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震災などで被災したとき、ペットはどうなるの?

東日本大震災では多くのペットが結果的に見捨てられましたが、令和6年 能登半島地震でも被災ペットの受け入れが難航し、同行避難が前提になっているはずのペットの避難所入りが困難な状況です。ここでは犬と猫を中心に、被災時にどのような備えが必要なのか・どのような対応が求められるのかを考えます。

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被災時のペット問題を考える

被災したとき、ペットの命を守ることができるのは飼い主だけです。今回は犬と猫を中心に、被災時にどのような備えが必要なのか・どのような行動が求められているのを考えてみたいと思います。

災害時における人とペットを守る最新情報

2018年の西日本豪雨、北海道胆振東部地震を受け、環境省では人とペットの災害対策ガイドラインである「災害、あなたとペットは大丈夫?<一般飼い主編>」を公開しました。

・全体版:【ダウンロード:PDF 5.79MB】
・分割版:【環境省のwebサイトから】

2018年9月6日、北海道胆振東部地震が発生しました。最大震度7という規模は北海道における地震としては初観測となり、約680人を超える負傷者・死亡者は40人を越え、北海道全域で停電となる「ブラックアウト」が起きてしまいました。

また各地での液状化被害に加えて、農業・製造業などへの打撃など、特に農業に関しては国内全体での農作物の流通に影響が懸念される状況となりました。

遡ること2016年4月14日には熊本地震が発生しています。最初に震度7・マグニチュード6.5の前震、それから28時間後にはマグニチュード7.3を記録する本震が発生。これは阪神淡路大震災と同規模のものとなり、直近では2011年の東日本大震災を思い起こさせるものとなりました。

わずか10年足らずの期間でこれほどの規模の大地震が繰り返し発生している状況は異常とも言えますが、さらに今後、北海道沖での巨大地震、南海トラフ巨大地震、首都直下地震などの発生が懸念されています。

大きな災害は人間にとって悲しくつらい出来事であるように、動物にとってもつらい出来事と言えるでしょう。特に東日本大震災では、ペットだけでなく多くの家畜類などに待ち受けていた悲しい運命は、今思い返しても心を締め付けられるものを感じます。それ以前の震災においても、大なり小なり動物たちを取り巻く様々な出来事があったことでしょう。

では、被災時に遭遇する可能性があるペットに関するリスクとはどのようなものでしょうか。主要なリスク3点は次のとおりです。

  1. ペットが飼い主から離れて迷子になってしまう
  2. 避難所や人が集まる避難場所でのペットの居場所の確保や扱い方が難しい
  3. ライフラインの途絶によりペット用の物資の入手が困難になる

では、それぞれの状況を確認してみましょう。

1. ペットが飼い主から離れて迷子になってしまう

熊本地震や東日本大震災の時も、迷子や行方不明になってしまった犬や猫の情報を求める飼い主の姿や、迷子の張り紙を多く目にしたのではないでしょうか。

特に福島県の原発に近い地域にお住まいだった方々においては、事前の詳しい説明が無いうちに緊急的な避難を余儀なくされたケースもあり「一時的な避難だろうからすぐにペットを連れに戻ろう」という状況のまま、それが最後の別れになってしまわれた方々も。

2. 避難所や人が集まる避難場所でのペットの居場所の確保や扱い方が難しい

飼い主にとっては家族同然のペットですが、他人にとっては迷惑な存在として認識される場合も少なくありません。

東日本大震災や熊本地震の時も、避難所に居づらい飼い主がペットとともに車中泊している姿がマスメディアでも取り上げられたり、ペットと共に避難所へ同行避難した飼い主が他の避難者から暴力行為を受けるというニュースもありました。

3. ライフラインの途絶によりペット用の物資の入手が困難になる

ペットと暮らす状況において何より困るのは、ペットフードや医薬品などの用品が入手できなくなることです。最近の家飼いの犬や猫は長生きであるとともに、持病を抱えていることも少なくありません。

そうしたペットには薬品やオムツなどが生活する上で欠かせない場合がありますし、ペット用の薬品はドラッグストア等で気軽に買えるものではありません。

その他、長期的なリスクとしてペットを飼い続けることができなくなるなどの問題がありますが、今回は被災してから2週間くらいまでの期間におけるリスクとその対策にフォーカスしてみます。

環境省ではペット動物の災害対策に関するパンフレットを作成するなどして、被災した際の行動指針を示しています。

今回はその方針を参考にしながら、上記3つのリスクへの備えについて考えてみたいと思います。

【注目すべき参考資料】

・環境省「備えよう!いつもいっしょにいたいから・ペット動物の災害対策
・環境省「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン
・環境省「東日本大震災における被災動物対応記録集

主にこの3点の資料を読めば、現時点(2017年時点)における日本の被災時のペット救護の現状が理解できる内容となっています。

1.迷子リスクへの備え

環境省では同行避難の原則を掲げており、被災した場合にはペットも一緒に避難するよう呼び掛けています。もちろん飼い主としても、家族の一員として一緒に避難したいと考えているでしょう。しかし、飼い主が被災時に留守だった場合や混乱の中で飼い主の手を離れてしまう可能性はあります。

そうした場合には首輪に迷子札を付けておく・事前にマイクロチップを注入しておくなど、ペットの身元が確認できるようにしておくとよいでしょう。

震災が起きた場合の被災地では、動物救護のための本部組織が自治体や動物関連団体等によって設置され、迷子のペットの保護等が行われます。また、動物愛護団体等も同様の保護活動をおこないます。そうした活動でせっかく保護されても、所有者不明のまま飼い主の元に戻れないペットも少なくありません。

ペットが迷子にならないようにすることが基本ですが、大災害の時にどのような事態が起こるのかは予想できません。そこで、迷子になった場合でも飼い主の元に戻れるように事前の備えをしっかりとしておきましょう。

2.避難所生活等への備え

環境省ではペットを連れて避難所に避難するよう呼びかけています。しかし避難所での生活では、多くの避難者や他のペットと共同で生活しなければなりません。こうした慣れない環境で生活するためには、ペットの健康管理と躾(しつけ)は欠かせません。

避難所では通常、人が居住する場所とペットのスペースは分けられ、それぞれが隣り合わせの中で生活することになります。そうした場合ペットどうしが接触する機会も多くなることから、予防接種・害虫駆除・不妊や去勢手術といった対策の有無が重要になってきます。

またこれまでも避難所でのペットの飼養に関しては、鳴き声・体毛・糞尿による悪臭への苦情からペットを手放す飼い主や避難所をあとにする飼い主の方もいました。他の避難民の方々に快く受け入れてもらえるように日頃から、吠えない・ケージにおとなくし入る・決められた場所で排せつするなどの基本的な躾(しつけ)が必要です。

しかし健康管理や躾をしていても、ペット同伴での避難所生活は、の避難民の方からの苦情や批判を受ける可能性があります。避難所には赤ちゃんからお年寄りまで、健康な人だけではなく病気やアレルギーを持っている人もいます。そこでペットを飼っている場合には、「在宅避難」についても検討しておくと安心かもしれません。

3.ペット用の備蓄品の準備

ペットを飼っている場合には、飼い主にとって必要な備蓄品に加えてペットに関わる備蓄品が必要です。ガイドラインでは優先順位をつけて3つに分けて備えるべき物をリストアップしています。

例えば優先順位1位のものとしては「療法食・薬」、「フード、水(5日分以上)」、「予備の首輪とリード(伸びないもの)」、「食器」、「ガムテープ(ケージの補修など多用途に使用可能)」の5点が、最低限準備をしておくべきものとされています。

これらの最低限準備すべきものに加えて、飼い主の連絡先やペットに関する情報をメモ等に記録して持っておくことも勧めています。

このように命を維持するために必要なものおよび飼い主やペットに関する情報以外にも、高齢の場合には「オムツ」、また食へのこだわりが強い場合には「多めにフード」を用意するなど、各家庭でなくてもならないものをリストアップしておくといいでしょう。

東日本大震災(震災初期)のときは、ペット用の救援物資を運ぶ車両が緊急車両として認められないことがあったそうです。震災時には人への支援・救援が優先されることから、ペットに関しては、飼い主がしっかりと準備しておくしかないのが現状です。

最後に

近年は従来からの「ペット」という言葉にとどまらず「コンパニオン・アニマル(伴侶としての動物)」という言葉も広く使われるようになりました。文字通りペットという範囲を超えて家族や人生のパートナーとしての絆を深め、飼い主と共に生活する動物たちも増えています。

そのような状況の中で、社会生活の中では「しつけ」や「飼い主としてのモラル」が大きく問われる事案も多数起きていることもひとつの現実です。

例えば犬の場合は「飼い犬登録」と併せて狂犬病の予防接種は飼い主に対して法律で義務付けられているものです。また、いざ被災した際にペットと共に避難所に入る場合はその条件に加えて、熊本地震の場合は犬・猫に共通して混合ワクチンの摂取とノミ・ダニ予防がされていることが避難所で受け入れるための必須条件となりました。感染症を予防するためです。

しかし、飼い主がこうした対策を怠ってきたために避難所やペット救護所で受け入れることができなかった動物たちも出てしまいました。ペットが一緒であるために最初から避難所へ入ることを諦め、車中泊を続けていた飼い主がエコノミークラス症候群で亡くなるという痛ましい事案も発生しています。

東日本大震災で得た教訓にもとづき、環境省ではペットと飼い主の同行避難を原則とするガイドラインを定めてはいますが、法的な強制力などはありません。避難所の運営においてペットを受け入れるかどうかの判断は、最終的には各自治体に委ねられます。

被災動物救援への取組は国や自治体にのみならず、民間団体や民間ボランティアによって拡充されてきています。しかしながら、最終的に被災ペットを守ることができるのは飼い主だけです。熊本地震から1年が経ちましたが、この機会に本記事で取り上げた問題点や飼い主としてしておくべきこと・備えること、ひいては飼い主としての責任について、改めて考えてみてはいかがでしょうか。

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