活動期に入った日本列島の地殻
2011年に発生した東日本大震災以降、熊本地震や鳥取県中部地震といった大規模地震が発生し、また本州では御嶽山や本白根山・九州でも新燃岳が爆発的噴火を起こしました。
そして諏訪之瀬島でも爆発や噴火が発生、薩摩硫黄島では火山性地震が増加するなど、特に九州地方での火山活動が活発化しています。
2018年初には大きな被害を出した「台湾花蓮地震」も発生、同年3月初旬には沖縄の西表島付近で群発地震を想起させるような連続した地震も起きました。
また薩摩半島から約50km南にある「鬼界カルデラ」においては、海底からの高さが600メートルにもなる世界最大級の「溶岩ドーム」が存在し、熱水を吹き出すなど活発に活動していることが判明したのも2018年です。
近年増加する地震や火山活動は、巨大地震への胎動か
近年の日本全体に目を向けると、噴火を含め活発化する火山や連続性のある各地での地震が気になります。
【活動の活発化が見られる火山】
・阿蘇山で孤立性微動が2017年3月初旬から激増
・山形の蔵王山で火山性の地震が発生
・秋田駒ケ岳で火山性の地震が発生
・箱根山で2015年から大涌谷を中心に火山性地震増加(2018年初旬においては沈静化)
【2001年以降に噴火および爆発した火山】
・新燃岳
・硫黄山
・本白根山
・諏訪之瀬島
・口永良部島
・御嶽山
・桜島
2018年時点で、日本国内で活火山と認定されている山の数は111。それにしても、近年の短期間における活動の活発化はかなりのものだという印象を持たざるを得ません。
連続した地震に関しては上図で示したように、特に2018年3月には沖縄の西表島付近で、翌2018年4月には島根県西部で、極めて短期間に信じられない回数の地震が発生しています。
【連続性のある地震】
・西表島付近
・島根県西部
・宮城県沖
・茨城県沖
・福島県沖
・熊本県熊本地方
・茨城県北部
・和歌山県北部
2018年4月に島根県西部で1日の間に27回も発生した地震に関しては、図に起こしてみました。
この島根県西部の連続地震については、こちらで簡単にまとめてありますので、併せてご覧ください。
関連記事:『【2分で読める】島根県西部の連続地震を断層と過去の地震歴で見る』
そして、なにより心配されることは以前より科学的に発生が想定されている、いくつかの巨大地震です。
トップ3は、皆さんもご存知のこちらです。
・南海トラフ巨大地震
・首都直下型地震
・北海道沖(根室沖)巨大地震
しかしこれだけではありません。あまり報じられないが故に、忘れられがちな巨大地震の恐れのある地域があります。
それは『日本海沿岸』と『沖縄』です。
巨大地震と津波の脅威は、太平洋側だけではない
日本海側での発生が懸念される巨大地震
2014年に政府の有識者会議は、日本海を震源とする大規模地震について初の調査報告書を公表しました。
それによれば、北海道〜九州北部の沖合にある60断層を震源として最大マグニチュード7.9の巨大地震が発生する可能性があります。
想定される津波被害は16道府県の沿岸に及び、津波の高さは崖地で最大23.4メートル(北海道せたな町)、人家のある平地部でも最大12.4メートル(同奥尻町)に達すると想定されています。
また、日本海側の60断層の動きから想定される地震規模はM6.8~7.9で、M7.9は北海道北部の断層と、青森・秋田県の沖合の断層とされています。実際にこの大きさの地震が起きた場合、人的被害や経済的損失は相当なものになります。
過去に日本海で起きた大地震で大きな被害を出したものとしては次の2つが挙げられます。
- 1983年:日本海中部地震(M7.7):秋田県などで死者104人
- 1993年:北海道南西沖地震(M7.7):奥尻島を中心に死者・行方不明者230人
◆参考情報(日経新聞):『日本海の大地震、津波最大23メートル 政府が初想定』
九州〜沖縄周辺での発生が懸念される巨大地震
そして、「沖縄トラフ」の動きに起因する、九州西方〜沖縄〜台湾北方までの一帯に、巨大地震が発生する可能性も指摘されています。
沖縄本島と周辺諸島は、大陸を構成するユーラシアプレートに対して南方から移動してくるフィリピン海プレートが潜り込む、ちょうど境界付近(境界の少々北側)に位置しています。
そして沖縄の北側には「沖縄トラフ(長さ約1,000km、幅約200km)」が存在し、北端(東端)は別府-島原地溝帯、南端(西端)は台湾島に連続する構造になっています。
2018に起きた台湾花蓮地震の原因は、フィリピン海プレートの動きと沖縄トラフの動きの影響とも考えられます。
沖縄県を含む南西諸島の地震活動は、大きく4つ
(1)フィリピン海プレート内で発生する浅い地震
南北大東島周辺の地震活動。
過去約100年間に発生した最大の地震は、1998年に石垣島南方沖で発生したM7.6の地震。
(2)フィリピン海プレートとユーラシアプレートの境界で発生する地震
琉球海溝付近で発生する地震。
過去約100年間に発生した最大の地震は、1901年に奄美大島近海で発生したM7.5、1911年に奄美大島近海で発生したM8.0の地震。
(3)ユーラシアプレート内で発生する地震
南西諸島から沖縄トラフにかけて発生する地震。
過去約100年間に発生した最大の地震は、1938年には宮古島の北の沖合の沖縄トラフで発生したM7.2の地震。
(4)沈み込んだフィリピン海プレート内で発生する地震
南西諸島から沖縄トラフの直下で発生する地震。
過去約100年間に発生した最大の地震は、1960年に与那国島北方沖で発生したM7.8の地震。
沖縄周辺で発生した地震に関しては、Wikipediaの「南西諸島近海地震」に関する情報が詳細です。
画像出典:Wikipedia
こうして見ると、比較的近い過去に沖縄周辺でも大地震が発生していることがわかります。
沖縄県内では活断層が少なくとも約90カ所に存在することが判明しており、今後発生が懸念される大地震はプレート型であると予想されています。
◆参考情報(琉球新報):『沖縄でも大地震の恐れ 活断層、プレート要因 危機感の薄さに専門家警鐘』
火山活動の後に巨大地震は発生しうるのか?
近年、素人目にも異常と感じるほど、日本各地で火山活動が活発化し、震源の浅い地震が増えています。2018年には国内でもいくつもの火山が噴火に至り、群発地震とも思えるような連続した地震も発生、本記事執筆中もそれらの活動が収まる気配はありません。
2018年の春は特に、
3月頭:沖縄の西表島付近で群発的な地震が発生
4/09:山陰地方の島根で最大震度5強の連続地震
4/19:九州の硫黄山が噴火
4/22:本州では草津白根山で再び火山活動が活発化
4/22〜4/23:関東の新島・神津島近海で地震が相次ぐ
4/23:島根で震度3の地震が震源深さ10kmで発生
4/24:北海道の根室半島南東沖で最大震度4の地震
といった状況で、短期間に全国各地の地下で活動が活発化しています。
現在進行形で発生している日本列島の地殻における活動が今後、想定されている巨大地震などへ連鎖する可能性はどれだけあるのでしょうか?
特に新燃岳の過去300年間の爆発的噴火の記録と、歴史的な大地震の発生時期を突き合わせてみると、(半ば強引かもしれませんが)何らかの関連性を感じられるものとなっていることは否定できません。
直近で見ても、新燃岳は東日本大震災の直前にも爆発的噴火を起こしているという事実があります。
画像出典:NIED 自然災害情報室
火山活動と地震の関連性
火山活動と地震が連動して発生するようなケースについては、次のような前後関係になります。
① 先に震源断層が動いて大地震が起き、その影響で火山が噴火する場合
② 先に火山が噴火あるいは噴火しそうになり、その影響で震源断層が大地震を起こす場合
出典:静岡大学小山研究室のホームページより
広く理解されているのは①のパターンですが②もあり得るという研究結果を考えれば、現在九州地方で活発化している火山活動が、次の巨大地震へとつながる可能性はあると考えていいでしょう。
もはや「いつ起きるのか?」を考える段階ではない
沖縄・九州から北海道まで火山活動と地震活動が広い地域でよく起きるようになった最近、少々のことでは驚きもせず、この状況に感覚が慣れていくこと自体が少々怖いとも感じますが、南海トラフ巨大地震や首都直下地震、ひいては富士山の大噴火などはだいぶ以前から発生の可能性が言われていることでもあります。
「いつ起きるのか?」が気になるとそれにタイミングを合わせて備えればいい、という発想になってしまいます。しかし、現実は「いつ起きるのかは判らない」という状況です。そのギャップを埋める答えは「いまから備えておく」ということ。
次の大震災などが起き、命が無事で生活場所を確保できた時、備えの有無がその後の生活の再建や質を左右することになります。
相手が自然災害であり、科学的な見地からの高確度な予測が難しいとされる以上、私たちにできることは個々人レベルでも粛々と「その日」に備えておくことでしょう。備えた上で、この先も大災害が発生しなければそれで良いと思います。備えずに後悔するより備えて納得する、という発想でいいのだと思います。
しかし、そこでは新たな問題が発生します。
「備蓄品などを持ったまま、避難所に入ることは可能なのか」
備えていた人たちと備えていなかった人たちが、避難所の同じ空間内で生活をおこなうことの難しさが現実問題として発生します。このあたりのことについては、また別途記事にしたいと思います。