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簡易トイレ検証の最終ステージは「うんち」の処理方法です。うんちの処理でもっとも課題になるのが「ニオイ」。いわゆる大便(糞)のニオイは腐敗臭と勘違いされがちですが、一緒に排出される細菌類の排泄物からの臭気成分でインドール、スカトール、硫化水素などです。
乳幼児などの小さなお子さんや要介護のお年寄りなどがいらっしゃるご家庭であれば、うんちを処理したオムツをビニール袋に入れて廃棄されるケースがよくあると思います。しかし、ビニールに入れたはずなのに気になりますよね、あの「ニオイ」。簡易トイレでも同様の課題があるわけですが、もちろん解決手段もちゃんとあります。
ともあれ、まずは簡易トイレの「処理剤」が使えるかどうかから見ていきましょう。
◆大便(うんち)の処理:簡易トイレの「処理剤」は使えるか?
本物の「うんち」を使うわけにはいきませんので、疑似便として使うのはこの「お味噌」です。100円ショップで販売されているものを調達しました。トイレメーカーでもかつては便器開発時に使用されていたそうです。柔らかさ具合がちょうどいい感じですね。成人の1回あたりの排便量は100〜250gとされているので、今回はその中間値である175gを使用します。
この強烈な香りを素材とした「ニオイ対策」の主役のアイテムはこちら、「驚異の防臭袋BOS(ボス)」です。医療系開発、それも文字通り「うんちのニオイ対策」用に開発された防臭用の特殊ビニール袋。介護の現場でも活用されかなり評価の高い製品です。
1時間後、タッパーのフタとラップを外し、即座に内部の臭気を確認してみました。右側の一般的なビニール袋を利用したほうは、予想通りの強烈な香りがタッパー内に漏れ出していました。これが本物のうんちを使った検証だったらと想像すると身震いがしますね。かたや、左側の「驚異の防臭袋BOS」を利用したほうは、まさに驚異的とも言える無臭状態。前評判から予想はしていましたが、この防臭効果には正直驚きました。
編集部スタッフは、すでに「高吸水性樹脂 CP-1」を合計4.5kgと「驚異の防臭袋BOS」計270枚を備蓄用に準備しています。スペック上は、被災時に断水して水洗トイレが使用不能になった場合でも4人家族で約2〜3週間はトイレ問題の不安なく生活できることになります。
併せて、消毒用アルコール類やウェットティッシュなども多めに備蓄しておくといいですね。
今回の検証結果、判ったことは次の通りです。
・簡易トイレの便器:自宅避難時であれば自宅トイレを流用できるので無くても良いが、あれば便利。
・簡易トイレセット:「おしっこ」の処理には十分に実用的だが、「うんち」の処理には使えない。
・防臭機能のある袋:「うんち」の処理には圧倒的に有効。被災直後の1〜2週間を乗り切るにはもはや必需品。
・最低限、排泄物を受けるための黒いビニール袋と水分を吸収させる素材は用意しておく。
(※成人の1回の排尿量は200ml〜400ml程度で1日4〜6回程度、排便量は100〜250gで1日1〜2回程度)
【おすすめの被災時のトイレ】
・非常用持ち出し袋には、コンパクトな簡易トイレセットを常備
(このタイプはキャンプやドライブ時にも便利)
・自宅避難用には、大容量の高分子吸収材(高吸水性樹脂)と1〜2週間分の黒ビニール袋と防臭袋を備蓄
(尿+便で1人あたり1日最大7回と仮定すると、ビニール袋は1週間でそれぞれ50枚程度必要です。4人家族ならそれぞれ200枚)
【他、準備しておくべきトイレ対策品】
・消毒用アルコール類(100円ショップでも販売しています)
・ウェットティッシュ類(赤ちゃん用のお尻拭きの大パックが便利です)
・備蓄用のトイレットペーパー(日々使いながら入れ替えていくローリングストックで)
被災時のトイレ対策用品として使えると言われるのは、介護用オムツや猫砂・ペット用のトイレシーツ・古新聞紙などですが、1〜2日の短期間であれば応急的な処理剤としては有効とは言え、粉末状の高分子吸収系素材とは違いそれ自体がかさばるものです。避難(被災)生活が長期化する場合を考えると、やはり今回検証したような明確に簡易トイレとして商品化されている高分子吸収系素材の処理剤・凝固剤は必須となります。
また、最大の課題はやはり「うんち」の処理。被災時に水洗トイレが使えない状況が丸1週間続くとして、3〜4人構成の家族で暮らす際のトイレの利用状況がどのようなことになるか容易に想像できます。とりあえずビニール袋に貯めるとして、ごみ収集などの行政機能が復旧した後に燃やすゴミとして廃棄する、という流れになりますが、廃棄までの期間に溜め込まれる使用済の簡易トイレからのニオイは防ぎたいもの。家族の人数が多いほど防臭対策も重要になります。
(余談ですが、食パンの包装袋が簡易防臭袋として使えます。)
また、忘れがちなのがトイレットペーパーの備蓄です。乳幼児や要介護の家族がいらっしゃる場合はオムツ類などもしっかり備えましょう。東日本大震災では、編集部スタッフも実際にこれらの用品が手に入らない経験をしているので、備蓄を維持しながら日常生活内で消費して減った分を補充するという「ローリングストック方法」を活用しています。
結論としては大震災が起きた場合、被災時のトイレ問題の有効な解決策は是非もなく「とにかく各自・各家庭で簡易トイレ、もしくは断水停電時にもトイレが使える手段を事前に用意しておく」、この1点に集約されます。現状において、これは他に現実的な選択肢はほぼありません。阪神淡路大震災から20年後に起きた熊本地震に際しても、トイレ問題は大きく改善していたとは言えないからです。
農家さんや広い土地を持つご家庭などであれば、自宅敷地内などに穴を掘って・・・という対応も無くはありませんが、排泄物を直接地中に埋める廃棄方法は、その後の感染症の発生に繋がる可能性があります。都市部であれば行政や治自体が下水管に直結している「マンホール」を緊急用トイレとして設置する場合もありますが、自宅付近に設置されるかどうはは実際のところ判りません。やはり水・食糧の備蓄と併せて、個人や家庭単位でトイレ周りもしっかり備えておく必要があります。皆さんは緊急時のトイレの準備、大丈夫ですか?
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