備蓄食料の「賞味期限」確認してますか?
東日本大震災あたりを機に再び防災意識が高まった近年、特に備蓄用の食料や飲料に関しては長期保存可能という位置づけで「3年」「5年」といった長期間の保存が可能な製品が増えてきました。地震災害を想定した食料や飲料水の備蓄量は一般家庭において従来は3日分と言われてきましたが、近年では最低でも1週間分は用意しておきましょう、という状況になってきています。
被災の規模や範囲が大きくなればなるほど、復旧までの時間も長くなります。熊本地震では、電気と水道が復旧したのは1週間後、ガスは2週間後でした。東日本大震災では電気は1週間で復旧したものの水道は3週間、ガスに至っては1ヶ月以上後となっています。
当然、被災地を中心とした物流もストップしたため、震災発生当日にはスーパーやコンビニなどの店頭から多くのものが無くなり、その後も飲料水すら入手しにくい状況が続いたことは皆さんの記憶にも古くないことでしょう。食料や水の備蓄をされている方も多いかと思います。
一方でつい忘れがちなのが、特に備蓄食料の賞味期限チェックと入れ替えです。2011年に発生した東日本大震災からはだいぶ時間が経ちました。クローゼットの奥や物置に備蓄したもの、期限切れていませんか?
備蓄品の入れ替えは、ストックローテーションやローリングストック法と呼ばれる入れ替えが推奨されています。水や食料に関しては賞味期限が切れる前に、古いものから消費して新しいものを追加して常に備蓄品が使用OKな状態にしておくやり方です。しかし、ついつい忘れてしまうもの。
そこでオススメしたい備蓄食料の1つが、今回ご紹介する「サバイバルフーズ」。賞味期限がなんと「25年間」というケタ違いに長い保存期間が保証されているもの。これを家族分、ある程度の量を用意してしまえばイザという時のベースとなる食事は問題ないでしょう。これにプラスして備蓄品のストックローテーションをおこなっていけば、少なくとも次の震災が発生しても食事面に関しての不安は少なくて済むはずです。
今回、編集部では実際に「サバイバルフーズ」を購入し、防災訓練を兼ねた冬キャンプで調理・試食してみましたのでそのレビューです。
「サバイバルフーズ」とは?
サバイバルフーズは、1963年創業・米国に本社を置く世界最大規模のフリーズドライ食品メーカーであるオレゴンフリーズドライフーズ社が開発した、25年間もの超長期保存が可能なフリーズドライ食品の缶詰シリーズです。
同社は、かつてのベトナム戦争における軍への糧食供給に始まり、米国の宇宙開発の際にはアポロ計画で使われる宇宙飛行士の食事としてNASAからの「月へ向かう宇宙飛行士に、レストランで食べるものと変わらないメニューを味わってもらいたい」という依頼に応じたフリーズドライの宇宙食を開発してきた企業です。
上記写真は、今回編集部で実際に購入したもの。入手可能なサバイバルフーズには小缶と大缶の2種類がありますが、比較的購入しやすい価格帯の小缶をチョイスしてみました。
なお日本国内では、セイエンタプライズ社が国内総販売元となっています。
レビュー対象のサバイバルフーズ
レビュー(試食)するサバイバルフーズは、今回この小缶3個。主食となるクラッカーに、チキンシチューと野菜シチュー。いずれも調理済みのものがフリーズドライの状態で入っています。小缶1つぶんの内容量は、成人の場合たっぷり2.5人前ほど。大人2人+子供1人なら、1缶で1食分が目安と見ていいでしょう。(大缶の場合は、1缶あたり約10食分です)
まずはクラッカーです。日本では昭和の時代からポピュラーな防災食である「カンパン」的な位置づけで、主食となります。
原材料名、内容量、賞味期限表示。一般的なクラッカーとくらべても、シンプルな素材構成です。賞味期限の未来感がジワジワと来ます。
こちらは副菜となる「チキンシチュー」。ポタージュ仕上げとなっています。
原材料などの表示。主原料は野菜と鶏肉です。不安になるような食品添加物もありません。原産国は米国ですね。
続いて「野菜シチュー」です。「VEGETABLE STEW MEATLESS」とあるので、肉無しシチューというわけです。
野菜シチューの原材料等の表示。チキンシチューと似ていますが、こちらは鶏肉の代わりにコーン入り、グリーンピースとニンジンの配合バランスが違うようです。見る限り動物性成分が無いので、ベジタリアンの方でも大丈夫そうです。
開封の儀
さっそく開けて見ることにします。缶上部には樹脂製のソフトカバーが付いていますが、それを外すと折りたたみ式の缶切りが付いています。現在の日本ではプルタブを引き起こしてパッカン!と開ける、いわゆる「イージーオープン缶」が主流ですが、サバイバルフーズは超長期保存のためか缶切りで開けるタイプです。
開缶時、内部が脱気されているのか缶切りを差し込んだ瞬間に「プシュッ」という音がします。
開けてみました。それぞれ酸化を防ぐための脱酸素剤が封入されています。
クラッカーは、そのままでも普通に美味しくいただける風味と食感です。カンパンの場合はかなり固いのでお年寄りやお子さんがそのまま食べるのは少々厳しいですが、こちらは何も言われず出されたら、サバイバルフーズとは判らずに美味しく食べてしまうレベル。
基本的な作り方は一般的なフリーズドライ食品と同様、水を加えて煮込む・お湯を注ぐなどの方法ですが、缶の説明にも明記されている通り、災害等で熱源が無い場合は水を加えてかき混ぜた後にフタをして(フタは付いています)、そのまま40〜50分待つだけで食べられる状態になります。
チキンシチューを実食
ではさっそく、チキンシチューを作って実際に味わってみます。チキンと言うだけあって、フリーズドライ化された鶏肉がゴロゴロと入っています。
フリーズドライ化されたチキンシチューをクッカーに入れ、水を注ぎます。今回は小缶を半量使ったので、注ぐ水の量は小缶の4分目程度。(全量使う場合は、水は小缶の8分目程度です)
調理開始。シングルバーナーで加熱していきます。
やさしくかき混ぜながら、沸騰するまで待ちます。
沸騰したら火を止め、フタをして10分蒸らせば出来上がり。いい香りが漂います。白い角切り状のものはジャガイモです。
チキンシチューの出来上がり。クラッカーを添えれば立派な1食です。水と熱源さえあれば15〜20分程度で暖かく美味しい食事が摂れるものが25年も保存できる商品としてすでに存在することがちょっと驚きです。
炭水化物と動物性&植物性タンパク質に野菜分と、非常食としては栄養構成も十分でしょう。味もなかなか美味しいチキンを使ったクリームシチューとなっています。
野菜シチューの実食
では次に野菜シチューです。ベジタリアンだったりお肉が苦手な場合は、こちらがいいでしょう。
小缶の半量ほど、クッカーに入れます。
ここに水を注いで加熱しながらゆっくりかき混ぜ、チキンシチューと同様に沸騰したら火を止めてフタをし、10分ほど蒸らします。
出来上がりました。一見するとチキンシチューと同じように見えますが、動物性タンパク質である鶏肉が無いぶん、植物性でタンパク質を補うためかグリーンピースが多め・コーンが追加されています。
一般家庭で再現するなら、市販のホワイトシチューのルーとミックスベジタブルにジャガイモで作られたシチューですが、こちらはフリーズドライなので水を加えて煮るだけの超簡単お手軽調理。
クラッカーを加えれば、主食と副菜の暖かな1食が簡単にできあがります。こちらも、なかなか美味しい野菜シチュー。
災害とは無縁な日常においては「え、これってその辺のスーパーで売ってるミックスベジタブル使った手抜きシチューでは?」と感じてしまうかもしれませんが、いざ有事となり周辺のスーパーやコンビニから食料品が消え、炊き出しではオニギリや菓子パンが主となる状態を想像してみるといいかもしれません。
クラッカーの活用方法
まずは主食となるクラッカーから揃えてもいいかもしれません。サバイバルフーズの中でも、もっとも低価格帯にあるものなので、本格的に揃える前の試食用やキャンプでの食事用などにもオススメです。
一般的な缶詰惣菜と組み合わせても美味しくいただくことができました。写真は、焼き鳥の缶詰を乗せて食べてみたところ。ストックローテーションで日常的に手に入る缶詰を回しつつ、主食となるクラッカーを必要な分量備えておくという方法もありです。
ちなみに今回、サバイバルフーズと合わせてみた焼き鳥缶の中で「HOKO・桜姫鶏スタミナ源」は、ゴロゴロとした食べごたえのある大ぶり鶏肉が入ったかなり美味しいものでした。これはキャンプなどでも日常的に活用できる、ちょっと贅沢系の美味しい缶詰です。
まとめ
東日本大震災は「1000年に一度の大地震」と言われましたが、編集部スタッフ自身、覚えのある大きな震災は阪神淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震、鳥取地震など意外と多いと感じています。
今後の発生が予想されている南海トラフ地震では、太平洋岸一帯に被害範囲のさらなる拡大や深刻化なども言われています。東日本では千葉・茨城を中心とした「地震の巣」の活発化も懸念されており、2017年末〜2018年初においては東京湾や伊豆大島あたりを中心とした大きめの地震が頻発しました。
「備えあれば憂い無し」とは良く言ったもので、大きな地震の度に日頃からの備蓄の必要性を痛感したわけですが「喉元過ぎれば熱さを忘れる」という言葉もあります。改めて備蓄品の充実とチェックは重要ですが、意外とコメやパスタなどの炭水化物中心の備蓄に傾きがちであったり、賞味期限の管理が面倒だという点は否めません。
そしていざ震災となれば、避難所が開設されて炊き出しでオニギリなどが配給されるのが常ですが、その場合も炊き出しはどうしても炭水化物中心になりがちです。特に生鮮品は確実に入手困難となるので、タンパク質や野菜類などは缶詰・瓶詰め・乾燥品などに頼ることになります。
そうした状況ではこの「サバイバルフーズ」のような超長期保存が可能なフリーズドライ食品は、有効な選択肢の1つではないでしょうか。特に育ち盛りのお子さんがいるご家庭などであれば、被災時でも子供さんの食事面での栄養バランスをある程度担保できるはずです。
サバイバルフーズに関しては、備蓄用の保存食としての価格だけ見た場合は若干の割高感も感じないわけではありませんが、ストックローテーション不要で25年もの長期間の保存が可能であることを考えれば、その他の備蓄食料の買い替えローテーションと保存コストと比べても十分見合うものではないでしょうか。そして、宇宙開発や軍需産業では極めて高品質なものが要求されるので、そうした背景を持つサバイバルフーズは製品の信頼性・保存性という点ではまちがいなく「いま備えておくべき防災用品」の1つと言えます。