便利で美味しい「インディカ米」を知ろう!
日本では1993年の天候不順が原因で発生したコメの大規模な不足によって緊急輸入された「タイ米」が有名になりましたが、この長細い形状のお米「インディカ米(長粒米)(@wikipedia)」は、東南アジアを中心に気温の高い地域で栽培されているもので、日本で広く流通しているジャポニカ米(@wikipedia)とは異なり、粘り気は無く独特の香りを持つコメです。
この性質のおかげで研ぎや吸水時間を省くことができ、短時間で調理可能です。生米から最短15分で食べられる状態になるというスグレモノ。
まず研ぐ必要が無いということは、余分な水を消費しないということ。アウトドアにも被災時の食事にも共通するのが使用する水は少ないほうがいいです。
そして吸水時間が必要ないということは、時短調理につながります。素早い行動が求められる登山などでは調理時間は1分でも速いほうが良いですし、被災時の炊き出しにおいても多くの人数ぶんの食事を用意する場合、調理時間は短いほど良いわけです。
そして意外なメリットは、この粘り気がなくパラっと仕上がる性質のおかげで、食べた後のお皿や調理器具の後始末が簡単であるという点。食器を洗うための水が少ない状況において、少量の水とティッシュなどで拭き取れば済んでしまいます。ここもアウトドアと被災時の食事に共通しますね。
もう一点、インディカ米の嬉しい特徴としてはデンプン質としての「アミロース」が日本のコメに比べて多いため、カロリー自体はほんの若干高めですが低GI値であるということ。つまり、食べた後の血糖値の上昇が比較的緩やかということで少量でも腹持ちがいいため、ダイエット中に食べるコメとしても向いています。
そんなメリットだらけのインディカ米ですが、もちろんマッチしないメニューもあります。オニギリのように握って丸めることはできませんし、独特のほのかな香りがあるため繊細な味わいの和食の惣菜用のご飯としては微妙です。
しかしチャーハンやピラフ、パエリア、そしてカレーに炊き込みご飯、以外な伏兵としては卵かけご飯など、特徴を活かすメニューであればとても美味しく食べられる食材。さっそく、編集部でも実践している活用方をご紹介します。
なお、今回の記事で使用したインディカ米は次の2種類。どちらもオススメの美味しいインディカ米(タイ産のジャスミンライスおよび、インド産のバスマティライス)です。また最近は、なんと国産の長粒米である「ホシユタカ」という品種も出回るようになってきています。
インディカ米、基本の調理方法
もっとも簡単なインディカ米の調理方法は「沸騰させた大量のお湯で、乾燥したままのインディカ米の生米を15分茹でたら湯を捨てる」だけ。これだけです。とっても簡単、パスタとほぼ同じです。
最初にコメを洗う必要も吸水させる必要もありません。お好みで湯を捨てた後に鍋にコメを戻して1〜2分くらい弱火で蒸らしてもいいです。
とは言え、アウトドア・被災時の食事に共通するのは水を潤沢に使えないこと。ここでは最小限の水で煮る方法もご紹介します。用意するのは好きな量のインディカ米と、その1.5倍の量の水。
好きな量のお米と言っても、クッカーや鍋で煮ることが出来る量にしましょう。仕上がりは当然膨らみます。とりあえずインディカ米1合なら、水は1.5合です。好みでひとつまみの塩とオリーブオイル少々を入れておくと、仕上がりがぐっと引き立ちます。
鍋に水を沸騰させたら、そこにインディカ米を投入します。ゆっくりかき混ぜながら再沸騰直前で弱火・とろ火にして、フタをして15分。フタができればフライパンでも構いません。
日本のお米であれば炊飯中は「赤子泣いてもフタ取るな」と言われますが、こちらは途中でフタを開けて(コメ全体に均一に熱が入るように)優しくかき混ぜてもOK。粘り気が無いのでかき混ぜても潰れたり崩れたりしません。
15分ほど経ったらフタを開けて味見してみましょう。ジャスミンライスやバスマティライスのような香り米の芳香も堪能します(この香りがNGという方もいるかもしれませんが)。ほんのりアルデンテ状態で美味しく感じれば出来上がり。お好みでここから1〜2分弱火で炊き蒸らししてもいいですし、火を止めて10分程度蒸らしても構いません。
蒸らす場合は、どちらの場合もフタはしたほうが良いでしょう。とにかく15分ほど煮れば、だいたい食べられる状態になります。この良い意味でのいい加減さというか自由さは、日本のお米を使った炊飯には無い新鮮な感覚です。
もうあとは食べるだけ!インディカ米とカレーの組み合わせが最高なのは言うまでもありませんが、この「いなばのタイカレー・シリーズ」の缶詰はとても良く合います。キャンプのお供にも災害時用の備蓄食品にも入れておきたい缶詰の1つですね。
15分煮たインディカ米に、ミックスベジタブルと溶き卵とツナ缶を入れてさっと炒めれば、パラパラチャーハンも簡単。炊飯器も冷ご飯も要りません。思い立ったら30分以内に生米からパラパラチャーハンが出来てしまいます。
そして、編集部イチオシの意外なレシピがこの「インディカ米の卵かけご飯」。卵かけご飯は絶対に日本のコメが合うだろ〜!という声が聞こえて来そうですが、騙されたと思って一度試してみてください。その際、次の手順がオススメです。
① 炊きたてのインディカ米ご飯に、先に玉子の白身だけ投入(事前に溶く必要は無し)
② おもむろにご飯と白身をよく混ぜ合わせる(自動的にクリーミーな状態になる)
③ 仕上げに卵黄を載せ、醤油を好みで垂らしながらちょっとづつ卵黄を崩してご飯と絡めて食す
このレシピで作る卵かけご飯の美味いこと旨いこと!白身が絡んでクリーミーになったインディカ米の食味と香りに卵黄の濃厚感、醤油の旨味が渾然一体となった味わいは、間違いなくクセになります。
インディカ米で作る、手抜き&簡単パエリア
カレーやチャーハンにピラフがバッチリと合うインディカ米ですが、ここはやはりスペイン料理を代表する「パエリア」も試してみたいところです。ここではキャンプにぴったりの手抜き&簡単パエリアの作り方をご紹介します。
日本で見るパエリアは、比較的シーフードが多いでしょうか。エビ・アサリ・ムール貝がメインのインスタ映え(笑)するレシピを多く見かけますが、パエリアは具は自由であり、発祥の地であるスペインのバレンシア地方ではどちらかと言えば「山の料理」扱いです。
とりあえず野菜類は、キャンプ場がある地域の地場産がオススメ。味付けはもう簡単に市販のパエリアの素を使い(無ければコンソメ)、肉は「缶つま★レストラン・シリーズ」から「厚切りベーコン・プレーン」をチョイス。他は、オリーブオイルと塩コショウで十分です。
味付け用の具材たち。特にこの「缶つま★レストラン・シリーズ」は種類も多用で味付けも缶詰らしからぬ本格的、かなり美味しい味わいです。キャンプのお供にも備蓄食材にも、日常の晩酌の肴にもオススメ。
左奥の何やら可愛らしい小さなパッケージは、ALCALA OLIVAのポーションタイプのオリーブオイルです。こちらは別の記事「【レビュー】備えておきたいポーションタイプ調味料!」ですでにご紹介済ですが、1〜2食ぶんとして使える使い切りタイプなので携行性も備蓄性も良く、いつでも開けたてフレッシュでとにかく香りが素晴らしいオイルです。加熱用にも生食用にもバランスの良い味わいで、編集部スタッフは現在このオリーブオイルをヘビロテしています。ご興味があれば、ぜひこちらのamazonでポチっとしてみてください(意外と売り切れがちです)。これは自信を持ってオススメできる、使いやすく美味しいオイルです。
では手抜き調理開始です。先にパエリアの具材を加熱調理してしまいます。味付けはこの「クレイジー・ガーリック」。姉妹品のクレイジー・ソルトはもうだいぶ前からポピュラーだと思いますが、こちらのガーリック版は洋食系やエスニック系のレシピなら、これ1本で味が決まる万能調味料。もちろんステーキにも合います。オイルで焼いただけの肉にこれを振るだけで、めちゃめちゃ美味しい極上ステーキが出来上がります。
野菜類に火が通ったら缶つまベーコンを入れてさっと炒めて具材はできあがり。一般的なベーコンであれば、先にベーコンを炒めたところに野菜を入れて炒めます。
別途フライパンでニンニク→玉ねぎの順で炒めて、玉ねぎが透き通ってきたらそこにインディカ米の生米を投入し、一緒に炒めます。インディカ米は洗わず・事前の吸水も不要です。
玉ねぎと一緒に炒めているインディカ米も色が透き通ってきたらパエリアの素かコンソメを入れ、全体に味が馴染むように混ぜ合わせながらもう少々炒めます。これがご飯のベースの味となります。
インディカ米に味付けが行き渡ったらインディカ米の量の1.5倍よりやや少なめの水を入れ、その上に先に作っておいた具材を投入します。水の量は野菜類などの具材から水分が出るのを考慮した量です。
具材をインディカ米の上にまんべんなく広げたら、弱火またはトロ火にして煮込み開始です。本来のパエリアの作り方ではお米の上に生の具材を並べて同時に火を入れていきますが、ここでは手抜き調理かつ失敗無しで作り上げたいため具材は火が通ったものを使っています。
フタがあればフタを、アウトドアであればこのようにアルミホイルで簡単にフタをしてしまいます。このまま15分炊いていきましょう。15分経ったら火を消して、念のため味見を。問題なければ完成ですし、好みでフタをしたまま数分蒸らしてもいいです。
完成です。慣れるとちょうどいい「おコゲ」もできます。パエリアの具は自由です。エビとムール貝に固執する必要はないので好きな具材を試すのも楽しいです。スペインでは数種類のソーセージを炊き込んで仕上げに溶き卵を回しかけてオーブンで仕上げる「アロス・コン・コストラ(@wikipedia)」といったレシピもあるくらいです。
なお今回使ったフライパンは、ブッシュクラフト社の「焚き火フライパン・深型」です。このフライパンは深型と浅型の2種類があり、鉄製ながら軽量・取っ手を自作するというアウトドア調理愛好家にはピッタリのもの。編集部ではこの2種類を実際に購入してレビュー記事『人気の「焚き火フライパン」2種類を実際に購入、徹底レビュー!』を公開していますので、こちらもぜひ御覧ください。
最後に
【平成の米騒動について】
今からさかのぼること1993年(平成5年)の日本では、天候不順から記録的なコメ不足が発生し、国内で発生した食料市場の混乱はやがて世界のコメ市場にまで影響を及ぼすこととなりました。
店頭からは国産のコメが姿を消し一部ではヤミ米の流通騒ぎや便乗商法も発生、そして、それまで日本人には馴染みが無かった東南アジアの「タイ米」が救世主となるべく流通しましたが、日本のコメとは食感も味も香りも異なるタイ米の正しい調理方法や食べ方が一般市民に浸透せず「タイ米はマズい」という誤ったイメージが広まってしまった「平成の米騒動(@wikipedia)」。覚えているかたもいらっしゃるのではないでしょうか。
【インディカ米の価値】
現在では主食となる食材の多様化や低糖質な食生活を好む人々の増加といった要因から、日本人の基本的な主食であるコメが大規模に不足することはなくなりました。また特に年配層となると「銀シャリ信仰」とも呼べる国内産のコメのみを好み、タイ米を始めとしたインディカ米は受け入れがたい傾向も否めません。
しかしインディカ米は世界で生産されるコメの約80%を占め、その特徴に合わせて適切に調理すれば実に美味しく優秀な食材です。特に、インドやパキスタンで栽培されている「バスマティライス」やタイの「カーオホームマリ(ジャスミンライス)」といった種類は「香り米」として価値も高く、近年では国内でも増えているインドやネパール、パキスタン料理店のカレーの付け合せやビリヤニとして使われているなどコメとして一定の評価を得つつあります。
被災時の炊き出し用であれば、短時間で炊き上げて紙コップに副菜と一緒に入れれば「暖かい1食」としてすぐに提供できます。オニギリにする必要が無ければ、むしろ人の手でコメを握る必要が無いので衛生的でもあります。
【インディカ米を食べてみよう!】
キャンプでも「飯盒炊爨(はんごうすいさん)」は定番で、最近はtrangiaのアルミクッカーである「メスティン(レビュー記事)」と固形燃料を使って自動炊飯にチャレンジする愛好者も増えています。そんなアウトドアでの炊飯シーンに、インディカ米を使ったレシピを追加してみてはいかがでしょうか。
もちろん、自宅でも炊飯器を使わずにお鍋1つで時短炊飯が可能ですから、アウトドア愛好者だけでなく主婦や主夫の皆さんにもオススメできるお米であることは間違いありません。ぜひ、自分なりのインディカ米レシピを試してみてください。