「『紙』を鍋やフライパン代わりにして加熱調理をする」・・・にわかには信じられない調理方法ですが、意外と皆さん、どこかで見ているかもしれません。アウトドアですがまさに「サバイバル・ノウハウ」とも言える意外な調理方法、知っておけばイザという時に役立つかもしれませんよ。
YoutubeユーザーのIntenseAngler(公式チャンネル)さんの動画、”Tip Of The Week(今週のヒント)” – Episode 34より、「Cooking Bacon & Eggs In A Paper Bag(紙袋で調理するベーコンエッグ)」です。
鍋やクッカー類がなくても、紙袋に食材を入れて炭火にかければ料理ができてしまうという、ちょっと驚きの裏ワザ。何はともあれ、まずは上の動画をご覧ください。
下記は動画の解説です。画像の出典は上記動画の当該部分のスクリーンショット、画像下の解説はITOITO-STYLE編集部による独自のものです。
IntenseAnglerさん登場。オールドファッションタイプのシンプルなキャンプ料理ということで、紙袋で作るベーコンエッグ。クッカーもシングルバーナーも何もない自然の中で使えるワザです。
加熱するために、紙袋ごと直接炭火(燃え終わった熾火)の上へ。燃えてしまいそうな気もしますが、これが燃えずにちゃんと調理できます。まだ火の出ている炭火や焚き火であれば、火よりも上に吊るす感じで加熱していきます。
調理完了までは10〜15分加熱程度でできあがり(玉子の黄身に完全に火が通るまでの時間)。生卵の鮮度環境に恵まれた日本であれば、もっと短い時間でも大丈夫ですね。
動画のポイント・豆知識
「紙を火にかけているのになぜ燃えないのか?」と思いますよね。紙の発火点となる温度はだいたい200〜350℃です(紙の材質によって差はあります)。なので、紙袋の底にベーコンと生卵が接している部分はその食材が加熱される温度と同等になるため、燃えだすことはありません。
さて、紙で調理するというアクティビティについて何か思い出しませんか?そう、日本の懐石料理の席などで出て来る「紙鍋」です。見たことがあるかたもいらっしゃると思いますが、原理はあれと同じです。
水を通さない紙を器状にして水を入れ火にかけると、水温が上がり始めますが水の沸点である100℃以上にはなりません。同時に、水が接している紙も100℃以上にはなりません。
紙の発火点に達するまでにはかなりの温度的余裕があるため、燃えだすことは無いというわけですね。(もちろん、水と接していない部分の紙が火に触れれば発火します)
もともとの「紙鍋」は、和紙の両面にコンニャク芋から作られる糊(のり)を塗布して天日乾燥させた後に器の形に仕上げるものですが、この製法で作られる紙鍋は特殊なもので一般家庭ではまず使われません。
一般用途としては、紙に耐熱・漏水防止の加工を施したものを鍋型の金網などにセットして使われます。懐石料理などの場で見られるのはこのタイプです。紙部分がアクを吸収する効果を持ち、また見た目にも落ち着いた華やかさを演出してくれますね。
いずれにせよ、いざという時は紙袋でもちょっとした調理ができるということがよく解る動画でした。キャンプの際に紙袋があったら(火の取り扱いには十分注意注意しつつ)試してみるのもいいですね。
アウトドア生活の本質は、便利なインフラが整った社会から隔絶された不便な環境においても問題なく生活を維持できることです。「焚き火」といえば、キャンパーの皆さんにはもうお馴染みすぎるインフラ的アイテムでもありますし、過去の震災直後の被災地の状況を思い返してみると、焚き火を起こして暖を取ったり灯り代わりにしたり、湯を沸かし食事を作り人々が集う場ともなっていました。
ある日突然、それまで当たり前だった便利な生活が絶たれた場合でも知恵やノウハウを知っているかどうかで、その後の生活の質を担保できるかどうかが決まります。こういうちょっとしたTipsでも、身に着けていれば自分自身の「引き出し」が充実するというものです。
とは言え、日常生活の中で「焚き火」をする機会は少ないものですが、キャンプ場やバーベキューサイトへ行けば利用規約に従った範囲内でならある程度自由に焚き火ができます。地面の上で直接燃やす「直火」が禁止されている場所も多いので、いわゆる「焚き火台」を準備しておくと「練習」がてら色々と楽しめます。