トップ レビュー 寒さに弱い「ポータブル電源」を冬キャンプで活用するコツ!

寒さに弱い「ポータブル電源」を冬キャンプで活用するコツ!

電源サイトでなくても、自前でAC電源が使えて便利な「ポータブル電源」。しかし寒いと電力を一気に消費してしまうのでカタログスペック通りの性能を発揮できないなど、意外と冬キャンプとの相性はイマイチの声も。しかしありますよ、冬キャンプでもポータブル電源の性能を発揮できる方法が!

128545

野外でも家電が使えるポータブル電源

以前から車中泊愛好家などを中心に、ディープサイクルバッテリーなどを活用してキャンプで家電を活用するユーザーはいたわけですが、近年の「大容量ポータブル電源」の出現によって、特にオートキャンプにおけるAC電源利用がとてもやりやすくなりました。大容量のリチウムイオンバッテリーの採用により、ディープサイクルバッテリーなどより大幅な軽量化が図られています。

出力も家庭用AC電源に近い使い方ができるコンセントに加え、USB電源・シガーソケット出力などを備えたパッケージングがなされ、災害に備えた備蓄品としても注目を集めている点も見逃せません。

ただ消費電力の制約はあるので家電なら何でも使えるわけではありませんが、冬キャンプなら定番の電気毛布、夏キャンプならエンゲル冷蔵庫や特に家電サーキュレーターなどを動かすのに十分な容量があります。キャンプ場でノートPCを長時間使いたい場合などにも威力を発揮してくれるので、大きめの画面でお子さんと一緒に映画を見たり。PCを使う仕事をされている方であれば、キャンプ中に発生した不意のお仕事にも十分活用できるわけです。

備災FUN!』では、次の震災・災害に備える「備災」をテーマに、被災時にも大活躍のアウトドアグッズを日常で活用して「楽しみながら備える」情報をメインに発信しています。

入手可能な大容量ポータブル電源

「大容量」の定義をおよそ300Wh以上とすると、本記事執筆時点では下記4製品が浮上します。

iMuto M10 ポータブル電源 372Wh
ANKER PowerHouse 434Wh
SmartTap PowerArQ 619Wh
SUAOKI ポータブル電源 400Wh

タイミングによっては品薄だったり入手困難になる製品もあるようですので、特にAmazonユーザーさんの場合は「ポータブル電源」で検索してみてください。

今回は、編集部で実際に購入した「ANKER PowerHouse 434Wh」を対象にお送りします。

意外と難しい、冬キャンプでの活用

夏キャンプなどでは大風量のサーキュレータを回して涼をとるなど大活躍のポータブル電源ですが、意外と冬は苦手です。バッテリーそのものはリチウムイオンであるため、一般的に環境温度が低くなるにつれて放電容量が少なくなるという温度特性を持っています。

冬キャンプや冬登山などで、氷点下に近い気温の中でスマホのバッテリーがあっと言う間に減って使えなくなった、という経験をお持ちのかたも結構いらっしゃるのではないでしょうか?

編集部スタッフも冬キャンプでの就寝時に、うっかりスマホを(テント内とは言え)シュラフの外のテーブル上に置いて寝てしまい、翌朝にはほぼバッテリーがカラに近い状態になった経験があります。

リチウムイオンバッテリーは、そのままでは低温下(特に氷点下)に晒される条件での使用には向いていないということです。

編集部ではポータブル電源を実際に導入済みで(ANKER社・PowerHouse:434Whモデル)、夏に防災訓練として実施した「備災キャンプ」でサーキュレーター用電源として快適に活用できたので、同じノリで冬キャンプでの電気毛布用の電源として使ってみました。

使用した電気毛布はナカギシ・NA-013Kで、サイズ188x130cmと2名が並んで使用できるサイズ、1時間あたりの消費電力は「中モード:約27Wh、弱モード:約5Wh」というもの。

満充電状態のANKERのPowerHouseであれば、電気毛布を弱モードにして使用すればカタログスペックに基づく理論値としては約80時間分は使えるはず・・・だったのですが、弱モードでスタートして深夜〜明け方に氷点下になった冬キャンプでの一晩(約8.5時間)を乗り越えたバッテリー残量は、たったの「8%」でした。

この際のバッテリーの設置環境は暖房を切ったテント内で、シュラフの枕元のテントフロアにそのまま置いた状態でした。テントフロア自体は、厚手のアルミシートやインナーシート、ラグなどで地面からの冷気自体はシャットアウトしていたのですが、テント内の室温としてはバッテリーにとってさすがに寒すぎたようです。

ポータブル電源を冬キャンプで活用するためのコツ

以降の検証やノウハウはメーカー保証外の使い方となるため、場合によっては異常発熱や発火・故障などに繋がる可能性がゼロではありません。本記事を参考に実際に試される場合は、細心の注意を払った上で自己責任でお願いいたします。

解決策は、ズバリ「保温」です。リチウムイオンバッテリーが効率よく働ける温度の状態にしてあげることが理に適っています。

今回検証に使ったポータブル電源であるANKER社のPowerHouseは、操作温度帯がマイナス10℃〜40℃の範囲となっています。とは言え低温帯では消費電力が大きくなるので、冬キャンプの環境でもこの温度帯の上の方の帯域で使えるような状況を用意します。

具体的には、ポータブル電源を丸ごと保温バッグに収納して稼働させました。その際、ただ保温バッグに入れるのではなく使い捨てカイロや湯たんぽと一緒に収納して、ポータブル電源の稼働温度を保持することです。

編集部でも冬キャンプでの検証として、

① 使い捨てカイロと一緒に収納
② 小型の樹脂製の湯たんぽと一緒に収納
② 大型の金属製の湯たんぽと一緒に収納

の3通りで、電気毛布の使用を試しました。使用した電気毛布は先にも記載した大型サイズの「ナカギシ・NA-013K」。消費電力は弱モードの5Wh想定で「敷毛布」としてエアマットを敷いたテントフロアに設置し、その上に冬用シュラフを置きました。

使い捨てカイロと共に保温バッグに収納した場合

使い捨てカイロの場合、まずは保温バッグの底面に3個をセット。貼るタイプを使用しました。

セットしたカイロの上にタオルを置き、その上に満充電された状態のポータブル電源をセット。おまけで1枚カイロを起き、その状態で保温バッグを閉じます。

夜22時〜朝6:30あたりまでの約8.5時間、テント内の最低気温はマイナス1.2℃の環境で電気毛布を弱モードで稼働させた翌朝の残量は37%という結果が出ました。一泊用なら十分と言えます。

小型の樹脂製の湯たんぽと一緒に保温バッグに収納した場合

使い捨てカイロに続いて、湯たんぽでの検証をおこないました。使用した湯たんぽは2種類、以前に公開した記事【冬の災害時やキャンプにも重宝する「湯たんぽ」】でレビューしたものです。

80℃程度に暖めたお湯を小型の樹脂製の湯たんぽに満量注ぎ、付属のソフトカバーに入れてポータブル電源の下にセット。念のため湯たんぽと電源の間にタオルを挟んで保温バッグを閉じます。

この写真は保温バッグの上から撮影しましたが、構造が解りやすいように横から撮った形にしています。実際には、保温バッグの最下層に湯たんぽを入れ、その上にタオル、そしてその上にポータブル電源を床と水平になるように置きます。

前回の使い捨てカイロ使用時と同様、夜22時〜朝6:30あたりまでの約8.5時間、テント内の最低気温は-3.0℃の環境で電気毛布を弱モードで稼働させた翌朝の残量は38%でした。

ポータブル電源の容量と電気毛布の消費電力を考えた場合、もう少し残っているかとも思いましたが、保温措置を取らなかった場合の残量が8%だったことを考えれば大健闘とも言えますが、結果的には使い捨てカイロ使用時と同程度の残量電力だったので、手軽さから言えばこのタイプの湯たんぽを使うよりもむしろ、使い捨てカイロを活用したほうが湯沸かしなどの手間が省けていいでしょう。

大型の金属製の湯たんぽと一緒に保温バッグに収納した場合

保温が有効であること自体は判りましたので、保温する温度と時間をより効果的にするため、金属製で大型の湯たんぽで試してみることにしました。

こちらも使用した湯たんぽは以前に公開した記事【冬の災害時やキャンプにも重宝する「湯たんぽ」】でレビューしたものです。いわゆる「昔ながらのルックスの湯たんぽ」ですね。

(なおこちらは大熱量の湯たんぽですので、使い方を誤るとポータブル電源が故障したり動作不能になる可能性もゼロではありません。実際に試される際は自己責任でお願いいたします)

ここで注意が必要なのは、ポータブル電源の稼働保証温度範囲と湯たんぽの温度遷移です。上記画像の出典はAnkerのPowerHouseオフィシャルページにある取扱説明書のPDFファイルにある仕様です(赤枠は編集部にて追記)。Operating Temperatureは−10℃〜40℃となっていますので、今回の検証で気にすべき上限温度は40℃ということになります。

こちらの画像の出典は、湯たんぽメーカーのマルカ株式会社さんの「金属湯たんぽのよくある質問」ページにある湯たんぽの保温時間に関する部分から。

沸騰水をこの湯たんぽに入れて付属の袋に収納し、布団内に入れた際の温度変化のグラフですが、70℃→50℃となっています。沸騰水を使用すると収納袋に入れても最大70℃となるようなので、これを緩和するようにします。

そこで沸騰水は使用せず、前回同様に80℃程度に暖めたお湯を大型で金属製の湯たんぽに満量注ぎ、付属のソフトカバーに入れてポータブル電源の下にセット。湯たんぽの熱量がかなりあるので、ソフトカバーに入れた湯たんぽをさらに厚めにタオルで包み、電源との間にさらに畳んだタオルを挟んで保温バッグを閉じて検証開始です。

使用時間帯は夜22時〜朝6:30あたりまでの約8.5時間、テント内の最低気温は約マイナス3.0℃の環境で電気毛布を弱モードで稼働させた翌朝の残量は、なんと70%(!)でした。

これは予想以上の残り方で、氷点下環境で大型サイズの電気毛布1枚をポータブル電源使用する場合でも、十分2泊は行けそうです。一泊なら「弱」ではなく「中」程度で快適に使えそうです。

余談ですが、リチウムイオンバッテリーを効率よく使うための温度設定について、たとえばiPhoneの発売元であるAppleのサポートサイトにはこのような記述があります。「iOS デバイスは環境温度 (周囲の温度) が 0°~ 35℃ の場所でお使いください 〜略〜 動作温度を下回る極端な低温下で iOS デバイスを使うと、バッテリーの消耗が早くなったりデバイスの電源が切れたりすることがあります。」

いずれにせよ氷点下となる温度環境での使用には注意が必要であることが判りました。

まとめ

冬キャンプでポータブル電源の性能を遺憾なく発揮させるには、とにもかくにも保温がポイントだということがよく理解できたと思います。

電気毛布との組み合わせについても、編集部では当初カタログスペックによる単純な消費電力計算だけで「冬キャンプでも十分余裕で使える!」と判断して実践してみましたが、そう簡単には問屋が卸してくれません。冬キャンプでは夜間〜明け方にかけて氷点下になることが多いため、その点を考慮した対策がもっとも重要でした。

リチウムイオンバッテリーの温度特性や保温検証から見ても「人肌に近い温度帯で使う」ことがもっとも効果的に利用するためのヒントとなりそうです。その点で、ポータブル電源を丸ごと保温する方法が実用的で、とりあえず使い捨てカイロは手軽に試せると思います。

また、今回実用的な電力残量を叩き出した金属製大型湯たんぽを使用される場合は、湯たんぽからの熱が伝わり過ぎないように注意してください(最悪の場合、発火事故などに繋がる可能性もあります)。多少大きめの保温バッグを使う、併用するタオルを増やす等の措置をお忘れなく。

そして何より、この手の大容量ポータブル電源を備えておくと震災や災害時などで電気の供給がストップされた状態でもある程度の電力を確保できます。特に、呼吸補助が必要でCPAPなどの比較的消費電力の少ない装置を使っている場合、備えておくと停電時などでも心強い味方になると思います。

しかし大容量とは言え、使える機器は消費電力によって制限されます。使用可能な機器でも電力消費量が大きいものだとあっという間にバッテリー容量がゼロになるので、計画的な利用が必要になってくることは間違いありません。例えばANKERのPowerHouseでは「ホットカーペット」は消費電力が多すぎて実用的なレベルでは使用できません。基本的に「高出力の熱を発生させる」家電製品の使用は消費電力も大きいので、使用機器の消費電力を事前にチェックした上でポータブル電源の自分なりの利用方法を決めておくと良いでしょう。

なお冬キャンプでスマホのバッテリーの無駄な消費を抑えるには、就寝時はシュラフ内に入れる(破損に注意)・カイロと共に保温バッグに入れる(カイロはタオルに包むなどして直接スマホに触れないように)などの対策を取るといいでしょう。

冬に備えたポータブル電源周りのグッズをamazonで見る!

このサイトや記事が気に入ったらシェアしましょう!