固形燃料を使った湯沸かし、どこまでできる?
被災時には基本的に電気・ガスなどのエネルギーインフラがストップします。カセットコンロと専用ガスボンベを備蓄していれば加熱料理に関する心配は少ないですが、見直したいのが「固形燃料」。旅館の夕食の懐石料理などで一人鍋などを作るアレです。最近はどこの100円ショップでも置いてあり、火力調整も不要なので備蓄品としてもオススメです。
今回はこの固形燃料を中心に100円ショップで売っている道具だけで、「500mlのお湯」を沸かしてみます。お湯さえ沸かすことができれば、カップ麺やフリーズドライのスープ、アルファ米、温かい飲み物を作ることができます。
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「小型の片手鍋」 vs 「パウンドケーキ型」
試してみる道具は、100円ショップで販売されている片手鍋&固形燃料用コンロとアルミ製のパウンドケーキの型。どちらも手軽に入手できて日常的に使えるものです。
14cmの片手鍋&固形燃料用コンロ。100円ショップの商品ですが、片手鍋は150円・固形燃料用コンロは300円という価格設定。両方併せてもワンコインです。
そしてこちらは100円で4枚入りの「パウンドケーキ型」。容量のある薄手のアルミ製なので簡易クッカーとして利用できそうです。
「小型の片手鍋と固形燃料」で湯沸かし
固形燃料と固形燃料用のコンロも100円ショップで入手できます。固形燃料の燃焼時間のカタログスペックは20分〜23分(1個あたり25g)。
固形燃料をコンロにセットするとこうなります。旅館の懐石料理などでよく見るルックスですね。このコンロ自体の重量は520gです。
片手鍋をセット。100円ショップで販売されているこの手の鍋は、安価な分キッチン用の一般的なものに比べて素材が薄いので固形燃料での加熱にも向いています。逆に言えば、キッチン用のそこそこ値段のする鍋は肉厚のシッカリした素材のため、固形燃料には不向きです。
使用前にはよく洗って、換気しながら一度満水状態にして中弱火でしばらく沸騰させてから使いましょう。外装が焼ける際に少々においます。
鍋で沸かす湯量は500ml。とりあえず水を500g計量。ミリリットルは体積(容積・容量)、グラムは質量を表します。水の場合はとりあえず同じです。
着火前に、片手鍋にアルミホイルで簡単なフタを作ります。熱をなるべく逃がしにくいように。
固形燃料に着火します。燃料が入っているプラ容器が燃焼する際に少々ガスが発生するので、換気扇を回しておきましょう。
燃焼時間を図るためにストップウォッチもスタート。なお検証時の室温は20℃程度です。
水の状態から加熱をはじめて、70℃をに達するまでおよそ9分。75℃〜86℃くらいまで上がれば、珈琲を入れるのに最適な湯温です。
加熱スタートから約13分で湯温90℃に到達。まずはこの程度あれば煮炊きに使えるので、固形燃料1個で調理も十分可能なことが判ります(厳冬期の屋外などではもちろん条件が異なります)。
無事に100度に到達したのは加熱開始から18分半後。100円ショップの片手鍋と25gの固形燃料1つで、沸騰したお湯を作れることが判りました。
固形燃料が燃焼完了したのはちょうど23分後。スペックどおりです。燃焼後半では火力もどんどん衰えていきますが、火が消えた段階でも湯温は90℃を超えています。
コンロの中で燃焼完了した固形燃料。溶けたプラカップや残留物が出ます。燃料自体をアルミホイルで覆った商品もありますが、いずれにせよ残留物があるのでこうしてアルミホイルを敷いておくと後片付けが楽です。
固形燃料の下半分を元々覆っていたアルミを超えて流出した残留物。固形燃料使用時は、このように別途小さく畳んだアルミホイルを敷くことをお忘れなく。
製菓用の「パウンドケーキ型」で湯沸かし・「簡易クッカー&コンロ」の作り方
では次に、パウンドケーキ型で湯沸かしできる「簡易クッカー&コンロ」を作ってみましょう。材料となるパウンドケーキ型は、100円でMサイズ4枚入り。素材はアルミニウムで耐熱温度は180℃。これを湯を沸かすクッカー部と固形燃料燃焼用のコンロ部とで2枚使います。そしてクッカーとなる部分とコンロとなる部分の間に、念のため入れるのがこの「焼き網」。こちらも100円で2枚入り。
パウンドケーキ型を2枚。左がコンロ部、右がクッカー部。パウンドケーキ型が1枚あたり25円、焼き網1枚50円、固形燃料は1個あたり33円ですので、この「簡易クッカー&コンロ」は約133円で作れる計算です。
コンロ部にクッカー部をセット。固形燃料が燃える際に必要な空気の取入口を確保するため、このように90度向きを替えてセット。この向きの角度はもっと小さくでも良さそうです。また、鍋敷きがあれば敷きましょう。
コンロ部に据えた固形燃料は、クッカー部の底面の中央にあたるように。
クッカー部に水を500ml(500g)注ぎます。
500mlを注水した状態、7分目程度でしょうか。
こちらも、熱を逃がしにくいようにアルミホイルで簡単なフタをして着火、燃焼開始です。
湯温70度に到達するまで、8分47秒。片手鍋のときとほぼ同じといっていいでしょう。
90度に到達したのは、片手鍋より2分ほど遅い15分半。薄いアルミ素材のため、パウンドケーキ型の側面からの放熱が影響しているのかもしれません。
そしてそこから95℃まで上がるも、20分近くになってもなかなかここから湯温が上昇しません。
最終的に火が消えたのは固形燃料のスペックより3分遅いの26分後。最終的に湯温は100度に達せず95〜96℃止まりでしたが消火時も92℃と、10分以上も90度を超える状態を維持しました。こちらも調理に十分使えそうです。
念のため、固形燃料の直火が当たっていたクッカー部の裏面をチェック。ほぼノーダメージで予想以上に優秀、数回は繰り返し使えそうです。
こちらはコンロ部。固形燃料からは樹脂状の残留物が漏れ出しましたが、こちも実質ノーダメージ。製菓用のパウンドケーキ型ですが、固形燃料用のコンロとしても十分利用できます。
おまけ:パウンドケーキ型で湯沸かしと温度計測をしていた際の様子です。
片手鍋はそもそも「鍋」ですが、100円ショップの良い意味でチープな作り(素材の薄さ的に)が固形燃料のような緩やかな火力の燃料での加熱にも適していることが判ります。
また、パウンドケーキ型も予想外に健闘、沸点の100℃には到達しなかったものの、安定して湯温90℃以上の状態を維持しました。沸点に達しなかったのは、やはり容器全体が薄いアルミニウム素材で熱伝導性が高く、放熱ぶんが大きかった為と推測できます。クッカー部を二重にしてコンロ部とのずらす角度を変えれば、また違う結果が出るかもしれません。
ということで、固形燃料を中心に100円ショップで売ってるもので、湯沸かしをはじめとした簡単な調理が十分に可能です。100円ショップ商品では実用性(実運用性)という点では微妙ですが、普段の生活ではなかなか使う機会のない「固形燃料」に慣れておくと、色々と楽しめますし専用グッズを備えておけばいざという時にも安心。
特にお子さんがいらっしゃるご家庭なら、親の目の届く範囲で「火に慣れる」という使い方もオススメです。子供と一緒にこうして沸かしたお湯で暖かい飲み物やオヤツとしてカップ麺などを作ってみると、お子さんにとっても興味深く新鮮な体験となるでしょう(火の扱いにはくれぐれもご注意を)。
なお、今回使用した100円ショップの固形燃料と片手鍋・パウンドケーキ型を使って、それぞれ「ご飯」を美味しく面倒なく炊くことができます。電気炊飯器以外での炊飯は火加減が難しいと思われがちですが、火加減要らずの自動炊飯。アウトドア派の皆さんにはお馴染みの炊き方ですが、詳しくは次回の記事でお送りします。
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