トップ 読み物 【コラム】東日本大震災を振り返り、次の巨大地震に備えよう。

【コラム】東日本大震災を振り返り、次の巨大地震に備えよう。

東日本大震災から数年。マグニチュード9.0、震度7という激震は、発生時点において日本周辺における観測史上最大の巨大地震でした。あの大震災を振り返り、そしてこれから発生するであろう南海トラフ巨大地震などに対し「どう備えるか」を考えます。

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出典:wikipedia 海老名市民から寄付された1500ポンド(680kg)の食料を携え、M9.0を記録した東北地方太平洋沖地震被災地の救援に向かう、厚木海軍飛行場・第14対潜ヘリコプター隊(HS-14)「チャージャーズ」のSH-60B(津波で水没した仙台港付近上空)。

「あの日」から6年

2017年3月11日は東日本大震災からちょうど6年。マグニチュード9.0、震度7という激震は、発生時点において日本周辺における観測史上最大の巨大地震でした。東北地方の沿岸では波高10m以上、場所によっては16m(最大遡上高40.1m)の高さまで達する津波が押し寄せ、数多くの人命や財産・大切なものを押し流し海へと連れ去ってしまいました。この地震で亡くなられた方々は15,000名を超え、行方不明者を併せると24,000名を上回る事態となっています。

また、この2017年は阪神淡路大震災(最大震度7・Mj7.3)からは22年、新潟県中越地震(最大震度7、Mj6.8)から13年、熊本地震(最大震度7、Mj6.5)からは約1年。さらに21世紀という単位で日本で発生した規模が大きめの地震を見た場合、実はかなりの頻度で発生しています。

参考リンク:Wikipedia:地震の年表(日本)

例えば2015年に発生した小笠原諸島西方沖地震。規模はマグニチュード8.1というかなりの大きさでしたが、幸いにも震源の深さが681kmと深かったため甚大な被害こそ免れたものの、関東圏では負傷者や停電などの被害は発生しました。

仮に震源の深さが東日本大震災と同様の20kmあたりだった場合、太平洋沿岸地域では甚大な被害が発生したと考えられます。

せまる「南海トラフ巨大地震」

そして近年、発生が懸念されている巨大地震の1つが「南海トラフ巨大地震」。東海地方〜九州沖の太平洋海底に位置する「南海トラフ」沿いで発生が想定される巨大地震で、規模はマグニチュード8〜9と見込まれています。

政府の地震調査委員会ではこの巨大地震の発生確率を今後30年以内に70%、10年以内では20~30%としています。なお今後50年以内で見た場合は恐ろしいことに「90%程度もしくはそれ以上」という状況であり、今この記事をご覧いただいているあなたも、高い確率で南海トラフ巨大地震を生き延びなければならない可能性が高いことになります。

もちろん、政府も手を拱(こまね)いているわけではなく、そのための対策を進めています。その対策の一環として、海上保安庁は2008年ごろから南海トラフの十数箇所に海底の動きを観測する機器を設置し、長期に渡って調査を続けてきました。

状況としては、海底の「強いひずみ」が九州の日向灘〜東海地方の太平洋沿岸の広範囲に渡って蓄積されており、特に高知県沖が顕著であるようです。
海上保安庁のサイトでは、一連の調査結果を「南海トラフ想定震源域のひずみの分布状態が初めて明らかに」などのPDF形式で公開しています。

またテレビ朝日のYouTubeチャンネルでも、この調査結果に関する報道動画を公開しているので参考になるでしょう。

南海トラフ広範囲で“ひずみ” 海底調査が語る警鐘(17/03/07)

実は、南海トラフ巨大地震は「過去すでに起きている」のです。南海トラフ巨大地震の先祖的な地震は過去13回発生していますが、特に着目すべきは和歌山県沖を震源とする「宝永地震(1707年)」、東海道沖を震源とする「明応地震(1498年)」です。宝永地震は東日本大震災並みの巨大地震であったとされ、また明応地震では巨大津波によって現在の三重県の港町「案濃津」に位置する地域にあった数千軒の家屋が壊滅し、地形まで変わってしまったそうです。

By:pixabay

また、1605年には「慶長地震」が発生し、九州〜千葉県に至る広範囲の沿岸に津波が押し寄せ、死者は1〜2万人とされています。

南海トラフでは約100〜200年単位で蓄積された海底のひずみ開放による巨大地震が発生しており、近年では1944年の「昭和東南海地震」と、続く1946年の「昭和南海地震」があります。この2つの地震発生からおよそ70年が経過した現在だからこそ、次の南海トラフ巨大地震の発生が懸念されているということになります。

過去の知見と先人の知恵、そして最新グッズで備えよう

今や、南海トラフ巨大地震が「いつ起きるのか」を議論するタイミングは越えたと言え、もっとも重要なことは「どう備えるか」という1点に絞られます。過去の震災例と、ITOITO-STYLE編集部スタッフが身をもって経験した東日本大震災から備えのポイントを導き出すと、おおむね次の8項目です。

① 通帳類、印鑑、健康保険証、多少の現金を確保
② 一時的に公共施設に避難しても、自宅が無事なら基本は「在宅避難」
③ 簡易トイレなど、断水と停電時に使えるトイレは必須。家族単位で最低1週間分
④ 水と食糧の確保は家族単位で最低1週間分、水は断水時の生活用水を考慮して多めに確保
⑤ 電気やガスが止まっても、調理や暖が取れる用意。カセットコンロやアウトドア用の焚き火台など
⑥ 衛生面の担保。ゴミ袋や使い捨てビニール袋やラップ類。除菌用アルコール、トイレットペーパー、ティッシュペーパー、ウェットティッシュの確保
⑦ 女性向けの衛生用品、乳幼児のミルクと哺乳瓶・オムツ、高齢者や病人向けの介護用品の確保
⑧ 情報源と電源の確保。ポータブルラジオと電池、スマホ充電用の外付けバッテリー(スマホは懐中電灯代わりにもなります)

幸いにも、近年の市販の防災グッズの機能性や進化にはめざましいものがあります。いわゆる「非常持ち出し袋」は各家庭で用意しておきましょう。

参考リンク:消防庁「非常持ち出し袋には、最低これだけは必要です

被災生活のシュミレーション、それはキャンプやアウトドア

さて、どれだけ防災グッズを買い揃えてみたところで、イザ大震災というときに使えない・生活に困るのは本末転倒。日頃からある程度馴れておくことが必要ですが、正直「避難訓練」や「防災訓練」だとちょっと気乗りがしませんよね。

電気ガス水道などの生活インフラが止まった状態での「被災生活訓練」を自宅でするにしても、やはり今ひとつ「のれない」のが現実だと思います。もちろん、アタマではそれが必要なことだとは十分理解してはいるものの。

By:pixabay

そこでオススメなのが、過去のコラムでも触れていますが「キャンプ」や「アウトドア」です。初心者にオススメなのは、まずは日帰りのデイキャンプから。

日本全国に、無料で利用できるキャンプ場やバーベキューサイトがありますので、近場へ出かけて野外調理と食事を楽しんで帰ってくるというパターンから入るといいでしょう。その際に利用するのは、アウトドア用のコンロやクッカーなどの調理器具。中でも最も簡単な楽しみかたは「外でお湯を沸かしてインスタントラーメンを作って食べる」ことです。

必要なものは、

① アウトドア用の加熱器具(シングルバーナー、コンロ、ストーブ)
② アウトドア用の調理器具(いわゆるクッカー)
③ インスタントラーメンまたはカップラーメン

だけ。YouTubeなどの動画共有サイトで「アウトドア ラーメン」といったキーワードで検索すると、同様の楽しみ方をしている人たちの動画を多く観ることができます。

By:pixabay

まずはこうした簡単なところから始めて徐々にテントやランタン、焚き火台などのグッズを揃えていき、最終的には電気・ガス・水道などの公共の社会インフラを利用せずに数泊のキャンプができるようになれば被災時でも問題なく、十分に生活を維持することが可能です。

例えば熊本地震においても実際に、日頃からキャンプを嗜んでいた人達が半壊した自宅敷地内にテントを張り、使い慣れたアウトドアグッズをフル活用して復興への備えをしていました。

By:pixabay

「訓練」と捉えると堅苦しくなりますし、過去の震災で身内や友人知人を失った方々にとって、震災への備えを楽しむという考え方は不謹慎と捉えられてしまう可能性も否めませんが、ここは敢えて次の震災に対しては「楽しみながら備える」という観点で取り組んでみてはいかがでしょうか。

そういう点でも、まずはキャンプやアウトドア・アクティビティを楽しむところから入ってみるのはオススメの選択肢です。近年のキャンプやアウトドアを楽しむ人たちの著しい増加により、今やそれらに関する情報はネット上でも多数存在し容易に手に入ります。

次の震災が起きるのは10年後かもしれないですが、もしかしたら1年後かもしれないですし、実は明日かもしれません。そう考えれば「備え」は早いほうがいいでしょう。次の休日にアウトドアショップへ出向き、必要なグッズを手に入れるのもいいチョイスだと思います。

重要なことはいざという時でも、あなた自身とあなたの大切な存在が共に生き延びられることです。そのための備えを、ぜひ。

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