1995年の阪神淡路大震災から29年
1995年(平成7年)1月17日の早朝、5時46分52秒。兵庫県沖の明石海峡を震源としてM7.3・最大震度7の大規模な地震「兵庫県南部地震」が発生しました。この地震によって引き起こされた災害が『阪神淡路大震災』です。
近畿地方を中心に6,434人もの人命が失われ、3名の行方不明者、負傷者は43,792人とされ、被害総額は約10兆円という巨大災害となりました。
当時は現在のように高速なインターネットではなく、もちろんスマホもありませんでした。当然、TwitterもLINEもfacebookもinstagramも存在していません。
国内のインターネットはようやく商用や個人利用が始まったばかりの頃で、スマホや携帯電話ではない「固定電話回線」を使った「パソコン通信ネットワーク」と呼ばれるインターネットとは別のものを利用し、電子掲示板サービスなどを使って被災情報などの交換がおこなわれました。
2023年は阪神淡路大震災から28年、あの日から四半世紀以上。
この28年の間にも日本では地震をはじめとするいくつもの大きな自然災害が繰り返し発生し、そのつど多くの人命が再び失われていきました。新潟県中越(沖)地震、東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)、熊本地震、大阪府北部地震、北海道胆振東部地震 …
そしてこの先の30年内にも、首都直下型地震や南海トラフ巨大地震など、複数の大規模災害の発生が予想されています。
2011年の東日本大震災から13年
2011年3月11日 14時46分18秒。宮城県牡鹿半島の東南東沖130km沖を震源としてM9.0・最大震度7という巨大地震「東北地方太平洋沖地震」が発生しました。この地震によって引き起こされた災害が『東日本大震災』です。
東北地方〜関東地方を中心に15,899人もの人命が失われ、2,526名の行方不明者、負傷者は6,157人とされるなど多大な被害が発生し、なによりも津波で福島第一原子力発電所が被災。1〜5号機で全交流電源を喪失後に原子炉を冷却できなくなり、1号炉・2号炉・3号炉でメルトダウンが発生。大量の放射性物質の漏洩を伴う重大な原子力事故につながりました。
この原発事故は、国際原子力事象評価尺度で最悪の「レベル7」、チェルノブイリ原子力発電所事故と同等に位置づけられています。
また2022年は阪神淡路大震災から27年。この間にも日本では地震をはじめとするいくつもの大きな自然災害が繰り返し発生し、そのつど多くの人命が再び失われていきました。熊本地震、大阪府北部地震、北海道胆振東部地震 …
そしてこの先の30年内にも、首都直下型地震や南海トラフ巨大地震など、複数の大規模災害の発生が予想されています。
2019年、台風通過による大規模停電発生
2019/09/08〜09/09には台風15号が首都圏を直撃、特に千葉県を中心に大規模な停電が発生。台風通過時〜直後にはおよそ80万戸を超える停電となり、千葉県内では君津市で大型の送電線の鉄塔が2基倒壊。
停電に関しては9/11の19時で40万軒、9/13の朝9時でも20万軒を超える規模で電力が復旧していないと言う、深刻な状況となっています。
併せてインターネット回線も不通となったためスマホやテレビなどが使えない状況となり、ポータブルラジオなどを備えていた方々以外は支援に関する情報の入手が困難となってしまいました。
そして思い出されるのが2018/09/06に発生した「北海道胆振東部地震」。日本海を北上した「台風21号」が地震発生前日に北海道付近を通過、その影響で停電発生。特に道内全域で停電するブラックアウトが発生し、1951年の北海道電力創設以来、初の大規模停電となりました。
2020年、新型コロナウイルスによる世界規模での感染が発生
2020年初から新型コロナウイルスによる世界規模な感染が拡大、概ね終息するまでは3年以上の期間を要しました。
もしこの状況下で震災級の大きな地震が発生したら、状況の深刻さは想像を絶することになる可能性が高くなるでしょう。過去の震災例を顧みても発災後の初動時の避難所は混乱し、開放された各地の体育館などでは避難者が家族ごとに仕切られることもない「密な雑魚寝」の状態になりました。コロナ禍の状況であれば避難所でクラスターが発生する可能性が高くなるのは間違いありません。
自宅が無事であれば、まずは「在宅避難」を優先すべきです。ここでは大震災を例に取り、発災直後にほぼ必ず起きる状況と、次の大地震に備えて最低限、備蓄しておくべき物資をご紹介します。
ITOITO-STYLE編集部には日本防災士機構認定の防災士が在籍しており、東日本大震災における自身の生活困窮の経験のもとづいて実際に実践しているものばかりです。
なお、備蓄品の調達は大地震が起きてからでは遅いのです。何も無い平時に調達しておきましょう。
繰り返された大地震
2018年に発生した「北海道胆振東部地震(ほっかいどういぶりとうぶじしん)」の発生は、2016年の熊本地震からたったの2年です。
これまで北海道で想定されてきた大地震は、千島海溝でのプレート移動に起因する海溝型のM8〜9クラスの巨大地震でした。しかし、北海道胆振東部地震の震源はそこではなく、やや内陸部の北海道胆振地方で断層型のものでした。
プレート移動による海溝型の地震は将来必ず起きると言っていいと思いますが、やっかいなのはこの断層型です。
日本国内には確認されている活断層は約2000箇所ありますが、未知の断層帯(隠れ断層帯)に関してはその倍の約4000箇所が存在すると言われています。
すでに「将来の発生確率がゼロ%」とされた箇所でも大きな地震が起きていることや、海溝型である南海トラフ巨大地震の発生予測に関してもすでに現実は「科学的に高確度な予測は困難」という結論が出ており、次の大震災がいつ・どこで起きるかを議論するのは、一般庶民レベルでは大きな意味を持たないと言えるかもしれません。
であれば、備えるのみです。
ここでは大地震直後にほぼ必ず起きる状況と、次の大地震に備えて最低限、備蓄しておくべき物資をご紹介します。
ITOITO-STYLE編集部には日本防災士機構認定の防災士が在籍しており、東日本大震災における自身の生活困窮の経験のもとづいて実際に実践しているものばかりです。
なお、備蓄品の調達は大地震が起きてからでは遅いのです。何も無い平時に調達しておきましょう。
発災直後に起きうる状況
発災直後は、次のような状況が高確率で現実化します。
① 停電(電気が止まる)
② 断水(水道が止まる)
③ 都市ガスの供給停止
④ 物流が止まりお店から商品がなくなる
⑤ ガソリンや灯油などの燃料が入手困難に
⑥ 住居などの建物の破損や倒壊
⑦ 交通網の麻痺
⑧ 震災の場合は地盤の液状化で泥(泥水)が路上に出てくる
① 停電(電気が止まる)
震災直後は停電が発生し、場合によっては復旧まで数日を要し、復旧しても節電を余儀なくされる状況がしばらく続くことになります。
特にオール電化住宅などでは電気が復旧するまでの間、IH方式の調理器具なども使えなくなります。
② 断水(水道が止まる)
上水道の送水設備の停止や敷設された水道管の破損などにより、水道が使えなくなります。
キッチンやバスルームなどで水が出なくなり、水洗トイレや洗濯機も使用不可能となります。
③ 都市ガスの供給停止
都市ガスを利用している家庭や事業所・店舗などではガスを使った調理器具や給湯機器・暖房設備などが使えなくなります。
大きな災害時は、まずガスの元栓を忘れずに閉めましょう。
④ 物流が止まりお店から商品がなくなる
過去の震災事例でも100%発生している状況です。
地震の発生直後から人々が店舗に殺到し、飲料水や食料・各種消耗品などが短時間で売り切れになります。買い占めなども起きます。
そして、その後は数日〜1週間程度は商品の補充も困難となります。
⑤ ガソリンや灯油などの燃料が入手困難に
ガソリンスタンドへのガソリンの定期供給が一時的に途絶えるため、スタンドへの沿道ではガソリンを求める車で行列ができます。
石油ストーブの燃料となる灯油もガソリンスタンドで供給されることが多いですが、こちらも在庫限りの状況となります。
⑥ 住居などの建物の破損や倒壊
各地で建物の破損・全半壊・倒壊などの状況が発生します。
特に、住宅の裏が崖や山である場所などでは、地震の影響で崩れた土砂によって住宅が飲み込まれるケースが発生します。
2019年の台風15号では暴風により千葉県内の送電線の大型の鉄塔が2基、倒壊する事態となりました。
⑦ 交通網の麻痺
道路の陥没や地割れ、崖崩れなどによって通行不能となる道路がいくつも生じます。停電により信号機なども停止します。
鉄道路線も、線路の歪みや曲がり・軌道上の敷石の流失や設備破損により場合によっては長期間の運行停止となります。
空の便も空港設備や滑走路の破損などによって運行停止となります。
⑧ 震災の場合は地盤の液状化で泥(泥水)が路上に出てくる
震災と呼べる規模の地震が起きた際は、沿岸部の埋立地や河川沿いの低地・地下水の豊富な地質の周辺では地盤の液状化が発生し、土や砂を多く含む泥水が地表に噴出します。
噴出が収まった後には水分を多く含む泥が堆積し、復旧作業や通行の障害となることが多くあります。
個人や家庭レベルで可能な備えは必ず実施
上記のような状況になったとしても、個人や家庭で事前にやれる対策はいくつもあり、また個人レベルでは対応不可能はものも当然あります。
順不同となりますが、次の順番に解説します。
A. そもそも個人では対応不可能なもの:⑦〜⑧
B. 条件付きである程度の備えが可能なもの:⑤〜⑥
C. 個人や家庭で備えが可能なもの:①〜④
A. そもそも個人では対応不可能なもの
⑦ 交通網の麻痺
⑧ 地盤の液状化で泥(泥水)が路上に出てくる
について。
これらは、もはや個人レベルでできることはありません。国や自治体などの対応を待つしかありません。
B. 条件付きである程度の備えが可能なもの
⑤ ガソリンや灯油などの燃料が入手困難に
⑥ 住居などの建物の破損や倒壊
について。
●ガソリンは基本、個人で備蓄はしない
燃料類の中でも特にガソリンは引火性と揮発性が高いため、個人での保管・運用は困難です。ガソリン携行缶などが販売されていますが、扱いになれていない一般個人が使うには火災に繋がる恐れがあり極めて危険です。
ガソリンの入手は必ずガソリンスタンドで。入手できない場合は車の利用はいったん中止して、ガソリンが入手できるまで待機しつつ無理のない範囲での徒歩や自転車などの別の手段を使うようにしましょう。
●灯油は基準と用法用量を守って備蓄する
灯油に関しては灯油用のポリタンクがホームセンターなどで入手できます。保管には消防法と市町村の火災予防条例が適用されますが、それに従えばご家庭での備蓄も可能です(入れ替え目安は5年)。
例えば東京消防庁の公開資料によれば、灯油に関しては200L未満であれば届出の必要なく保管できます。お住まいの市町村の基準を確認してから備蓄しましょう。
●住居などの建物の破損や倒壊時
破損の度合いに応じて実行すべきことが多々ありますが、まずはお住まいの自治体に罹災(りさい)証明を申請し、住居契約時の地震保険などをすべて確認・保険会社への問い合わせを。
関連記事:地震・火災保険の補償内容を確認してみよう!▶
C. 個人や家庭で備えが可能なもの
以降は個人や家庭レベルで対応が十分可能であり、いかに備えておくかで発災直後の生活の質が大きく変わる部分です。
① 停電(電気が止まる)
停電対策については、個人でも対応できる選択肢がいろいろあります。
・日頃から備蓄用の電池を購入しておく(充電式が望ましい)
・スマホ用にモバイルバッテリーを用意し、日常使いして使い慣れておく
・ある程度の家電を動かす想定で、ポータブル電源を用意しておく
・USB給電可能なソーラーチャージャーを用意しておく
充電式の電池は日常生活においても何かと便利です。単1〜単4などいくつかサイズがありますが、サイズが大きいほど容量も大きくなります。
単3形式がもっとも多く見られますが、これを2〜4本束ねて単1サイズにして使えるスペーサーも用意しておくと便利です。
モバイルバッテリーに関しては、すでに活用中の方も多いと思います。低容量のものであれば百円ショップでも入手可能ですが、スマホを2回程度は満充電できるように、10000mAh以上でコンパクトなものを用意しておきましょう。
ポータブル電源があれば、停電時でもある程度の家電を動かすことができます。夏ならサーキュレーターを2日、冬なら電気毛布を2晩。
ただし家電なら何でも動かせるわけではなく、消費電力の大きなものは使えません。消費電力が十数Wh〜数十Wh程度のものが目安です。
USB給電が可能な出力60W程度以上のソーラーチャージャーがあれば、モバイルバッテリーであれば冬でも実用レベルで充電が可能です。
ただ電力は比較的早期に復旧することも多いので、そのあたりも考慮して必要なものを無理の無い範囲で選定しましょう。
関連記事①:キャンプや災害時に有益な「ポータブル電源」を備えよう!▶
関連記事②:災害・キャンプに、小型ポータブル電源&ソーラーチャージャーを備える!▶
② 断水(水道が止まる)
断水時に備えて事前にできることは、お風呂の残り湯はなるべく常に張っておくことと、ミネラルウォーターの備蓄をおこなうことです。
飲料水に関しては、およその目安として家族4人構成であれば1日に10L必要となります。1週間で70〜100Lが目安です。意外と大量ですが、現実的に備えるにはこの量が必要です。
消費期限が切れても生活用水として使えるため、ローテーション消費をしながら備えておきましょう。
また、アウトドア用の携帯用の浄水器があれば、イザというときは河川の水などを濾過して利用することができます。
何より不自由するのが水洗トイレを使えなくなることです。簡易トイレを必ず用意しておきましょう。
お風呂の残り湯を使って流したいところですが、マンションやアパートなどの集合住宅では、地震によって排水管が破損した状態で汚水を流すと、それが階下のお宅に溢れて二次被害につながる恐れがあります。
まずは排水管の無事が確認できるまでは排泄物はすべて簡易トイレで処理をして、自宅の敷地内やベランダなどに大きめのポリ容器などをおいて保管します。ゴミの回収が復活したら、燃やすゴミとして出します。
簡易トイレの使用時の最大の障害は、編集部スタッフの体験にもとづけば「簡易トイレで用を足すという状況に対する精神的なハードル」です。これは何も無い平時に一度、練習しておきましょう。(そのうち練習する、ではなく、早めにやっておきましょう!)
簡易トイレの「うんち」を含めた実践的な使い方は、こちらの記事をご覧ください。
③ 都市ガスの供給停止
都市ガスの供給停止に備えて事前にできることは、カセットコンロの準備とカセットガスボンベの備蓄です。カセットガスボンベの備蓄量の目安は、気温によって違ってきます。
カセットガス製品の大手メーカーである岩谷産業さんの資料によれば、食事・温かい飲み物・殺菌洗浄用のお湯をそれぞれ1日3回沸かすための必要なカセットガスボンベの量は、
(1) 気温10℃で大人2人の場合、1週間で9.1本
(2) 気温25℃で大人2人の場合、1週間で6.3本
とのことです。1.5倍程度の余裕を見込んで、大人2人であれば1週間あたり9〜15本を目安に備えておくといいでしょう。
また、カセットガスボンベの消費期限は約7年。日常の鍋料理などの際に、ローテーション消費していくのがオススメです。
また、ちょっとした湯沸かしや調理時に便利なのが百円ショップでも売っている「固形燃料」です。固形燃料が1つあれば、お米1合を美味しく炊き上げることができます。
1日1〜2回、一度に2合のお米を固形燃料で炊く場合は1日4個。1週間で28個あれば不自由しません。
関連記事①:【検証】100円ショップ商品だけで、美味しいご飯を簡単に炊く!▶
関連記事②:【検証】空き缶で作った「固形燃料コンロ」と「アルミホイル」で炊飯!▶
関連記事③:【備災メシ】基本のクッカー炊飯▶
④ 物流が止まりお店から商品がなくなる
これは必ず起きます。100%起きます
これまでの震災後の報道映像でも、スーパーやコンビニ、ドラッグストアの店頭で行列を作っている人々を見たと思います。
しかも震災後はいつもより多くの人々がお店に殺到し、必要以上の量を購入したり買い占めも起きます。
備蓄品は、何も無い平時に必ず用意してください。震災発生後はむしろ、お店に買いに行かないで済む状態にしておきましょう。
また備蓄品の保管場所は、できる限り家の中の高い場所(戸建てなら最上階)で、ドアや窓の近くにします。万が一自宅が倒壊した場合でも外部から取り出せる可能性の高い場所に、なるべく丈夫なケースなどに収納しておきます。
次はいよいよ、最低限これだけは用意をしておくべき備蓄品リストです。
最低限、これだけは用意しておくべき備蓄品
今回厳選したものは次の11カテゴリーです。それぞれを詳しくご紹介します。
① LEDヘッドライトやランタン
② 飲料水と水汲み容器
③ 簡易トイレ・トイレットペーパー・防臭袋
④ ウェットティッシュ・除菌用アルコール・ゴミ袋
⑤ 食料:保存食と備蓄可能な野菜類
⑥ ポータブルラジオ
⑦ カセットコンロ・カセットガスボンベ
⑧ モバイルバッテリー・ソーラーチャージャー・ポータブル電源
⑨ 軍手や使い捨てのビニール手袋
⑩ 毛布類やその代わりになるもの
⑪ 新生児や要介護者がいる場合は紙オムツ、女性の場合は衛生用品
⑫ 救急セットと常備薬
① LEDヘッドライトやランタン
震災当日の夜は街全体が停電し、月明かりでも無い限りは真っ暗になります。暗闇での行動は危険ですし、不安も増えます。
移動時や何らかの捜索・作業時には手で持つ懐中電灯タイプよりも頭にかぶるタイプの「ヘッドライト」を。両手が使えるので作業効率や安全性が確保できます。
スマホにもライト機能はありますが、使えば当然スマホのバッテリーを消費しますし、手持ちだと万が一、何かにつまづいて転んだ際に怪我をしたりスマホを壊したりする恐れが。灯りは専用のものを用意しましょう。
② 飲料水と水汲み容器
前述しましたが、飲料水はなるべく十分に備蓄しておきましょう。ミネラルウォーターの箱買いが便利です。
また、5Lや10Lサイズの水用ポリタンクやウォーターバッグなどの容器を用意しておくと、給水車が来た時にまとまった量の水を運べます。
③ 簡易トイレ・トイレットペーパー・防臭袋
食料よりもむしろ、こちらのほうが優先度が高いと言っても過言ではありません。特にトイレットペーパーは震災直後に買い占めが起きてしまいます。
簡易トイレは購入して安心するのではなく、平時に必ず練習を。「防臭袋」があれば汚物のニオイを漏らさずに済むため、余分に用意しておくと便利です。
備蓄食品としてサバ缶などの魚介類の缶詰めを食べた後の空き缶は、放置しておくと腐敗し悪臭の元になりますが、防臭袋に入れてしまえばそれも解決できます。
簡易トイレの「うんち」まで含めた実践的な検証に関しては、ぜひこちらの記事も併せてご覧ください。
④ ウェットティッシュ・除菌用アルコール・ゴミ袋
断水時はシャワーを浴びることができないどころか、手を洗うことすら難しくなります。
そうした場合にウェットティッシュと除菌用アルコールがあれば、身体の汚れ落としや食器などの対応を含め、衛生状態の維持にかなり役立ちます。多めに備えておいて損はありません。
もちろん、ゴミ袋も忘れてはいけません。汚れものやゴミを入れるだけでなく、物資を運んだり保存したり、靴が破れたり無くしたときに足先に巻き付けて簡易的なスリッパ代わりにしたり。「開き」にして衣服の下に入れれば多少の防寒用にもなります。
⑤ 食料:保存食と備蓄可能な野菜類
まずは長期保存可で非加熱で食べられるものを。総合栄養食などがいいでしょう。ガスなどが使えれば調理ができるので別途、無洗米や乾麺タイプのパスタ(マカロニ)などを用意しておけば主食も温かなものを用意できます。
しかしそれだけでは不十分。被災生活では食事がオニギリやパンなどの炭水化物に偏りがちになるので、缶詰めの肉・魚・フルーツ、乾燥野菜、瓶詰めのピクルスやザワークラウトなどを用意しておけば、そのぶん栄養バランスを維持できます。
餓死を防ぐのではなく、いつもの食生活に近いバランスの取れた食事を被災時にいかに実現するかは重要な視点です。
災害時に野菜をいかに補給するかに関しては、ぜひこちらの記事も併せてご覧ください。
関連記事: 野菜価格高騰や災害に備える「野菜備蓄」! ▶
⑥ ポータブルラジオ
停電時の情報収集に役立つのがラジオ。乾電池でも動くポータブルなものがいいでしょう。スマホのラジオアプリもありますが、やはりスマホのバッテリーはできる限り温存したいのでラジオは専用のものをオススメします。
AMラジオよりはFM、特に「ワイドFM」対応のものを。AMラジオは鉄筋の建物の中などでは電波の入りが悪くなることがあります。
その点、ワイドFM(FM補完放送)対応のラジオであれば、AM放送が受信できる場所であれば災害や電波障害に強いFMの周波数を使い、AMラジオの番組を受信することができます。
⑦ カセットコンロ・カセットガスボンベ
これが使えると、被災生活の質がかなり違います。温かいものが食べられる・飲める状況は、生活に安堵感をもたらしてくれるものです。
使える水に余裕がある場合は、お湯を沸かしてタオルなどを湿らして身体を拭くこともできます。
カセットコンロは日常においても鍋物などで普段づかいできる便利グッズですから、すでにお持ちの方も多いはず。カセットガスボンベの備蓄だけすれば良い状況であれば、ぜひボンベの用意を。
カセットガスボンベの備蓄量の目安は、大人2人であれば1週間あたり9〜15本程度です。
※ カセットガス・ストーブにご興味があれば、こちらのレビュー記事も併せてご覧ください。
⑧ モバイルバッテリー・ソーラーチャージャー・ポータブル電源
大きな地震のたびに所望する人が多く、店頭から無くなるのも早いのがバッテリー類です。
スマホを1回程度充電できる容量のものであれば百円ショップでも販売されていますが、やはり2〜3回は充電可能な容量のものがいいでしょう。複数個を持っていれば、それだけ安心感も増えます。
例えば「iPhone X」であれば、バッテリー容量は「2,716mAh」。用意しておくモバイルバッテリーは最低限、10,000mAh程度のものがオススメです。
(なお、スマホは常時持っている前提です)
同時にあると便利なものが「USB給電ができるソーラーチャージャー」。こちらも防災面とアウトドア用途で備える人が増えているものです。大型のソーラー発電システムが無くても、最低限モバイルバッテリーを充電する程度には実用レベルで使えます(編集部スタッフもキャンプで実際に活用しています)。
また、ある程度の家電まで使える「ポータブル電源」は近年の防災とアウトドアシーンにおいても必須アイテムになりつつあります。お値段もやや高くなるため含めるかどうか迷いましたが、やはりあると無いとでは違います。予算的に余力があればぜひ備えておきたいものです。
なおソーラーチャージャーとポータブル電源の実践的な検証に関しては、ぜひこちらの記事も併せてご覧ください。
関連記事: 災害・キャンプに、小型ポータブル電源&ソーラーチャージャーを備える! ▶
⑨ 軍手や使い捨てのビニール手袋、食品用ラップ類
自宅や生活拠点で地震によって破損したモノやガレキを片付けたり、調理した鍋を運んだりするときにあると便利なのが軍手。
また被災生活での調理時にには手を自由に洗えない場面の多いため、使い捨てのビニール手袋があると様々な場面でメリットがあります。
サランラップやクレラップなどに代表される食品用ラップフィルム類も用意しておきましょう。洗い物ができない場合に食器にかぶせてから食材を盛れば、食後にラップを捨てるだけで済みます。
⑩ 毛布類やその代わりになるもの
季節にもよりますが、夏場でも夜中〜明け方は気温が下がります。家族が多いと多少かさばりますが、やはり1人1枚あると安心です。
緊急時の体温維持に使えるアルミ蒸着シート(サバイバル・シート)は、被災生活における就寝用途には向いていません。
汗をかいてもシートの内側にとどまって蒸発していかないため、気温推移によっては身体を冷やして風邪をひく可能性もあります。
⑪ 新生児や要介護者がいる場合は紙オムツ、女性の場合は衛生用品
こちらも震災直後はトイレットペーパーと並んで、大量買いや買い占めなどですぐに店頭から姿を消すものです。
普段から備蓄用を含めて用意しておき、常にストックがある状態でローテーション消費する生活パターンにしておけば、いざというときでも慌てずに済みます。
⑫ 救急セットと常備薬
不意の怪我や持病がある場合などにも備えは必要です。停電時の夕刻以降は視界も悪く、転倒などによって負傷する場合もあります。
持病がある場合、すぐに病院や薬局に行くことができない状況になることも想定できますので、日常的に服用している薬がある場合は多少余裕を持って備えておくと安心できます。
花粉症などのアレルギーをお持ちのかたや胃腸が弱い場合などで服用薬がドラッグストアなどで入手できる場合は、備蓄品に追加しておきましょう。
さいごに
千葉県で発生した大規模停電の直後、対象地域ではガソリンや食料品などを求める人々が長い行列を作りました。1年前の北海道胆振東部地震の直後のニュース報道を目にした際も、停電の中で営業を続けているコンビニやスーパーの店頭に数多くの人々が物資を求めて行列をなしているのを目にしました。
それは、編集部スタッフが東日本大震災のときに身をもって体験した行列と同じでした。必要とされるもの、すぐに売り切れるものも同じ、買い占めに遭うものも同じでした。
北海道胆振東部地震の際は、報道番組のコメンテーターが「北海道にお住まいのかたがたは、地震は起きないものと日常的に考えている。だから備蓄などを含めて大きな地震に対する意識が薄い」と発言していました。
東日本大震災が来るまで、編集部スタッフもそれは同じ意識でした。しかし、今や日本のどこにいても地震に対して安全な場所は無く、次にどこに大地震が発生してもおかしくないと考えて備えるべきでしょう。
「まだいいや」と考えて先送りにするのか、それとも「今、備える」のか。その差は実際に大地震が起きてしまった時に如実に現れてしまいます。
ぜひ、明日にでも、今この後にでも、無理の無い範囲で必要なものを備え始めてください。
一気に備えなくても大丈夫です。少しづつでも大丈夫です。大切なことは備える意識を持ち、行動することです。起きてからでは遅いのです。