アウトドア・クッカーの大定番、「メスティン」とその大型版「ラージ メスティンに」テフロン(フッ素樹脂)&セラミックコーティングを施してみました。表面処理の詳細な状況や、アルミ素材における「焼き鈍し(なまし)」による注意点、コーティングしたメスティンの取り扱い方などを徹底レビューします。
【ページ目次】
・「メスティン」のコーティング(本ページ)
・「ラージメスティン」のコーティング(本ページ下部)
・素材厚が薄いアルミクッカーにフッ素樹脂コーティングをおこなう際の注意点(次ページ)
・フッ素樹脂コーティングされたメスティンの扱い方(次ページ)
・フッ素樹脂コーティング調理器具の安全性について(次ページ)
さっそくですが上の写真は、ノーマルの無垢アルミのメスティンとコーティング加工したメスティン、外装のコーティング素材はセラミック。Brushed Silver & Matte Blackの美しいコントラストが、所有欲すら満たしてくれます。
もっとも重要なメスティン本体の内側部分の比較。左のノーマル版は、見慣れている皆さんも多いと思います。右側は、フッ素樹脂コーティングをおこなったもの。フタを被せるフチの部分まで、ムラの無い仕上りです。
ちょっとしたデジタル・ガジェットのような絵面ですが、メスティンの「フタ」のみを並べてみました。
フタのロゴ部分にフォーカスした形での接写。こうして見ると、ノーマルのメスティンのロゴ部分はいかにも「アウトドア・ギア」という雰囲気ですが、コーティング版はちょっと落ち着いた感があります。
コーティング版のロゴ部分をさらに接写。3Dグラデーションがかかったような「trangia」のロゴと、やや深めの「Made in Sweden」の彫り込み。
「フッ素樹脂コーティング」と聞くとちょっと馴染みが無いかたもいるかもしれませんが「テフロン加工」と聞けばピンとくるでしょう。テフロンは米国デュポン社がフッ素樹脂を商品化した際の商標・商品名です。
一般的な商品としては、ご存知のとおりフランスのティファール社が1956年に世界で初めて「こびりつかないフライパン」を発売しました。現在は各社から様々な商品が発売されているので、みなさんにご家庭にも1つはフッ素加工のフライパンや鍋類があるのではないでしょうか。
では、もう少しメスティンのコーティング加工の状態を見ていきましょう。
フッ素樹脂コーティングをおこなった内側がよくわかると思います。手触りは、ご家庭のテフロンコーティングのフライパンなどとほぼ同じ。
「取っ手」が装着されている丁番の内側のリベット部分。コーティング漏れなども無い、完璧な仕上り。
次に側面です。外装はセラミックコーティングとなります。こちらもムラのない美しい仕上り。フタがセットされる部分はどうしても摩擦が発生するので、今後の長期使用でコーティング剥離も発生する想定です。
そして裏側です。「こびりつき防止」の目的のみであれば外装コーティングは不要かもしれませんが、素材厚が薄い無垢アルミのメスティンへのフッ素樹脂加工は「焼き鈍し」による素材軟化は避けられないため、少しでも強度を稼ぎたいという意図です。
今回フッ素樹脂コーティングの加工を依頼した企業は、福岡県久留米市に拠点を置く 「株式会社 睦美化成(むつみかせい)」 さんです。
メスティンのコーティングに関してはすでに実績をお持ちで、九州地区においていち早くフッ素樹脂コーティングに取り組み、コーティングに関してはエキスパートと言える企業です。掲載の許可をいただいたので、こちらも併せてご紹介します。
クッカーのフッ素樹脂コーティング加工に際しては、本記事執筆時点では完全オーダーメイドの一点モノとなります。クッカーの本体・フタと、それぞれ内側・外側にどうコーティングを実施するかを選択し、加工料金が決定します。
下記は参考までのコーティングに掛かった費用概算です。「今回の加工を依頼した時点(2016年8月)の料金」であり、今後は状況に応じて加工料金が改定される可能性も十分にありますので、あくまで「目安的な参考費用」としてご理解ください。
本体・フタともに内側外側のフルコーティングした場合の参考料金です。
以上の料金に加えて発送運賃と代引手数料や振込手数料などの諸経費が掛かります。詳細は睦美化成さんへお問い合わせください。
メスティン発送から加工をおこなって手元に戻ってくるまでの期間は、およそ2週間程度でした。
コーティングの相談、発注依頼、完成までは次のような流れです。
※なお、当サイトではクッカーへのフッ素樹脂コーティングの受付はおこなっておりませんので、お手持ちのクッカーをコーティング仕様にしてみたいという場合は、睦美化成さんへ直接コンタクトしてみてください。
焼成処理を含む本格的なフッ素コーティングにチャレンジする前に、手軽にクッカーへのフッ素コーティングを試したい場合は、このようなスプレータイプのフッ素コーティング用品もありますので、試してみるのもいいでしょう。(フッ素革命シリーズは割りと品薄なので、購入される場合はお早めに)
次にメスティンの大型版「ラージメスティン(TR-209)」のコーティング状況を見ていきます。ノーマルサイズのメスティンのほうが圧倒的にメジャーな存在ですが、ラージメスティンは調理器具としての立ち位置がより明確で調理時の使い勝手もかなり良好なものです。
奥がコーティング加工をおこなったラージメスティン、手前がノーマルサイズのメスティンです。ラージメスティンは最大で3.5合のご飯を炊くことができます。
外装は同じくセラミック・コーティングです。無垢アルミとは異なり、少し陶器様のザラつき感があります。ラージメスティンの大きめサイズと相まって、ちょっとした高級感も感じられます。
内側のフッ素樹脂コーティングも、ノーマルサイズのメスティンと同じです。サイズによりコーティング面積は異なりますが、ムラの無い美しい仕上り。
ラージメスティンはノーマルサイズのメスティンと違い、フタに「trangia」のロゴも「Made in sweden」の刻印もありません。フタの内側にもフッ素樹脂コーティングをしてあるのでこびりつかないフライパンとしても使えますが、グリップは長辺に取り付けないと焼き鈍しによる軟化で変形する場合があります。
取っ手の装着部分の接写。リベットのスキマにまできちんとコーティングが行き届いているのがわかります。
ラージメスティンのフタ内側とノーマルサイズのメスティンのフタの外側の比較。質感の違いが一目瞭然です。
実戦投入ということで、パスタ2人前を調理。オイルサーディンとフリーズドライのネギを使った和風の味付けです。もちろん、オイルサーディンのオイルは全量投入しています。
上記パスタを完食した後、ティッシュペーパーで軽く拭き取った状態。オイル含めて、まったく何も残りません。これぞフッ素樹脂コーティングの実力。日常的にキッチンで使うティファールなどのテフロン・コーティングのフライパンや、同じtrangiaのストームクッカーのノンスティック加工のフライパンと較べても、まったく遜色なしです。
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・素材厚が薄いアルミクッカーにフッ素樹脂コーティングをおこなう際の注意点(次ページ)
・フッ素樹脂コーティングされたメスティンの扱い方(次ページ)
・フッ素樹脂コーティング調理器具の安全性について(次ページ)
とは言え、やはり愛用のクッカーに後からコストをかけてコーティングするのはちょっとハードルが高いという場合は、最初からフッ素コーティング(ノンスティック加工)されたクッカーを新たにゲットするのも1つの選択肢です。