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三浦半島の原因不明の異臭は大地震の前兆…?

2020/07/17に横須賀や久里浜周辺で「海の方からガス臭がする」という通報が相次ぎました。2020/06/04にも横須賀を中心とする神奈川県の三浦半島の広い範囲で異臭に関する通報が多数発生していますが、いまだに原因不明となっています。

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横須賀や久里浜で異臭に関する報道

2020/07/17に横須賀や久里浜周辺で「海の方からガス臭がする」という通報が相次ぎました。2020/06/04にも横須賀を中心とする神奈川県の三浦半島の広い範囲で異臭に関する通報が多数発生していますが、いまだに原因不明となっています。

 

以下、報道です。

■2020/07/17の報道



 

■2020/06/04の報道



 

2020/07/17の異臭と関連して報じられたのが、7/10に横須賀市の野比海岸の岩場に漂着したザトウクジラと思われるクジラの死骸です。

これは7/17に横須賀市によって東京湾外に曳航(えいこう)され、深海に沈めて「水葬」が行われましたが、異臭との関連は依然として判っていません

ザトウクジラか、死骸漂着 横須賀・野比海岸/神奈川新聞(カナロコ)

クジラの死骸を〝水葬〟 横須賀市/神奈川新聞(カナロコ)

また三浦半島では5/31にも三浦市内で「ガス臭い」という異臭に関する119番通報がありましたが、消防が駆け付けると臭いが消えており、こちらも原因不明のままとなっています。

 

ネット上ではニュースやSNSなどで「大地震の前兆では?」という噂話しが拡散しています。

『原因不明…三浦半島の“謎の異臭”は首都直下地震の前兆か(日刊ゲンダイDIGITAL)』

 

この記事では立命館大学の教授への取材となっていますが、当該教授の過去の「予測」としては「週刊女性2017年5月23日号」に掲載のこのような記事があります。

 

『大地震を連続的中させた高橋教授から「5・13博多に警戒」とメールが届いた』

 

2017年のゴールデンウィーク明け、特に5月13日前後に博多・北九州周辺で大規模地震が起きる可能性があることを予測したものですが、結果としてそのような地震は発生していません。

 

試しに三浦半島における確認済の断層帯と各所轄署への異臭通報件数を重ねてみたのが冒頭の図です。この情報だけで見ると、通報件数が約30件と他に比べて少なめだった三崎署管内における断層対は南下浦断層・引橋断層の2つですが、通報件数が多かった浦賀署管内・横須賀署管内においては「衣笠・北武山断層帯」「武山断層帯」の断層群主部が広範囲に密集しながら存在することが判ります。

 

今回通報があった異臭の特徴をピックアップしてみると

 

「ガス臭い」
「ゴムが焼けたような臭いがする」
「プラスチックが燃えたよう」
「化学薬品のようなにおい」
「にんにくのようなにおい」

 

となっており、異臭の原因について、横須賀市消防局・警察・海上保安庁・東京ガスによる調査では初めに通報があったときは風速3メートルの南風で、短時間のため臭いを分析できず、結果的に原因は不明なままとなっています。

7/17の異臭の翌日、7/18に相模湾で小規模な地震

ちょうど2度めの異臭通報が相次いだ7/17の翌日、7/18には相模湾でM3.5の小規模な地震がありました。

 

【相模湾】
2020/07/18 00:57頃, 震度1, M3.5, 深さ120km, 北緯35.2度, 東経139.5度

 

震源の深さ120kmという「深発地震」の部類になります。
深発地震は震源の位置が深い地震を示しますが、明確な定義はありません。概ね深さ60kmまでの地震を浅発地震、60〜200kmまでの地震を稍(やや)深発地震、200kmより深い位置で発生する地震を深発地震としています。

災害前の異臭の例

「災害前に発生する異臭」として判明しているのはガケ崩れや土砂崩れの前に、崩壊が進む土壌の中から植物の腐ったような臭いや土壌内の微生物が有機物を分解して発生した硫化水素が空気中に拡散し、異臭となって漂うことはありますが、異臭が通報された範囲や報じられているニオイの質から考えると、そういうものとは明らかに異なります。

 

東京湾沿岸では、千葉市内などで2019年5月8日夜に「ガス臭い」「ゴムが焼けたような臭いがする」「プラスチックが燃えたよう」といった同様な異臭騒ぎで約120件の119番通報があり、消防が出動して調査したものの、このときも原因は判らずじまいでした。

『「焦げ臭い」原因分からず 8日夜、千葉市で通報相次ぐ(千葉日報)』

 

2019年に関しては、東京周辺での大きな地震は発生していません。
(ただし、6/18に山形県沖を震源とするM6.7・最大震度5弱の地震がありました)

 

「原因不明の異臭と地震」の例としては、海外になりますが2017/01/13に韓国・釜山で「原因不明のアンモニア臭」「ガスの臭い」との通報」が相次いだものの、結論として原因は不明。その年の11/15に韓国における観測史上最大の「浦項地震(ポハンじしん)M5.4」が発生し、82名の死者が出ています。

『韓国・釜山でまた異臭騒ぎ、息ができないほどのアンモニア臭に「地震の前兆か」と不安広がる』

『浦項地震』

 

地震に関連したガスとしては天然に存在する「放射性のラドンガス」があり、地震の震源域の岩盤内などに割れ目が多量に発生した際に岩石中からラドンガスが放出されて地下水の動きなどに伴って地表へ上がってくることがありますが、ラドンガスは無味無臭ものですので、三浦半島の異臭の原因とは考えにくいでしょう。

また、関東地方には南関東ガス田と呼ばれる日本最大の水溶性ガス田が存在しますが、主に千葉県を中心とした南関東一帯に分布していますので、三浦半島で集中的に地下のメタンガスが噴出するケースも考えにくいと思われます。

異臭騒ぎが大地震の前兆という話はデマなのか?

上図のように、異臭の通報が相次いだ三浦半島は「首都直下地震」の想定震源域に入っており、1703年の元禄地震・1923年の関東大震災のいずれの震源域内にも位置しています。

 

ただ、「いつ起きるのか?」と必要以上に不安になる必要はありませんし、発生する詳細な場所と時期と地震の規模は現代の最先端の科学力を用いても予測不可能という現状ですので、そこを一般市民レベルで突き詰めて考えることに大きな意味があるとは思えません。

 

今回の異臭も本当に前兆かどうかは実際に起きてみなければ検証はできませんし、検証しても因果関係が証明できるとは限りません。ただし、こうした状況や情報は「備えるためのキッカケ」として利用することは有意義です。

 

ひとつはっきりしていることは「起きたときに命が無事なら、その後を乗り切るための備えが無ければ生活に困窮する可能性が高い」ということです。

 

今回の異臭騒ぎや「大地震の前兆かも?」といった話題を「喉元過ぎれば熱さを忘れる」で忘れてしまうのではなく、これをキッカケとして必要な備災・防災グッズなどを確認しておきましょう。

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