トップ レビュー 防災用品としてもおすすめの「カセットガス・ストーブ」を備えよう!

防災用品としてもおすすめの「カセットガス・ストーブ」を備えよう!

被災時や寒い時期のキャンプなど電気も都市ガスも無い状況で、それなりに実用的な暖房を得るには工夫が必要。燃料の調達・保管・持ち運びがしやすく、扱いも簡単・安全で、なおかつ実用レベルで暖かいモノ。その点オススメなのがカセットボンベで使える「カセットガス・ストーブ」。ただしモノによっては暖かさが足りなかったり、燃焼時間が短かったり。選び方のポイントとオススメ製品をご紹介!

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もっと評価されていい暖房器具「カセットガス・ストーブ」

1年を通じて「肌寒い&寒い」と感じる期間を合わせると、おおむね10月〜4月。1年のうち半分は、人によっては暖房が必要です。特にキャンプや被災時での暖のとり方を考える場合、電気や都市ガスが止まった状況での暖のとり方を考える必要があります。

大震災が発生した場合は、オール電化住宅では電気が止まると死活問題となるケースも考えられるので、エアコンや電気ヒーター以外の暖房手段は必ず備えておきたいもの。

備災FUN!』では、次の震災・災害に備える「備災」をテーマに、被災時にも大活躍のアウトドアグッズを日常で活用して「楽しみながら備える」情報をメインに発信しています。

電気や都市ガスが使えない状況での暖房手段としては、焚き火・石油ストーブ・使い捨てカイロ・湯たんぽなど選択肢はいくつかありますが、

① 焚き火は当然ですが屋内では使えず、屋外にしても準備と後始末が面倒、リスクとなる火のコントロールも慣れが必要
② 石油ストーブは都市部のマンション等では使用禁止のケースもあり、燃料の灯油の扱いや保管に気を使う必要がある
③ 使い捨てカイロはもっとも手軽であるものの、貼った部分のみしか暖まらない
④ 湯たんぽは、そもそも何らかの熱源を使って別途お湯を沸かす必要がある

などなど、いずれも一長一短。そこで一家に一台、備えておくことをオススメしたいのが、「カセットガス・ストーブ」。

今や100円ショップでも販売されている「カセット(ガス)ボンベ」が燃料です。そう、テーブル上での鍋料理などに使うカセットコンロでおなじみのアレですね。カセットボンベ(CB缶とも呼びます)は今やどこでも手に入り、(若干かさばるものの)携行性にも保存性にも優れた燃料です。

これを燃料とするポータブルなガスストーブは、すでに以前からアウトドア派やキャンプ愛好家にも人気。冬の氷上ワカサギ釣りなどでも活用されている方も多いるでしょう。

屋内用として安全に使えるモデルも出ていますので、次の大震災が来る前に、ぜひ入手しておきたいアイテムの1つです。

カセットボンベとコンロ製品の歴史

持ち運びのできるLPガスとして岩谷産業株式会社が「カセットガス」を発売したのが1969年。このカセットガスを使ったガスコンロが初めて製品化されたのも、同じ1969年。かつて日本が好景気に沸いた、昭和の高度経済成長期の末期のこと。岩谷産業から発売された卓上ガスコンロ「カセットフー」の誕生です。

また、1970年にはTOHO(東邦金属工業株式会社)の「ホームガッツ」という製品が発売され、日本ガス機器検査協会の認定第1号を取得。

その後、両社の製品が日本国内でのカセットコンロの普及を牽引していくことになりました。

また、1978年に発生した宮城県沖地震において、被災地での備蓄用燃料としてカセットボンベとカセットコンロが威力を発揮。以降、災害時にも必須のアイテムとして認知度が高まることになります。

そして月日は流れ、暖房器具として「カセットガスストーブ」が誕生したのは2011年のこと。岩谷産業だけでも、年間約16万台の販売実績だそうです。

以降も製品開発が続けられ、現在では石油ストーブ並の熱量を叩き出す「カセットガスファンヒーター」まで発売されています。

2010年にはホンダから家庭用カセットガスを燃料にする発電機「エネポ EU9iGB」の発売を機に、現在は複数メーカーからカセットボンベ発電機が発売され、野外での電源調達手段の選択肢が1つ広がりました。

アウトドア用のシングルバーナーでも燃料にカセットボンベを使用するモデルが普及し、アウトドア用ボンベの「OD缶」に比べて入手しやすいため、たとえば新富士バーナーの「SOTO」ブランドから「ST-310」という製品が事実上のベストセラーとなっています。

カセットガス・ストーブの選び方

近年は国内はもとより海外製の安価なものも増えてきましたが、簡単にカタログスペックだけでは選べないのが、カセットガス・ストーブの奥深さです。
選定基準としては、

① 熱量(燃焼カロリー)
② 燃焼時間

あたりから見てしまいがちですが、

① より熱量が高いものほど理屈の上では暖かいですが、熱量が高いということはそれだけ多くのガスを消費するということです。つまり、熱量が高いほどカセットボンベ1本あたりで稼働できる時間は短くなります。
② では燃焼時間が長いものはどうかというと、単位時間あたりで消費されるガスの量が少ないため、そのぶん燃焼時間が稼げるわけです。ガス消費量が少ないということは熱量も小さくなるので、暖かさに欠けます。

ここまではカタログスペックから容易に読み取れる部分ですが、カセットボンベ1本という限られた燃料資源をいかに効率的かつ実用的な暖房効果に変換するかという点を考慮する必要があります。

カセットガス・ストーブには屋内用と屋外用がありますので、そのあたりも自分の用途に合ったものを選ぶといいでしょう。屋内用・屋外用の大まかな違いは、

① 屋内用:ストーブの前方の比較的広めの範囲へ熱を放射するものが多く、空間面積あたりに掛かる熱量は少なめ
② 屋外用:ストーブの前方の比較的狭めの範囲へ集中的に放熱するものが多く、空間面積あたりに掛かる熱量は多め

と見ることができます。

【中央がカセットガス・ストーブ、左右は石油ストーブ】

屋内用の使用前提は「極力せまい空間で使う」こと。製品を選ぶ際のポイントの基本は「熱量と燃焼時間のバランス」と、あとはできるかぎり石油ストーブのサブセット的に使えるものという位置づけで探すといいと思います。

バランスについては、市場に出回っているカセットガス・ストーブの仕様と、実際に使っている編集部スタッフの独断と偏見で見た場合は次の通り。

① 燃焼時間が1時間程度:十分暖かいが燃費が高くつく。1時間ごとにカセットボンベを交換するペース。
② 燃焼時間が2時間程度:実用レベルでまずまず暖かく、2時間程度ごとのボンベ交換なら許容範囲。
③ 燃焼時間が3時間以上:燃焼時間的には十分だが、このレベルになると屋内用では暖かさがだいぶ落ちる。屋外用ならアリ。

ということで、屋内用のベストチョイスとしては②の「燃焼時間が2時間程度(2時間〜3時間未満)」が1つの目安。あとは遠赤外線効果の有無や程度、放熱範囲や熱を前方に送るリフレクタ(反射板)の性能などを加味して検討します。

なお屋外用は一点集中的に放熱するタイプが多いので、カセットガス・ストーブ1台で暖まれるのはおおむねヒト1人、主に足元などの集中暖房が中心になりますが、冷え切った手などを一気に暖めることにも使えます。

安全性を担保する機能にも注目

【イワタニ「デカ暖」のパッケージより】

カセットガス・ストーブはコンパクトな形状ですが、LPガスを燃焼させる暖房器具。安全性に関する機能に関しても着目して選ぶ必要があります。

考慮されていてほしい安全性機能は、次のようなものです。

①炎の不完全燃焼を防止する
②炎が風などで立消えした際にガスの供給を停止・消火する
③ストーブ本体に強い衝撃が加わったり、転倒した際にガスの供給を停止・消火する

このあたりは、主に日本国内のメジャーなメーカー品なら、きちんと備わっています。

カタログスペック比較

人気度の高い屋内用カセットガス・ストーブのいくつかのカタログスペックをざっくりまとめてみました。表の左端から2つは暖房出力比較のための石油ストーブです。

備えておくべきベストチョイス製品はコレ!

ここまで写真を出しているのでお気づきでしょうが、編集部が独断と偏見で選んだカセットガスストーブのベストチョイスはこれです。

実際に12月〜1月の冬キャンプのテント内でメインの暖房器具として使ってみましたが、熱量的には石油ストーブレベルには届かないまでも、形状的にも機能的にも「小型の石油ストーブ」といった感触です。

他のカセットガスストーブと異なる燃焼室は、少ないガス消費量で大きな暖房効果を作り出す「熱溜め燃焼筒」というセラミック素材と金属素材からなる3重構造になっており、特許出願中とのこと。

【イワタニ「デカ暖」のパッケージより】

生み出された熱を効率よく反射させる大型のリフレクタを備えており、実用レベルの暖かさ。火力全開の標準モードでもキッチリ2時間30分、連続燃焼してくれます。対応する部屋の広さとしては木造なら4畳、コンクリート系なら5畳まで。

火力調整も効くので、寒さが緩んだ状況なら火力を落とせば3時間を超える燃焼時間の引き伸ばしも可能です。

安全性対策面も申し分なし。燃料のガスも、カセットボンベ内に残ること無くすべてキレイに使い切ってくれます。カセットガスをこの世に送り出したイワタニならではの完成度の高い製品ということで、ヘビーユースしている編集部としても自信を持ってオススメできるカセットガス・ストーブです。

セカンドチョイス製品はコレ!

次点はこちら。同じくイワタニのカセットガス・ファンヒーター「風暖(KAZEDAN)」。熱量的には一般的な石油ストーブに匹敵するレベルです。内部ではガスの燃焼で発電してファンを回して温風を送り出します。

他のカセットガス・ストーブと違って放射熱や反射熱ではなく温風を吹き出すため、体感的な暖かさもかなりのもののようです。デザイン的にも冬場の室内に置いて何ら違和感はありません。

安全性対応についても、不完全燃焼防止装置、立消え安全装置、転倒時消火装置、圧力感知安全装置、温度過昇防止安全装置と万全です。

唯一ちょっと物足りない点としては、燃費です。カセットボンベ1本あたりの燃焼時間が標準モードでは1時間43分とやや短めです。

ただし火力調整が可能なので、弱モードであれば2時間18分まで燃焼時間を伸ばすことができます。もちろん、カセットボンベのストックが多くあってふんだんに使える状況であれば、暖かさの点ではこれがピカイチかもしれません。

ユーザーレビューを見ると、一定時間使った後にいったん停止して、冷えてきたらまた点火して稼働時間を稼ぐというガスの節約方法がありますので、燃焼モードの切り替えと運転・停止をうまく組み合わせると、実用的な暖房効果を得つつトータルの稼働時間も確保できるといった使用方法が可能です。

暖かさマシマシなら補助用にこちら!

補助用ストーブとしてもう1つのオススメが、この屋外用モデルの「カセットガス アウトドアヒーター」。こちらも安心のイワタニ製。屋外用のため屋内では基本的に使えませんが、前方集中放射型の特徴を活かして狭い範囲であれば一気に暖めてくれます。

カタログスペック上の熱量は高く無いものの、高ガス圧の球状バーナーとパラボラ形式のリフレクタが良くできているためか、近くにおいた場合の体感的には爆熱仕様に感じるほど。

逆に、放熱範囲から横に外れた場合はあまり暖かくありません。前方に2人並んで座ってギリギリなので、お一人様専用での使用がベスト。火力調整はできないので、基本的に全開で使うことになります。

用途としてはキャンプであれば設営や撤収中に、寒い時期の釣りのお供やイベント会場での暖房、自宅であればガレージやガーデニングでの作業用といったイメージです。

どうしても屋内用で使いたいという場合は自己責任にはなりますが、本体下と前方床面が耐熱構造であれば使えます(推奨はしません)。

編集部スタッフの仕様例としては、冬キャンプでの朝、冷え切ったテント内を一気に暖めるためにテントの入口に金属製の「焚き火テーブル」を設置してその上にこのストーブをテント内に向けて置き、集中的にテント内を暖めつつ、別途「デカ暖」で広めの範囲を暖めるという使い方をしました。

燃料となるカセットボンベはどのくらいの量を備蓄しておくべきか

カセットボンベの備蓄量としては、気温や状況にもよるので一概に言い切れませんが、仮設を立てて検討すると、

①真冬の被災時に使用する
②カセットガス・ストーブ1台のみ
③暖房用に1日あたり8〜12時間使用
④物流が復旧するまでの期間を1週間と見込む

と考えると、「デカ暖」の場合は1日あたりカセットボンベを約5本ほど消費します。

1週間で見ると、5本 x 7日間で計35本を備蓄しておくことが1つの目安になるでしょう。

カセットボンベを調理にも活用することを考えると、1週間ぶんとして40本程度あれば、余裕を持った備えになると考えられます。

上記写真は、編集部スタッフが実際に備蓄しているカセットボンベです。これで42本。キャンプでローテーション利用しながら、常時40〜50本程度をストックしています。

まとめ

いまやカセットコンロは一家に一台レベルで普及していると言っても過言ではないほどポピュラーな存在となり、そのおかげで燃料となるカセットボンベがどこでも入手できるようになりました。コンパクトな独立燃料としては、積極的に活用したい道具です。

編集部スタッフが経験した東日本大震災の際には、震災発生直後、街なかの店舗からは乾電池と並んでカセットボンベがあっという間に売り切れとなり、物流が復旧するまでの間はほぼ店頭で見かけない状態となりました。

東北や北海道など冬期は大雪となるような地域にお住まいの場合は、石油や重油で独立稼働するストーブや薪ストーブなどの重装備の暖房手段が当たり前だと思いますが、関東より西側などでは、場所によっては雪が降ること自体が珍しい地域も多いものです。

冬の寒い時期や夏の暑い時期にキャンプに行くと、それぞれいかに工夫や準備をして暖を取るか・涼を取るかが快適に過ごすためのテーマになります。

同時に、現代社会における日常生活がどれほど電気やガスなどの快適なインフラに依存しているのかという点を痛感します。

近年活発化する地震活動や火山の噴火から、南海トラフ巨大地震や首都直下型地震 などは「いつ発生するのか?」ではなく「仮に明日、発生したときに備えはあるか?」という考え方が重要になっています。「まだまだ来ないだろうから、備えるのはそのうちでいいや」と考えるのか、「思い立ったこのタイミングで備えてしまおう」と考えるかで、いざその時が来てしまった後の生活は大きく変わります。

いざという時でもそれなりに生活の質を維持しようとすると相応の装備が必要となり、それを揃えるには時間もコストもかかります。一気に用意しようとすると一般のご家庭ではなかなか予算的に厳しかったりするものです。であれば、思い立ったときに少しづつ用意を進めておくのもいいと思います。

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