この図はGoogle Map上に、川崎市が2017年5月から公開している「洪水ハザードマップ(中原区版)」の多摩川水系の氾濫想定区域を抜粋して編集部が独自に重ね合わせたものです。
拡大して見ていくと、いくつかのタワーマンションと思われる建物が氾濫想定区域内に建っていることが判ります。
もっとも今回の武蔵小杉における浸水被害は多摩川の氾濫ではなく、下水の処理能力を超えた降雨量があったことによります。
大規模災害時における高層住宅の課題
いわゆるタワーマンションが立ち並ぶ、神奈川県川崎市中原区の武蔵小杉駅周辺。このエリアでは台風19号による浸水被害が発生しました。
特に深刻な被害を受けた2棟のマンションでは地下の配電盤や変電設備が破損し、マンション内の多くの世帯で停電や断水が起きています。
オール電化ということもあり、停電すると照明だけでなくIH調理器具や空調なども使用不可能に。エレベーターも停止したため、特に高層階にお住まいの方ほど階段を使った地上との行き来は困難なものとなっています。
マンションに限らず高層住宅では上水道も電動ポンプで上層階に汲み上げてから各世帯に供給する仕組みとなっており、断水によってもっとも深刻化しているのは「水洗トイレが使えない」という状況です。
当該マンションにおいては、極力早期の状況解決が望まれるところです。
今後の災害に向けたハザードマップの必要性
台風や地震などの大規模自然災害の際に必要となってくるのが、いわゆる「ハザードマップ」。
実はこのハザードマップが広く整備・公開されるようになったのは近年になってからのことです。
近年は台風襲来時や豪雨発生時に、これまでの想定を超える浸水被害が多発していることから、2015年に「水防法」が改正されました。
これにともない、国土交通省は新たな浸水想定区域等を公表。各自治体もハザードマップの改定を進めています。
武蔵小杉エリアが対象となる洪水ハザードマップは、川崎市によって2004年には旧想定で作成されていましたが、2017年5月に改定版が公開されていました。
少なくとも、2019年の台風19号による被害が出る2年前には現在のハザードマップが公開されていたことになります。
住む場所を決める、特に「終の棲家(ついのすみか)」となる住宅を購入することは、多くの人にとって人生の一大イベント。
これからは住む場所を決める場合、住宅のスペックや周辺住環境だけでなく、災害に強い場所に位置しているかどうかも検討要素の重要な1つとなるでしょう。
ハザードマップと併せていわゆる「古地図」を調べてみるのも良いでしょうし、地名に「水」を連想させる要素がある場合は、かつてそこは川や沼や湿地帯だった可能性もあります。
お住まいの場所やこれから住もうと考えている場所が、災害に対してどの程度の耐性があるかどうか、ぜひ関心を持ってください。
ハザードマップは各自治体・市区町村によって公開されており、国土交通省が運営する「ハザードマップポータルサイト」から簡単に確認することができます。
下記リンクをスマホのブラウザにブックマークしておきましょう。
【ハザードマップポータルサイト】
https://disaportal.gsi.go.jp/
ITOITO-STYLEでも、このハザードマップポータルサイトを含めて災害時に状況を確認するための公共性の高い情報源へのリンク集「備災ポータル」をご用意しています。
こちらも併せてブックマークしてご活用ください。