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冬の『備災キャンプ』で楽しみながら被災時のサバイバル術を身につける!

晩秋〜冬は、防災・備災訓練としてのキャンプには最適なシーズン。本格キャンパーにとっても、晩秋〜冬こそハイシーズン。寒い時期の備災キャンプ(防災キャンプ)は、体験しておくと被災時の対応力が高まること請け合いです。

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冬キャンプを備災(防災)視点で楽しむ!

一般的にキャンプと言えばゴールデンウィーク(GW)あたりや夏休みに、というイメージが定着している昨今。爽やかな新緑の季節や、真夏の太陽・青い空・白い入道雲を見ながら楽しむキャンプに「NO!」と言う人はいないでしょう。夏キャンなら海辺や川で水遊び・バーベキューで豪快に肉を焼き、夜は花火と真夏のキャンプはもちろん絶対的に楽しいものです。

しかしキャンプはGWや夏だけのものではありません。寒くなる晩秋から次の春までの寒い季節のキャンプは、楽しみ方も風景も夏とはまったく趣が違っていいものです。

そして寒い時期のキャンプは「備災キャンプ(防災キャンプ)」としても絶好のコンディション。しっかり準備して臨んで楽しめるようになると、イザという時に対応するための経験値が上がります。

本記事の対象読者層としては、キャンプ道具の備災・防災への活用に興味があり、暖かい時期にテントを利用した宿泊キャンプの体験はありながら冬キャンプは未経験の方々を想定しています。

また本記事は、およそ次のような構成でお送りします。

●備災訓練を兼ねた冬キャンプで主に考慮すべきもの
・テント内の寒さ対策
・居住空間となるテントについて
・テント内フロアの保温措置
・暖房手段について
・結露対策
・就寝時の寒さ対策

備災FUN!』では、次の震災・災害に備える「備災」をテーマに、被災時にも大活躍のアウトドアグッズを日常で活用して「楽しみながら備える」情報をメインに発信しています。

寒い時期のキャンプの魅力は、すでに “秋キャンプ” や “冬キャンプ” でネット検索すれば大量に情報があります。それらを要約すると、

「低気温のため蚊やアブ・ブヨなどの暑い時期につきものの虫もおらず、GWや夏の混雑も無し。特に冬はキャンプ場も空いていて、空気も澄み景色や星空がキレイ。そして焚き火・温泉に冬の味覚を堪能できる」

という視点で、おおむね言い尽くされている感もあります。特に冬キャンプ・ファンなら、薪ストーブをテント内に設置しての雪中キャンプなどを堪能されている人たちも多いもの。

しかし「アウトドア用品を災害時に活かす」がコンセプトのITOITO-STYLE・備災FUN!としては、やはりこちらの方向性でのアプローチ。備災・防災視点で見た冬キャンプのメリットを独断と偏見で表現してみると、まずは次の2点。

①冬の野外宿泊体験は、イザという時でも対応できそうな気持ちの余裕を生む
②冬の夜を乗り切る装備とノウハウは、そのまま冬の被災を乗り切る際に活用できる

震災・災害に備える「備災訓練」としての想定は在宅避難をもう1歩進めて、冬場の震災発生で自宅の半壊等でそのまま住み続けるには不安があり、行政対応が本格化するまでのしばらくの間は手持ちのキャンプ道具を活用して雨露と寒さを凌ぐという想定において、まずは居住空間となるテントと就寝を中心に考えてみます。

その前に、まずはこれまでに発生した寒い時期の震災について、ざっと知っておこうと思います。昭和〜平成において、死者が出ている秋・冬・春の震災を振り返ってみると、意外と多いことが判ります。

昭和〜平成において、死者が発生した秋・冬・春の震災
10月
新潟県中越地震・鳥取県西部地震・濃尾地震
12月
三陸はるか沖地震・昭和南海地震
1月
阪神淡路大震災・三河地震
3月
東日本大震災・福岡県西方沖地震・昭和三陸地震・北丹後地震・芸予地震
4月
熊本地震

特に、1月に発生した阪神淡路大震災を経験されたかたは、真冬に電気やガスなどの暖を取るための社会インフラが停止した状況を覚えていらっしゃるのでは?

編集部スタッフも3月の東日本大震災を経験していますが、たまたま用意してあった石油ストーブにだいぶ助けられた記憶があります。

というわけで、備災・防災を考慮した経験やノウハウを身につけるためにも冬キャンプを体験してみましょう。

まずは「寒い季節に野外で(テントを使って)一泊する」ことからがオススメです。

備災訓練を兼ねた冬キャンプで主に考慮すべきもの

何よりも「暖かさ」を確保するための居住装備・衣類・寝具類を揃えることが最重要。また、寒冷な環境でも動作する暖房用品や調理用の熱源を用意する必要があります。

細かな商品レベルで必要とされるものは、Amazonなどの通販サイトでレビュー評価の高いものやベストセラー商品あたりから見当を付ければ問題ないでしょう。

ここでは備災観点での冬キャンプでもっとも基本的な対策として、次の3点を見当してみます。

①テント内の寒さ対策
②結露対策
③就寝時の寒さ対策

テント内の寒さ対策

本格キャンパーの皆さんだと真冬に雪が降りしきる中、ソロで焚き火を楽しみつつタープ泊という猛者も存在しますが、備災キャンプとしてはやはり家族単位が基本と考えますので、ここでの前提は「冬のファミリーキャンプ」。

居住空間としては、雨風や夜露が防げることが大前提で、暖も取れる必要があります。女性やお子さんなどがいる想定だと、ある程度の快適さも重要です。そしてテントは「仮設住宅」となります。

よって、最低限

・フルクローズできるタイプでリビング・寝室が備わっているテント
・居住空間や身体を温めるための暖房手段

が必要になります。

居住空間となるテントについて

晩秋から冬の間は北風が吹くことも多いので(場合によっては強風)、春〜初秋キャンプのようにタープの下にリビングを設けるスタイルではかなり寒いことになります。仮設住宅となるテントとしては、ジッパーなどで入り口をしっかり閉じて野外環境から保護される空間が必須。

一般的にネットで提供されている「冬キャンプでオススメのテント ●選!」的な記事を見ると、推奨されるテントは「2ルームテント」「シェルター」「ティピーテント」「登山用テント」あたりが有力候補。それぞれ優れた機能性・居住性・デザイン性など様々なメリットを備えたものです。編集部スタッフもコールマンの「アテナ2ルーム」を愛用しています。

しかし冬の備災キャンプとしてテントを仮設住宅的にとらえた場合は、テント内にちょっとした自宅の部屋のようなものをコンパクトに再現したいもの。

という観点で見ると、フルクローズできていわゆる「土間」が無くお座敷スタイルにできる「ロッジ型テント」または「ティピーテント」あたりがオススメできると思います。
特に前者のロッジ型の場合は内部で人間が立って歩けるスペースが広いため、かなり快適な居住性が確保できます。

編集部では実際に、ロッジ型テントとして「コールマン インスタントテント(8人用)」を購入・使用してみました。

構造的にはいわゆる「ワンタッチテント」の大型版で設営と撤収が極めて短時間で済み、この8人用モデルはフルクローズすると土間の無い完全なお座敷スタイルの内部空間で内部を2ルームに仕切ることも可能です。

仕様的に8人用とはなっていますが就寝時に詰め合えば8人寝られるというもので、実用上快適に過ごせるレベルは1家族3〜4人程度にマッチする印象です。

なお夜間の最低気温が氷点下1.2度になった環境でも、実に快適に過ごすことができました。

2017年11月現在、コールマン・ジャパンでは公式に取り扱っていない並行輸入品なのでアフターサポートを考えると万人ウケするものではありませんが、選択肢の1つとして興味があれば検討してみてください。

インスタントテント自体は並行輸入品として、国内でも通販を利用して普通に入手できます。改めてレビューをお届けする予定です。

このようなお座敷スタイルに適したロッジ型テントやティピーテントは、お手頃価格帯からけっこうなお値段の高級品まで様々ですが、まずは高評価で安すぎない手頃なものを選んでみるといいでしょう。

いわゆる「ワンタッチテント」類はそこそこ重量がありカサ張るため、本格キャンパーの方々は敬遠する傾向もありますが、設営と撤収に掛かる時間を劇的に短縮してくれるため、キャンプ自体を楽しむ時間をより多く確保できたり、疲労感も少ない等のメリットがあります。

国内メーカーとしては「ドッペルギャンガー・アウトドア」さんが唯一と言っていい、ワンタッチテントメーカーですね。

海外製のものでお手頃価格のものであれば「Ozark Trail」製のインスタントテントが国内でも購入できます。

テント内フロアの保温措置

冬キャンプにおいて、忘れてはならないのはテントの床面の保温措置です。何もしないと冬の地面の冷たさをまともに受けることになります。

お座敷スタイルでは、テントの設営とリビング構築において次のようなレイヤリングをおこなえば快適に過ごすことができます。

寝室部分やシュラフ(寝袋)を設置するエリアには、最上面のラグを空気を吹き込んで使うエアマットインフレータブルマットに置き換えると快適です。

特に腰痛持ちの方の場合は、5cm厚以上のエアマットを使うと腰への負担無く寝られるでしょう
(エアマットの代わりにコットを使うという手もあります)

暖房手段について

一般的に冬キャンプで暖を取るなら、なんと言っても焚き火や薪スーブ!というイメージがありますが、備災・防災体験としてのキャンプの場合、木材を燃やす形での暖房手段の優先度は低くていいと考えます。

まずは有料キャンプ場の電源サイト

安全性を考慮したベストな暖房手段は「AC電源が使える有料キャンプ場で、(消費電力量に注意しながら)電気ヒーターかホットカーペットを使う」です。

被災時を想定した場合、大地震発生直後は電力が途絶えている前提となりますが、「冬キャンプの最初の一歩」として電源サイトを使うのはぜんぜん「あり」です。

ただし、キャンプ場によっては1つのブレーカーを複数サイトで共有しているところも多いので、1サイトでホットカーペットと電気ヒーターをガンガン使うような人たちが複数いる場合、ブレーカーが落ちて電力が使えなくなるケースも見受けます。他の暖房手段が無い場合はもはやキャンプどころでは無くなるので、電源サイトであっても計画的に利用しましょう。

コスパに優れる石油ストーブ

次点は「石油ストーブ」です。すでにご自宅に持っている方もいらっしゃるのでは。燃料となる灯油は入手・保管・備蓄しやすく、燃費も良好です。安定した火力で煮炊きにも使いやすく、暖かさも申し分なし。冬キャンプに活用されているキャンパーも実際多いです。

ただし「テント内は基本的に火気厳禁」という前提があります。万が一ストーブなどを倒して燃料が漏れ引火して火災になるケースや、締め切ったテント内でストーブを利用して、不完全燃焼による一酸化炭素中毒での死亡事故なども実際に発生しています。

という観点からすると、冬キャンプでの石油ストーブの使い方は、テントの入口を開けた外側にストーブを置いて使いましょうという形にはなってしまいますが、ちょっと現実的ではありません。

テント内で利用する場合は自己責任ということになりますが、石油ストーブと併せて一酸化炭素(CO)検知器を必ず用意し、換気をしながら使用しましょう。二酸化炭素(CO2)は空気より重いので地面近くに溜まりますが、一酸化炭素は空気とほぼ同じ比重であるため、ストーブが不完全燃焼してこれが発生すると知らないうちに空気中の一酸化炭素濃度が上がり、致死量を超えると死亡事故に繋がるので十分注意して運用してください。

石油ストーブの種類には「反射型」と「対流型」があります。一般的な住宅で使われているものは四角い「反射型」です。熱が前面に放射されるので暖かさはピカイチ。ただ、キャンプに持ち込むにはちょっと大きいものが多いですね。

キャンプでよく使われるものは対流型のコンパクトなストーブです。ストーブの周囲をまんべんなく温め、基本的に熱は上方向に向かいます。秋冬キャンパーに人気のものは、「フジカハイペット」「レインボーストーブ」「アルパカストーブ」あたりがメジャーどころ。編集部スタッフも、トヨトミ製のレインボーストーブを愛用しています。

対流型はそのままでは暖かさの点で反射型にやや及びませんが、テント内で使う場合は別途小型のサーキュレーターで空気を動かしたり、ウィンドスクリーンを追加するなどして簡易的な反射型に改造して使う人たちもいます。また、熱で発電してファンを回す「エコファン(エコストーブファン)」という道具を併用すると、対流型のデメリットはほぼ解消できます。

ITOITO-STYLEでも、すでに「【レビュー】寒い冬に被災した場合に役立つ「石油ストーブ」」にてレビュー記事を公開しているので、こちらも併せて御覧ください。

扱いやすいカセットガス・ストーブ

冬キャンプに手軽に使えるストーブとして、もう1つのオススメは「カセットガス・ストーブ」。気軽に入手できるカセットコンロ用のガスボンベ(CB缶)を利用し、ボンベ1本あたり2〜3時間の燃焼時間が目安。灯油と違って燃料漏れの心配もなし。

カセットガスストーブ1台あたりの燃焼熱量としては石油ストーブには叶いませんが、熱量が高めのモデルを利用するか2台併用すれば十分な暖かさが得られます。

燃料のコスパとしては、灯油に比べたら高額です。とは言えホームセンター等では3本セットで300円未満、コンビニや百円ショップでも販売されている入手性の高さは十分に評価できます。

カセットガスストーブの種類としては、屋内用と屋外用とに別れます。基本としてテント内では火気厳禁という前提はありますが、自己責任の上でテント内で利用するなら屋内用にしましょう。国内メーカー品であれば、立ち消え防止機能などの安全装置も用意されています。

編集部スタッフが実際に冬キャンプで使ってみてのオススメは、イワタニの屋内用モデルの「ハイパワータイプ・デカ暖」です。ルックスは安定感のある小型の石油ストーブ風で、出回っているカセットガスストーブの中では比較的に燃焼熱量が高く実用的な暖かさを得ることができます。

カセットボンベ1本で連続2時間半利用でき、ガスも残らず消費してくれます。扱いも簡単で、カセットボンベをセットしたら点火ハンドルを回すだけ。暖かさの立ち上がりは緩やかですが、弱〜中火の石油ストーブ並の暖かさを感じられます。

サブ機としてもう1つのオススメは、やはりイワタニの屋外用ストーブ。小型でストーブ前方を一気に暖めてくれます。あくまで屋外用なので、テント内を暖めるなら入り口に「焚き火テーブル」などを置いた上にセットして、テント内を一気に暖めましょう。その後は「デカ暖」を稼働させるとヌクヌクとしたテント内環境を作れます。

暖房出力としての参考データは、一般的な家庭用の反射型石油ストーブ(木造6畳・コンクリート8畳)が概ね2kW前後であるのに対し、デカ暖は1.35kW(対応部屋サイズのデータ無し)。テント内で使うには十分な暖房出力です。

もう1つ、出力自体はかなり石油ストーブに近いモデルの「カセットガスファンヒーター 風暖(KAZEDAN)」があり、こちらはなんと2.0kW。高出力なぶんガスの消費量は多めで連続燃焼時間は約1時間43分。利用シーンを選べばこちらも活用の幅は広そうです。

石油ストーブとガスストーブ共通のデメリットとしては、どちらのストーブも燃料の性質上、燃焼時に水蒸気を発生させます。このため、テント内で使用する際は十分な換気と結露対策が必要です。

結露対策

冬キャンプで重要な対策要素として忘れてはならないのは、テント内の結露。外気温が低い(寒い)状況でテント内を石油ストーブやガスストーブで温めるほど、テントの天井や壁となる部分の生地の内側には結露が発生します。

結露をもっとも身近に観察できるとすれば、それは冷たい水を入れたコップの周りにできる水滴です。冬なら暖房を入れた部屋の窓ガラスが曇って、指でなぞると曇りが取れますね。この曇と、なぞった後にできる水滴も。

コップの中に入った冷たい水がテントの外側・コップの表面がテントの内側、または暖房を入れた部屋の窓=テントの生地とイメージするとより解りやすいでしょうか。空気は暖かいほど多くの水蒸気を含むことができます。そして水蒸気を含んだ空気が冷やされると、気温差のある部分で温度ごとに空気が抱えきれなくなった水蒸気が水に変わってしまいます。これが結露です。

クローズしたテント内で(燃焼時に水蒸気が発生させる)石油ストーブやカセットガスストーブを利用すると、テント内の室温と共に湿度が上がります。またテント内で過ごす人間の呼気にも水蒸気が含まれるので、暖房を付けて締め切ったテント内は湿度がどんどん上がります。

そしてテントの生地の外側と内側の温度差がある境界部分で水蒸気が水に変わるので、そこに結露が発生するわけです。このため、冬キャンプでの結露対策の基本としてテントの換気が重要になってきます。

本格キャンパーの方々ですとテント内に(水蒸気を発生させにくい)薪ストーブを設置して結露を減らしている場合もありますが、外気温が低いと薪ストーブでも多少の結露は発生しますし設置と運用は比較的ハードルが高いものです。

基本的に冬キャンプでなるべく手軽に暖を取る場合、結露の発生を完全に防ぐことはできません。しかし、減らすことは可能です。ここでは編集部スタッフが実践している冬キャンプでの結露対策を、優先順位の高いほうから簡単にまとめてみました。

 

【必須対策】
①テントのフライシートは必ず張る
②テントの換気を怠らない
③発生した結露を拭き取る準備をしておく

【オプション対策】
④バッテリー動作の小型のファンやサーキュレーター等でテント内の空気を循環させる
⑤大型の除湿シートを活用する
⑥余っているタープやビニールシートがあれば、テントの外壁を覆って簡易ダブルウォール構造にする

 

それぞれ見てみましょう。

【結露の必須対策編】

必須① テントのフライシートは必ず張る

テントのほとんどは、テント本体にかぶせる・またはテントの天井部分に取り付ける「フライシート(ルーフフライシート・レインフライシート)」が付属してくるか、オプションで購入できます。

フライシートを取り付けると、テント本体との間に空間を設けつつテント全体または天井部分を保護するので、その部分が二重構造になり空気の層を作るので、結露を軽減させることができます。

かなり寒い日にテントを締め切って石油ストーブなどをガンガン焚くと、条件によっては「テントの天井から雨が降る」と言われるほどの結露ができてしまうので注意しましょう。

必須② テントの換気を怠らない

これも基本中の基本です。結露対策の基本は換気です。テントには空気を循環させるベンチレーター(換気口)となる小窓やメッシュ付きの窓があるので、冬でも完全には締め切らずになるべく開けましょう。

これは就寝時も同様で、寝る時はテント内でストーブを使っている場合はそれをしっかり消し、換気を確保した上で寝袋に入ります。

必須③ 発生した結露を拭き取る準備をしておく

結露をゼロにすることは不可能です。なので、結露は発生する前提で、タイミング良く拭き取れる準備をしておきましょう。基本はタオルで拭き取ってテント外で絞る、です。

拭き取りグッズを工夫することで、より効率よく結露を排除できます。オススメはマイクロファイバー製のタオル。吸水力が高いので効果的です。また、お風呂の結露などを取るグッズもあり、実際に使ってみましたが(写真)これもかなり効率よく結露を拭き取れます。

【結露のオプション対策編(実行すると便利)】

オプション① バッテリー動作の小型のファンやサーキュレーター等でテント内の空気を循環させる

特に夜間〜朝方にかけて、小型のファンサーキュレーターを回してテント内の空気を動かしておくと、テントの生地内側に付着する結露を軽減することができます。

オプション② 大型の除湿シートを活用する

編集部スタッフが実際に試してみて、意外と効果があったのがコレ。いわゆるクローゼット用の大判除湿シートをテント内の複数箇所に吊るします。

テント内の除湿に使うには、B型シリカゲルを採用したできるだけ大判タイプがオススメです。夜間は小型ファンでテント内の空気を循環させつつ除湿シートをぶら下げておくと、翌朝には「再生マーク」が青から赤に変化しているほどの吸湿効果を確認しています。

オプション③ 余っているタープやビニールシートがあれば、テントの外壁を覆って簡易フルフライ(ダブルウォール)構造にする

若干強引ですが、これも編集部スタッフが試してみて意外と効果があった方法。フライシートの無い部分に設営予定の無かった予備のタープを使って、無理やりフライシート的な使い方をしてみたところ、翌朝の結露の度合いがかなり違いました。

注意点としてはテント生地と密着してしまうと効果が無いため、テントの形状によっては取り付け不可能なケースもあるはずです。お手持ちのテントの形状的に実現可能な場合は、試してみるのも一興です。

冬キャンプに有効な結露対策の決定版については、改めて特集記事としてお送りする予定です。

就寝時の寒さ対策

冬キャンプでの就寝は、テントがあるとは言え自宅で寝るのとは異なり実質的に野外で寝るのと同じ。暖房用品を持ち込んでいても、安全性の点からストーブのたぐいは就寝時には必ず消します。

夜の就寝前に暖房を切った後のテント内はその後いっきに室温が低下していき、最終的には概ね外気温と同じか近い温度となります。

寒い環境でも快適な睡眠を取るために必要なものは、

【必須対策】
①テントフロアの保温レイヤリング
②冬季・寒冷期使用に対応したシュラフ(寝袋)

【オプション対策】
③使い捨てカイロや湯たんぽ
④電源サイトであれば、電気毛布かホットカーペット

あたりとなります。テントフロアのレイヤリングは前述のテントの章で記載しましたので、ここではシュラフから検討します。

シュラフ(寝袋)の準備

前提として、シュラフは大別して「封筒型」と「マミー型」に別れます。

封筒型は文字通りの形状で比較的ゆったりとした寝心地ですが、使用に適した季節はおおむね春〜秋の3シーズンで冬に使う場合は肩から上が寒いです。

対するマミー型、こちらも文字通りのマミー(ミイラ)型。多めの羽毛で暖かく、足元は細く顔だけが出る状態で全身をぴったり包んでくれる構造なので冬に使うならこのタイプ。

冬用のシュラフのメーカーとして人気が高いのは、モンベル(mont-bell)、ナンガ(NANGA)、イスカ(ISUKA)あたりが山岳系メーカーとして御三家的な高評価を得ています。ネットで「冬キャンプにおすすめのシュラフ◯選!」といった記事で見かけるのは、概ねこの3メーカーの製品ですね。

もちろんこれらのメーカーの冬季対応シュラフを用意できれば間違いのない「快適な冬の眠り」が約束されます。しかし冬のファミリーキャンプ用として考えた場合は、ちょっとお高いんですね。シュラフ1つが概ね3〜4万円台後半。家族4人分を揃えると軽く10万円以上が吹っ飛んでいきます。備災・防災用と考えるとなかなかキビシイ価格帯ではあります。

もっと(大幅に)お手頃価格帯で、冬キャンプでも快適な睡眠を得られるものは無いでしょうか?

・・・あります!冬キャンプのテント内で使うレベルであれば、シュラフ1つ1万円以下で入手できるものが割りと多く存在します。本格キャンパーの方々はあまり選ばない傾向にある気もしますが、amazonなどの通販サイトで手に入るお手頃シュラフが意外と実用レベルで使えます。

このお手頃価格帯のシュラフに絞って編集部スタッフが実際に購入し、季節に合わせて4種類ほど使ってきました。特に冬キャンプにおいては3シーズン用と冬でも使えるものとをテント外の気温が氷点下(マイナス)1.2度の環境で一泊してみましたが、冬用はまったく問題なく熟睡・快適に翌朝を迎えることができました。

上記写真は編集部スタッフが実際に使ってみたもの。サイズ比較用にiPhone6 plusを置いてあります。「封筒&マミー型」と記載した①のCREEPER製と②のTOOGE製(いずれも中国メーカー)に関しては基本形状は封筒型に近く足元までゆったりとしているので寝返りもうちやすく、顔まで覆える形状で実に暖かいです。

カタログスペック的にはマイナス20度やマイナス25度から使え、使用しているダウン(羽毛)の量も1500gや1800gとなっています。羽毛を使ったシュラフの仕様としては、量だけでなく羽毛自体の毛の密度を示すフィルパワー(FP)という値がありますがこちらは不明。しかし冬キャンプでのテント内用としては十分実用レベルであることを確認できました。

③は購入者がかなり多く評価も高いSnugpak製の封筒型(Snugpakナビゲーター)で最低使用温度はマイナス7℃となっていますが、3シーズン用のため冬用としての使用は少々厳しいです。

④のSoomloom製の寝袋は重量750gで見ての通りのコンパクトさですが、最低使用温度は15℃からと初夏〜夏の夜用です。秋冬用には適しません。

使い捨てカイロや湯たんぽ

必須ではないものの、手軽に活用できるのが「使い捨てカイロ」そして昔ながらの「湯たんぽ」ですね。シュラフ内の足元にタオルで包んだ使い捨てカイロや湯たんぽを入れて置くのはかなり有効です。

湯たんぽの活用については、すでにレビュー記事『【レビュー】冬の災害時やキャンプにも重宝する「湯たんぽ」』を掲載中ですのでこちらも併せてご覧ください。

なお、使い捨てカイロで衣服に貼るタイプのものがありますが、就寝時シュラフに入る際に背中などの圧迫される部分に貼るのは低温やけどの恐れがあるのでNGです。圧迫されない腹側や空間のある足元などにしましょう。

なお、使い捨てカイロは使用期限を数年レベルで超えていても一応は使えます。メーカー推奨ではありませんので期限切れのカイロを使う際には注意しながら自己責任で。

最近ハヤリの「ポータブル電源」はどうでしょう?

最後にもう1つ。最近ユーザーが増えているのが大容量の「ポータブル電源」。大容量のものだと400〜600Whクラス(2017年秋現在)の容量を持ち(制限はあるものの)家電製品を使うことができます。編集部スタッフも実際に購入し、主に夏と冬のキャンプに活用しています。

下記写真は夏場のキャンプにANKERのPowerHouse(434Wh)を持っていった際のもの。AC電源を使う家電サーキュレーターなら弱モードで暑い日中使用で2日間は使えます。一泊ならフルモードでの使用もいいでしょう。

キャンプや車中泊では従来から「ディープサイクルバッテリー」等を使って家電製品を利用する方法がありますが、ディープサイクルバッテリーは重量がかなりあり、家電製品を使うためには別途インバーターや充電器を用意する必要があるのでキャンプに気軽に使うにはちょっと敷居が高いもの。

その点このポータブル電源はディープサイクルバッテリーに比べて軽量で使いやすくパッケージ化されている点にあります。

とは言え、家電なら何でも動かせるわけではなく消費電力面での制限はありますので、冬であれば電気毛布とスマホやLEDランタンの充電、夏であればサーキュレーターや扇風機を利用する程度にしておくのが快適に使うコツです。

現在、ANKERSuaokiの2社から同容量クラスの製品がでていますが、どちらもバッテリー自体はリチウムイオン電池。寒い環境で使うとスペック以上に電力を消費するという構造的な性質があるので、冬キャンプでポータブル電源を使う場合は、電源自体の保温対策をすると実用レベルで利用できます。

写真は、434Wh出力のANKERのPowerHouseに使い捨てカイロを貼り付けて保温バッグに入れたところ。保温バッグの底にもカイロを入れてあります。

編集部では冬キャンプにANKERのポータブル電源を持ち込んで電気毛布を使ってみましたが、電源を夜間にテント内にそのまま置いて使った場合と、使い捨てカイロを貼り付けた上で保温バッグに収納して使った場合とでは、翌朝の電力残量に大幅な違いが出ました。

冬はできるかぎり、ポータブル電源そのものを保温できる状態で使うといいようです。(その点、夏場は概ね問題がありません)

まとめ

だいぶ長くなってしまいましたが、冬の備災キャンプのポイントを簡単にまとめると

①お座敷スタイルができるテントがオススメ。フロアのレイヤリングを十分におこない、ストーブを活用すると暖かく楽しく過ごせる。
②結露はするので、しっかり換気・拭き取り前提で。余裕があればサーキュレーターや大判除湿シートも活用。
③冬キャンプに使える暖かいシュラフはリーズナブルな価格帯にも存在するので、検討の価値あり。就寝時はストーブ系の暖房は安全を考慮してすべてオフに。

以上の3点です。

現代社会の快適で便利な生活において合理的に考えれば、わざわざ寒い冬に不便なキャンプをする理由など無いという話しもありますが、非日常の体験からは日常生活にも活かせる様々な「気づき」があったり意外なリフレッシュができたりするものです。

そして、大震災が起きた後に一転する生活がまさに非日常であり、非日常が日常化してしまうのも震災の恐ろしさ。そこに備えるためにも冬にキャンプで夜を過ごし朝を迎える体験は、間違いなくちょっとしたサバイバルスキルを目覚めさせてくれます。

今まで「キャンプと言ったら夏でしょ!」と思っていた方も、これを機会に冬キャンプに出かけてみませんか?暖かい時期のキャンプと比べてまったく異なる体験は新鮮で、装備さえ整えていけば夏とは一味違う気持ちよさを感じることができますよ。

今回ご紹介した冬の備災キャンプにオススメの装備をamazonで見る!

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