、就寝時だけでなく寒い時期のオフィスでの仕事中などに、ひざ掛けと一緒にこの湯たんぽを使えば快適に作業ができます。冷え性気味の方にもオススメですよ。