万能便利食「おにぎリゾット」
阪神淡路大震災、東日本大震災、熊本地震、鳥取中部地震。いずれの被災地でも食事としてまず支給されたのがパン類と併せて「おにぎり」ですね。東日本大震災のときは、3月11日からの2ヶ月で被災地に運ばれた政府調達のおにぎりだけで約350万食。
加えて、大手スーパーやコンビニチェーンなどを運営する企業各社からの支援物資や全国からの有志による炊き出しなどでも、数多くのおにぎりが被災地で振る舞われます。温かいうちにいただけるのは嬉しいものですが、時間が経ってしまうと冷めてしまったり衛生面での不安が生じたりするものです。そんな「おにぎり」を備蓄品と組み合わせて、簡単で美味しく再加熱して安全にいただけるレシピが、この「おにぎリゾット」。今回はレシピを5種類ご紹介。日々の食卓やアウトドアやキャンプでの食事、そして山めしにも活用できます。
日頃からあらかじめ、フリーズドライのスープ類、乾燥食材、缶詰類などを備蓄しておきましょう。定期的に使って入れ替える「ローテーション消費」がオススメです。
おにぎりの種類でレシピ分けを考える
震災直後、比較的早いタイミングで外食中食産業やコンビニチェーン各社などから支援物資として提供される「おにぎり」の場合、バラエティ豊かな商品性ゆえ様々な味付けのものが運び込まれてきます。
もっともシンプルな「塩おにぎり」。後日から開始される炊き出しなどでは、この塩おにぎりが多くなります。シンプルゆえに続く場合は副菜が欲しくなります。「おにぎリゾット」のベースとしてはもっとも応用が効きます。
「ザ・おにぎり」としての定番のルックスと具材ですね。伝統の「しゃけにぎり」に加えて、幅広い世代に人気の「ツナマヨ」。ツナマヨおにぎりの発祥はコンビニのセブンイレブンで、1983年に初めて世に出た商品です。どちらも和風・洋風問わずアレンジしやすい種類。
「かやくごはん系」おにぎり。炒飯やオムライスなどご飯自体に味付けがされているおにぎりは、中華や洋食系のアレンジに適しています。
では、さっそく「おにぎリゾット」を作っていきましょう。
①「塩おにぎり」で野菜とアサリたっぷりの「おにぎリゾット」
フリーズドライの野菜スープとアサリの水煮缶で煮込むだけ!
材料はこちら。塩おにぎり以外は、スーパーやコンビニで手に入るフリーズドライの野菜スープと、アサリの水煮缶です。
フリーズドライスープを使うので、お湯を沸かします。スープの塩分とおにぎりの塩分があるので、分量プラスアルファ(+50〜60ml)の量の水を用意します。
お湯が沸いたら、塩おにぎり・フリーズドライの野菜スープ・そしてアサリの水煮缶の汁を投入。アサリの水煮は煮込むと身が縮むので仕上げ直前に入れます。
スープでおにぎりを弱火でコトコトと煮込みましょう。
仕上げにアサリの身を入れてひと煮立ちさせたら完成。
シンプルな塩おにぎりが、美味しい一品に。アサリには貧血予防や疲労回復効果が見込めます。野菜も摂れるフリーズドライの野菜スープは、常に備蓄しておきたい食材です。
②「鮭おにぎり」と鮭水煮缶・鮭茶漬けで作る鮭づくしの「おにぎリゾット」
とにかく鮭・しゃけ・サーモンです。鮭好きにはたまらない組み合わせです。
材料はこちら。紅しゃけおにぎり以外に、鮭水煮缶、鮭茶漬けのもと、乾燥ワケギ。ピンクサーモンの缶詰は、100円ショップで購入できます。
最初に海苔を外します。最後の仕上げに加えるか、そのままパクっとつまんでしまいます。
お湯を沸かしたら鮭水煮缶の中身を投入してほぐしながらコトコト。缶の汁は加えてもよし加えなくてもよし。塩分が気になる方は加えないほうがいいかもしれません。
おにぎりが煮込まれてきたら、鮭茶漬けの素を投入。まずは半量ほど入れてかき混ぜ、味見しましょう。ちょうどよければそのまま、薄かったら残り全量入れます。
鮭茶漬けの素の「アラレ」の食感が残る程度にさっと煮て完成。
仕上げに乾燥ワケギを散らせます。最初におにぎりから外した海苔をちぎって入れても美味しいです。
③「ツナマヨおにぎり」とホタテのクラムチャウダーで作る「おにぎリゾット」
ホタテのクラムチャウダーもフリーズドライ。ツナマヨとの相性もバッチリです。
フリーズドライの「ほたてのクラムチャウダー」と、ドライパックの「10種類ミックス」。どちらも長期備蓄向きです。
サラダクラブの10種類ミックスは、手軽に豆と穀物が摂れるのでちょい足し素材としてもとても便利。
分量より少し多めのお湯を沸かして、海苔を外したツナマヨおにぎり、ほたてのクラムチャウダー、10種類ミックスをすべて入れます。
弱火でコトコト、優しくかき混ぜながら煮込んでトロミが付いてきたら完成です。簡単ですね。
煮込む前に外した海苔を敷いたところによそってもよし。
豆類&穀類を追加したので、タンパク質と繊維質を摂取できます。アツアツでたべると美味しいですよ。ツナマヨおにぎりがちょっとしたゴチソウに。
④「オムライスおむすび」と完熟トマトスープ&豆類で作る「おにぎリゾット」
近年、コンビニ各社から発売される惣菜系おにぎり。その中でも「オムライスおむすび」とフリーズドライのトマトスープの相性は抜群!
材料はこちら。フリーズドライのトマトスープ、オムライスおむすび、そしてミックスビーンズ。トマトの抗酸化物質であるリコピンと豆のタンパク質&繊維質を摂れる組み合わせ。
「ふわっふわ!」というキャッチコピーの通り、このおむすびはオムレツ部分が驚きのふわふわ感を持っています。温めてさらに美味しいということで、「おにぎリゾット」にもマッチした素材。おむすび部分はケチャップライスなので、トマトスープとも当然合います。
10種類ミックスに続いて、サラダクラブの「ミックスビーンズ」。このシリーズはシンプル素材のドライパックで賞味期限が半年〜1年近くあるため、ローテーション消費しながらの備蓄品にぜひ追加しておきたいオススメの「ちょい足し」食材。
ではこちらも、分量より多めの湯量ですべての材料をコトコトしていきます。オムレツ部分は事前に小さくカットしても良いでしょう。
弱火〜中火以下でコトコト煮込んでほどよくトロミがついたら完成。
オムレツ部分は、コトコト煮込むとさらにふわっふわ食感になります。トマトスープで煮込んだケチャップライスがミックスビーンズの心地よい歯ごたえとともに、止まらなくなる美味しさです。
⑤「炒飯おにぎり」とカニ缶&中華スープで作る「おにぎリゾット」
惣菜系おにぎりとしてコンビニ各社で扱っている「炒飯おむすび」は、カニ入り中華スープ仕立てにすると絶品です。
材料はこちら。おにぎり以外は、もちろんどれも長期備蓄向きの食材ばかり。味が濃い目なので、野菜っ気が欲しいところ。そこはこの乾燥素材「ラーメンの具」を使います。他の乾燥野菜でも可。
カニ缶は高い!と思いがちですが、実は100円ショップでも手に入ってしまいます。たとえば左の「マルハ まるずわいがにほぐしみ」は1缶200円台後半ですが、右の「わたりがにほぐし身」なら100円ショップで100円!
では調理していきます。お湯を沸かしたらまずは「ラーメンの具」を。乾燥食材を一番先にもどします。なお、湯量はスープに必要な量 + 50〜60ml程度。
乾燥食材がもどったら、炒飯おにぎり・フリーズドライの中華スープの素・カニ缶の中身を全部入れます。
毎度おなじみ、コトコト煮込んでトロミがついてきたら完成。
お店に行けば「中華あんかけチャーハン」などがありますが、ほんのちょっとだけそれを彷彿とさせる味わいの「おにぎリゾット」の出来上がり。さらに乾燥野菜やミックスビーンズ、カリウムを多く含む乾燥海藻類などを追加すれば、塩分も気にならなくなりますしボリュームも出ます。
あらためて、被災時の食事に不足しがちな食材と栄養を考える
過去の避難所調査で、被災時に不足しがちな食材としてまずは野菜や果物などの生鮮食品に加えて砂糖や豆芋類が挙げられました。初期の食事はおにぎり、パン、インスタントラーメン等の炭水化物が中心になるため、不足栄養素としてはタンパク質・ビタミン類・鉄分・カルシウム・繊維質などが挙がっています。いずれにせよ流通インフラが復旧するまでの間は生鮮食品は入手困難になるため、乾燥食材や缶詰などで対応することになります。
肉類や魚介類は年単位で保存が効く缶詰が最適でしょう。賞味期限が過ぎても缶が膨らんでいない限りは、けっこう長期間食べることができます。植物性タンパク質に関しては、ドライパックの豆類・乾物である高野豆腐などがオススメです。こちらは数ヶ月単位でのローテーション消費と補充がオススメです。
精神的にもキツい日々が続く被災生活では、甘いものがあるとひと息つけるもの。そんなときには、ドライフルーツや缶詰のフルーツを備蓄しておけば対応できます。気軽に開けて食べられるものは100円ショップでも売っていますし、ちょっと高級なフルーツ缶も用意しておけばイザという時にもうひと踏ん張りできるかも。
単なる「おにぎり」1つでもスープや缶詰と組み合わせることで、美味しいリゾット風の食事になることがお分かりいただけたかと思います。
おにぎりが無くとも、自前で米やパックごはんを備蓄しておけば同様のレシピで美味しい「備災リゾット」を作ることができます。被災時でも支援のおにぎりを入手できた上で備蓄品と組み合わせれば、流通が復旧するまでの間の食糧の節約にも繋がります。
熊本地震では初動における避難所ごとの支援物資の供給量のバランスがなかなか取れず、十分な支援物資を得られたところと水・食糧不足が慢性化しているところとの「支援物資格差」が浮き彫りになりました。
「おにぎりとおしるこ」しか物資が届かなかった避難所がある反面、集中して余るほど支援物資が届いてしまったとある避難所においては、衛生面の問題から大量のおにぎりを廃棄せざるを得ない事態となりましたが、それがメディア等で取り上げられ「善意の支援を捨てるのか」と取り沙汰されたことを覚えているかたもいらっしゃるでしょう。
いずれにせよ限られた物資でやりくりをしなければならなくなる被災時、政府や行政・外部からの支援に頼ることを前提にしてしまうと、どうしてもストレスの大きな生活になってしまうことは過去の震災事例からも明白です。日頃からの備え・備蓄がいかに大切であるかを改めて考えてみたいところです。